第13話
放課後の学校は、どこか気だるいムードに包まれている。
昨日はマミと一緒に抜けた校門を、今日はリンネと一緒に歩いた。
誘ってきたのはリンネの方。
駅前まで遊びにいこうよ〜、と。
特に断る理由もなかったので、二つ返事でOKしている。
これが俗にいう放課後デートというやつか。
ユウトが17年間守ってきた非リア充の資格も、いよいよ返上らしい。
まず驚いたのが、リンネは歩いているだけでも注目される点。
とびっきりの美人だから、大きな交差点とか渡っていると、たくさんの視線を四方八方から感じた。
その中には、
『ああいう美少女とキスして〜』
『隣を歩いている男、死に腐れ!』
みたいな
でも、リンネは反応しない。
むしろ、自分の商品価値を分かっていて、堂々としている風すらあった。
「どうしたの、早瀬くん。私の顔に何かついている?」
「さっき、知らない男に舌打ちされた。俺たちが恋人同士に見えたことに、やや驚いている」
「何それ。不釣り合いな男女といいたいのかしら?」
「俺は舞原さんみたいに
リンネがぷっと笑う。
「変なの。でも、ありがとう。あなたって独特の褒め方するのね。私って、容姿のことを褒めてくる男、一気に信用できなくなっちゃうのだけれども、早瀬くんは特別という気がする」
「そうかい。君が過去のボーイフレンドと長続きしなかった理由、ようやく分かったよ」
「性格ブスといいたいわけ?」
「ブスって言葉は使いたくないけれども、ニュアンスは合っている。あるいは、率直ともいう」
もしかして、怒らせたかな?
リンネの顔色を横目でうかがったが、なぜか嬉しそう。
軽くディスったはずなのに。
分からない。
マミも、リンネも。
女の子ってやつは、予想の斜め上をいくことが多い。
「でも、早瀬くんも注目されているわよ。さっき他校の女子があなたの顔を見ていた」
「はぁ? 俺の? もしかして顔にチョークの粉でもついてる?」
「なんでよ。純粋にタイプだったのでしょう」
急に、顔をサンドイッチみたいに挟まれた。
ユウトの唇がタコみたいに尖る。
「早瀬くんって、ダイヤの原石ね。ファッションにお金かけたら、大化けしそう。でも、原石は原石のままでいい気がする」
ダイヤの原石……。
そのセリフは、妙に胸を熱くさせた。
「へぇ〜、意外だね。髪型を水谷ショウマに寄せたらいいのに、とか思わないの?」
ユウトは近くにある美容院を指さす。
「まさか。私は彼氏が1,000円カットに通っていても気にしない。お金がないくせに見栄張るやつより100倍マシ」
「いやいや、嘘つけ。彼氏が1,000円カットに通っていたら怒るでしょ、絶対に」
「私のことを何だと思っているのよ」
ようやく頬っぺたを解放された。
触れられた部分がジンジンする。
「私はそこまで鬼じゃない」
舞原リンネという子が徐々に分かりかけてきた。
この子には洞察力がある。
そして、面食いなんかじゃない。
てっきり顔が水谷ショウマに似ていたから選ばれたと思っていたが、ユウトの思い過ごしだったようだ。
「ほらほら、止まってないでいくわよ」
お留守になっていた手を握られる。
「君は、本当に、積極的なんだな」
「積極的な女の子は嫌い?」
「まさか……」
かわいい自覚があるくせに、『積極的な女の子は嫌い?』なんて質問を口にできるリンネは、ちょっぴり腹黒だ。
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