第18話 妖精族の憧れの的 ラミル

 ラミルがミラに近づいて来た。


 「ラミル。どうでしたか?」


 「ミラ様。戦闘の許可をいただきありがとうございました。この三日ほど動いていないのでいい運動になりました」


 「そうですか良かったです」


 ラミルは五人の兵に向かって。


 「すまない水をくれないか?城壁に置いてきてしまったので」


 とラミルが言った瞬間、五人が同時にラミルの前に水袋差出した。


 「うん。いくらなんでも全部は飲めないわ。少しでいいんだけどな」


 と、真ん中正面の兵の水袋を持ってキャップをとって直接飲み始めた。上を向きながら首筋を伸ばし飲む姿は美しく、口の横からあふれ出した水と額からほほにかけて

伝っていた汗が上を向いたことにより首筋へと流れて水と一体となり昼の日の光を集めて光の玉となって胸元へ流れていった。


 飲み終えたラミルはキャップを  と閉じて。


 「ああ、すまん。あまりに喉が渇いていたので直接飲んでしまった。行儀が悪かったな。あとから洗ってから返そう」


 水袋を渡した兵は。


 「とんでもありません。洗うなどともったい いえ。 お手を煩わせる訳にはいきません。そのままがいいん いえ。そのままで構いません」


 と言って受け取った。


 「そうか。ありがとう。美味しかったよ」


 その兵は両手で水袋抱きしめた。水袋のキャップの部分から水が染み出ている。


 ラミルの右側の兵がハーフタオルを腰の革製の収納ポシェットからすっと出し。


 「こちらをお使いください」


 「おおっ。ありがとう。これは助かる。私はまだポシェットが使えなくてな。お前は使えるんだな、すごいな」


 と言って借り上げて、額、頬、首から後ろの髪をかき上げてうなじから胸元にかけて拭いた。


 「いや、気持ち良かった。これは後ほど洗って返すからしばらく借りておくぞ」


 ハーフタオルを貸した兵は慌てて


 「いえ、とんでもございません。これより先まだまだ戦闘が続くと聞いております。それをお持ちのままで、戦いに臨まれては邪魔になるでしょうから、私がポシェットに収納いたします。このタオルのことは気になさらず、お忘れくださいませ」


 「そうか。そうだなすまん。最後に唇をちょとだけ拭かせてくれ」


 タオルを手のひらにかけて中指付近で唇をちょんちょんと叩いた。それを兵に返した。


 受け取った兵は大事に丁寧に折り畳みポシェットに収納して、腰が抜けたようにしゃがみこんだ。そして呟くような小声で。


 「うっしゃぁ。ラミル様のお宝ゲットだぜ」


 なぜかこぶしを握って腕を水平に肘を引きつけガッツポーズをしていた。


 ラミルはすでにミラ達の方へ振りむいている。


 水袋の兵とタオルの兵の周りに他の三人が寄って小さな声で。


 「お願い何でも出すからそれと交換して、あっ私も喉が渇いたその水袋貸して。いえ、私のと交換しない」


 「ねぇ。どっちでもいいから譲ってよドルホ隊長に言うわよ」


 「タオルの香りを嗅がせてちょっとだけ、ちょっっっとだけでいいからお願い」


 水袋を抱いたまま体を左右に振る兵、ポシェットを手前に持ってきて両手で隠ししゃがみ込む兵。


 「奇麗よねラミル様。見ているだけで惚れ惚れしちゃう」


 「先程の戦いも、戦っているというより踊り舞っているみたいで美しかったわぁ。憧れちゃう」


 「私、ラミル様が」


 「ラミル様が?」


 「何でもない」


 「あのサラサラの長い銀髪。奇麗よねぇ。触ってみたい」


 「スタイルも抜群。頼れるお姉さまって感じで、お優しいし。いいなあラミル隊。羨ましい。転属できないのかなぁ?」


 「ライト様も素敵だけど、やっぱりラミル様がいいわぁ」


 「そうねぇ。お二人とも奇麗よねぇ」


 「なってたって、入り口の城壁新人憧れ一位がラミル様。二位がライト様。だから」


 「私、ラミル様だったら何されてもいい」


 「なに言ってるの。私が先に色々してもらうんだから。何ももらえなかったし」


 「あら?ドルホ様に言いつけるんじゃなかったの」




 「ミラ様。今後の作戦は?」


 「私とテトはここから北へ向かい、警戒しながら三十分以内に流れゴブリン出現地点までのおよそ十三キロを走破して、途中降りられそうな場所があれば分かれて行動し、テルユキ様たちと合流します」


 「その目的は何ですか?」


 「洞窟を開放して、魔獣や魔物を出して流れゴブリンと戦わせるため、その魔獣達が北方面に行かないように討伐する予定です。恐らく対象はケーブタウロスや土トカゲ等だと思われます」


 「私と五人は?」


 「現状では入り口の城壁に戻ってもらうのが正解かと思っています」


 「何故でしょうか?」


 「私は彼女たちの上官では無いので彼女たちの、今の状態が解らないのです。ラミルも先の戦闘で疲れているでしょうし、このまま五人を連れて行くのは困難かと思うのでラミルと入口の城壁に戻ってもらおうかと思っています」


 「そうですか残念ですね。私は全く問題ありませんが。彼女たちの顔は知っていますが直接の上官はドルホになりますので。そうですね。体力と魔力が残っていて、身体能力が使えれば問題ありませんか?」


 「人手は多いに越したことはありません。もし可能であれば助かります」


 「解りました。ミラ様。少々お待ちいただけますか」


 「はい。どうぞ」


 ラミルは振り返って、ワァキャァやっている五人に。


 「整列っ。少し体を触るぞいいか?」


 五人はラミルに声を掛けられ、ビシット立って横一列になり、とっても元気に。


 「はい」 


 と返事をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る