第17話 対スローター(虐殺)ゴブリン
崖の上に到着したラミルは。
「ミラ様。スローターはどこですか?」
「この先五十メートル、岩の上に木が生えている岩陰でこちらを伺ってます」
「私一人で行っても良いですか?」
「はい。この五人は私達が見ていますので、安心して行って来て下さい」
「ミラ様、テト様。ありがとうございます。お手数をおかけます。行ってきます」
ラミルは二人に軽くお辞儀をして、森の方へ向き直りスローターの位置を確認した。
ラミルは飛び出し木々を次々に蹴って一瞬で林の中に消えていき、すぐに剣撃の音が鳴り響きだした。
「ミラ様。今、よろしいでしょうか?」
「はい。何でしょうか?」
「お尋ねしたいことが有ります」
五人のうちの一人が声を掛けた。
「構いませんよ。言ってみてください」
「スローターって何ですか?」
「スローターは流れゴブリン特有の個体で、普通はデストロイと二体一組で行動するゴブリンよ」
「定住型のゴブリンの村には居ないってことですか?」
「今まで聞いたことは無いわね」
「流れゴブリンの兵とはなにが違うのですか?」
「流れゴブリンの習性は知っているわよね」
「はい。詳しくはないですが、進行方向の荷馬車や人族なんかの村を襲って、女は攫って他は皆殺しにすると。そして流れゴブリンが通った後には建物が破壊され、人も食料も何もなくなると聞いています」
「最初に本隊が村に侵入し蹂躙したのち、先ほどのデストロイが残った建物を破壊して歩くの。そしてその中にいる逃げ遅れた者や負傷したもの子供や老人を見つけ出して、スローターが虐殺するの。本人たちがそう名乗っている訳ではなくて、我々がそう言っているだけ。身動きできない者達をただ狩るだけの所業だから屠殺ともいうわね。スローターに運よく見つからずに抜け出した者たちからの報告なので、情報は少ないけど」
「それでしたらラミル様が出るほどでもないのでは、ないでしょうか?」
「それはデストロイが壊した建物に殺られるばかりの者達だけが残っているとは限らない。だからゴブリンも身の安全を図るため身体能力を高めて狭い部屋や瓦礫の中で俊敏に攻撃をしつつ動き回れるように練度を上げているわ。流れゴブリンは全体的に動きが早けどそのれらと比べるとおよそ二倍ぐらいかしらね」
「そんなに早いんですか?」
「今。二十メートル位先でラミルが戦っていますが見えますか?」
「いえ。何かが動き回っている程度にしか見えません」
「私とテトはちゃんと見えてますよ。あなた達にはスローターは時期尚早ですかね。この先のラミル達の動きをよく見てください」
五人兵が目を凝らして、睨みつけるように動きを追うように見つめた。
「どうですか?見えましたか?」
五人共見えていない様子。
「目を凝らしてみるのではなく、全体を把握すつもりで見た方が良いですよ」
「はい」
「どうですか?見えるようになりましたか」
「木々を横跳びであちこちに動いている何かと、ラミル様の一瞬の残像程度が見えます」
ミラは兵達と会話しながらも、ラミル達の足跡を追っている。そして。
「あっ今、ラミルの一撃がスローターの右肩に入って全体の速度が落ちました」
「あっ見えるようになりました。スローターは短剣の両手剣だったんですね、防戦一方です」
「これくらいでも、まだあなたたちでは仕留められないでしょう。逆に返り討ちにあうかもしれません」
「あの速度でも無理でしょうか?」
「そうですね。あなた達は木々を蹴って進む時、木の葉を落とさずに移動できますか?」
「いえ。まだ出来ません。私の場合はまだ木を土台にしてると、ドルホ様から言われました」
「そうですか。まだ足の裏全体で木に頼っているのでしょう。跳躍するときのように、つま先で木を蹴るのでは無く跳ね返るようにすると速度も上がり体力や魔力の消費が抑えられますよ」
「ありがとうございます」
「後は集中力と全体の把握ですね。今、私と会話していましたが、ラミルが右肩に一撃を入れてから、木々を蹴って移動した回数が解りますか」
「あっと。いえ解りません」
「ちょうど今、百を超えました。どうですやれそうですか?」
「もっと修業します」
「そうですね。ティナ陛下のために努力してください。ちなみにですが、私かテトが単独で戦って、恐らく一分とかからず仕留める事が可能です。ラミルは今、遊んでいますからね」
「えっ?」
「ラミルお遊びはそこまでですよ。あまり時間もありません。デストロイはドルホが倒しましたので終わりにしてください。恐らくそれがこの辺りの最後の一体です」
「わかりました。ミラ様。終わりにします」
林の中から返答が返ってきた。
「ちなみにデストロイは今のあなた達が体力全開で、五人がかりで倒せるかなぁ?ってとこです」
ギャというゴブリンの声がして、林の中が静かになった。
「本当に、今までお遊びだったの?」
五人が驚きすぎて色のついた瞳を白黒させていた。
「お遊びという言い方は私が悪かったですね。反省しましょう。ラミルは他に伏兵が居ないか探っていたのです。どこかに残っていれば、スローターとの交戦中に必ず応援に出てきますから」
「判りました」
ミラの話を聞いて五人はさらに驚いた。
「ドルホォォォォォ。一発食らったのぉぉぉ?こっちは終わったわよょょょ」
ラミルが中間地点の崖の上の戦いが終わったことを下に知らせた。
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