第3話 女王ティナの小さな復讐 前
妖精女王ティナの前に傅くカノメス達の首元に小さな水晶の付いたネックレスがぶらさがった。
「人型族最高位の妖精族の王女ティナの名と護符においてお前たちを
傅いている者たちの後ろから冒険者の身なりに剣を帯刀した一人の男が駆け寄ってきた。
「お待ちください女王ティナ様」
ティナがその男に不機嫌に声をかけた。
「何者だ」
男は勇者たちの横で傅き。
「大事な儀式の腰を折ってしまい申し訳ございません。
私はこの山の北西大陸に住まうヴァイッセルと申します。
以後お見知りおきを」
「なに用だ」
「恐れながら。この者たちよりも私を王として認めて頂きたく、まかり越しました」
ティナは不機嫌な面持ちのまま。
「ほほう。我の決定に不服と申すか」
「いえ、そのような事は一切思っておりません。
ただ限られたこの場に居た者たちとしては優秀かと存じます」
「なにが言いたい」
「こちらの勇者方は、たまたま私の率いる討伐隊よりも早くこの地に来て封印を成功させたまで。
女王様の視野を広げて頂ければこの世界にはまだまだ、この勇者たちを上回る知力と力を持った者がおりますことを進言する次第です」
「ほう。今回の封印依頼は我が出したもの。
つまり我が認めたこの者達よりも貴様は優秀であると申したいのか」
「はい、さようでございます。
この地はもともと我ら北西大陸の者が管理しておりました。
この地を管理する王として、またこの大陸のみならず世界をも統べる知略と統率力を持った私こそが王となる資格があり、また適任と進言いたします」
「世界とは大きく出たな。待て思いだしぞ。お主ヴァイッセルと申したな」
「はい」
「おもてをあげよ」
ヴァイッセルは女王を見上げた。
「お主。我の顔を忘れたか?」
「大変申し訳ございません。女王様とは初対面かと思います?女王様のようなお美しい方に今までお会いしたことはございません」
ティナはヴァイッセルに向かい不敵な笑みを浮かべた。
「美しい、知略 笑わせる。我も舐められたものよ。
洞窟から出てくる得体の知れない風のおかげで森の中でしか力が使えなかったためあの時は何もできなかったが、今なら思いっきりあの時の歯痒さを貴様にぶつけられるわ」
「おっお待ちください。いったい何のことでしょう。
この初対面の私に」
「この地を管理する王として?笑わせる。
ついさっき貴様はそこの者達と討伐と封印が終わるまで物陰に隠れておったではないか」
「遅れて来たために
「この期に及んで、我を謀るつもりか」
ティナの目つきが鋭くヴァイッセルを睨みつけた。
ヴァイッセルは恐ろしさのあまり言葉が出ず、ティナに両手を出して 待って の姿勢を取った。
「まあ良い。で、我を思い出しか?」
「初対面であると思います」
ティナはあきれた表情で。
「まだ判らんか?仕方ない。
ヴァイッセル殿に頼みがある。森に住まう妖精たちを捕まえないで欲しい。頼む。
貴様の返答はこうだ。
うるせいなばばぁ、殺されたいのか?あいつ等を捕まえりゃ大儲けなんだよ。
なのにどいつもこいつも森に入ったキリ帰ってこねぇ。俺様は今イライラしてんだよ。
金儲けができる話かと思ってわざわざ時間作ったってのに何なんだてめいは慰謝料で金貨十枚置いて帰れ。どうせ金なんかないだろうけどよ。
仕事の邪魔だ殺されねぇうちにさっさと消え失せろ。
だったかな。今の我はあの時の風貌のままだが?」
ヴァイッセルの体が小刻みだが、傍から見てそれとわかるぐらい震えていた。顎からは汗が滝のように流れ始めた。
「やっと思い出したか?ばばぁの顔を」
ヴァイッセルの首が落ちたかの様にガックリっと頷いた。
その様子を見てティナは笑みを浮かべながら。
「我はこの他にも色々知っておるぞ。
例えばこちらの大陸の女共を掻っ攫って手籠めにし、飽きたら森に捨てていたことも」
ヴァイッセルはうつ向いたまま、口をパクパクしているが声になっていない。
しかし、力を振り絞ったのかやっとの思いで言い訳を声にした。
「あっあっあの時は仕事が忙しく そ その色々考えが及ばなくて・・・それに女性たちは そ その」
ティナは少し前かがみになり、ヴァイッセルを上から見下ろして。
「さすが知略家様だけはある。
忙しく考えが及ばねば誰でも簡単に殺すと脅すか?貴様が王になった暁には臣下はイライラ解消のため無実の罪で粛清されまくりであろうな。
そして貴様の周りはとっかえひっかえの妾だらけで、おお怖い怖い」
ティナはリアティナを改めて両手で抱きかかえ込み少し横へ振り向き、怯えるそぶりをした。
「そ そのような事には」
「貴様が我の前に出て来なければ不問にしていたが、会ってしまったものは仕方ない。
貴様が送り込んだ蛮族達は妖精族の兵達によって全てを返り討ちにしたので実質こちらは無傷で被害が有った訳では無いのでな。
しかし、あの時の心労は大変なものだった。そこで貴様にも同じように苦労してもらう」
女王は右手をヴァイッセルに向け呪文を一言唱えた。
「あの私は何をされたのでしょう」
ヴァイッセルは傅いたまま両手で自分の体をさすりまわしている。
「このままいけばどうせ貴様は長か王になってしまう。誰にも止められん。
しかしそれでは面白くないのでな。末代まで必ず何らかの苦難に立ち向かわなければならない呪術をかけた。
苦労してその苦難を乗り越えても実質損をし、その苦難に対応しなければ雪だるまのように問題が大きくなるが、放置できないようにした。
また自ら命を絶つこともできず他に殺されることもないようにした。自然死を待つのみ。
そして女は最愛の妻一人とし他の女を抱こうとした場合は機能不全になる。
また女をおもちゃにしようとしたときは股間に激痛が走り死んだほうがましと思えるようにした。
我とて悪魔ではない。妻との間にはちゃんとした子が出来るので安心しろ。
ただし苦労することは継承される。
それともう一つ、罪なき者を貴様の指示も含めて殺害できないようにした。他にも色々呪術式を掛けておいたぞ。
ここまですると我の種族も恨まれるであろうから妖精族に手出し出来ぬように特に強力にしてあるので諦めろ」
「手出しとはいかなるものなのでしょうか?それも含めてここまで私は罪を背負わなければならないのでしょうか?」
「ほうほう、反省しておらんようだな。言って聞かせるまでもないと思っておったが言わねば解らぬか?」
「ぜひともお聞かせください」
「貴様が三、四年前に創った冒険者組合で自ら死地に飛び込んだものは除くが、貴様の指示で死地に送り込んで死んだ者。我が森だけで三百人は超えておるぞ。
他には無理やり洞窟に送り込んで死んだ者や、見世物として力の差が歴然な者同士一騎打ちとかで死んだ者。またその亡骸で魔物をおびき出したりしておったな。
棄てた女の数も相当なものだ。我が森に捨てられ介抱した者の人数だけでも二百五十人以上だ。言っておくが全員貴様に無理やり抱かれたと言っておった。
それに貴様の部下たちは近隣の部落で女達に体液をぶちまけていたようだが、最後は全員魔獣に食われて腹綿ぶちまけて死んだがな。
どうだ、まだ必要か?」
ヴァイッセルはがっくりとうなだれ顔が地面に付きそうなところまでいっている。
そして勇者たちの方を見て。
「貴様ら四人が洞窟を封印さえしなければこんなことにはならなかった。
呪術式に貴様らの事は含まれていなっかた。
殺してやる。殺してやる。殺してやる」
と言いながらヴァイッセルは立ち上がり、傅くカノメス達に向かって剣を抜いた。
カノメス達四人と後方の協力者は傅いたまま動こうとはしなかった。
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