第16話 悲しき再会?
「一騎打ちで他の者は手出し無用といったのにルールを破りおって・・・仕方のない連中だ、余直々に死を賜ってやろう・・・おや?」
「はぁはぁ・・・なぜです、そのような強力な手段がありながらなぜ魔王討伐を私達に任せたのですか?」
軽傷だった私は再び立ち上がりティルガスと対峙します。
「これは召喚士どもから余に献上されたもの、従って余の物であれば貸してやるワケにはいかん・・・ましてや邪魔者であるお前に渡そうなど物騒な事は出来ん!」
「なんという身勝手な・・・自分の都合だけで国民達に害をなす魔王を放置するとは、貴方には王たるものの資格はありません!」
「何とでも言うが良い!魔王亡き今お前達を処刑しさえすれば真相を知る者はおらん、とどめを刺してやろう・・・ウォーターハンマぁああああっ!!」
ティルガスの水の盾から巨大なハンマーが形成され襲い掛かってきます。大技のメイルシュトロームなら防ぐことは可能でしょう。しかし鬼力の消耗と気圧の乱れにより次の一手が撃てなくなります。
「ぐ・・・セルフバァナァァ!!ぐぁあああっ!!」
「しゅ・・・シュゾ?!」
巨大な水のかたまりが私を襲いますがすんでのところでシュゾが防いでくれました。しかし水に消えない火はない通り、シュゾはダメージを受けてしまったようです。
「ぬぅ、性懲りもなく余に歯向かうとは・・・」
「はぁはぁ・・・
こっちは後がない・・・その言葉を聞いて私も迷いを捨てます。
「シュゾ・・・私も覚悟を決めました!大仕事ですが少しの間ティルガスの攻撃をさばいて下さい!!」
「アイアイサー、ファイアブラスタァアアアア!!」
「猪口才な、ウォータースクトゥム!」
シュゾとティルガスの攻防が繰り広げられます。
今まで一度も成功した事の無かった技ですが・・・数々の死闘を繰り広げた今の私ならば可能かも知れません・・・目を閉じて鬼力を全身に行き渡らせます。
「ヒートサーク・・・るぁあああああっ!!」
「さすがは異世界の勇者だが余にはかなわぬよ!今度こそとどめだ、ウォーターハンマァアアア!!」
「シュゾ、貴方が稼いでくれた時間・・・ムダにはしません!散(エリヘ)!!」
パシィィィィン!!
私に襲い掛かってきた水のかたまりが瞬時に消えました。あたりには水蒸気が漂っています。
「な、余のハンマーが・・・消えた??」
「それだけではありません、
水蒸気が私の身を守るように取り囲みます。完全に私の支配下になりました。その場から構えて右手を引き・・・拳を放ちます!
「ぐ、はぁあああああ!な、なぜ離れたところから打撃が飛ぶ??ウォータースクトゥム!!」
「無駄です・・・連弾、ヴェイパァフィスト!!」
再度水の盾を形成して防ごうとしますが無意味です。私の拳から放たれる鬼力は水に触れると水蒸気と化すのです。更に中の擬似魔石を消し飛ばし、穴の開いた箇所へ攻撃が叩きこまれます。
「ぁがぁぁ!ぐはっ!ぅぶっ・・・うぎゃぁああああああ!!」
私の攻撃によりふっ飛ばされたティルガスは壁に激突しました。
「く、姫様・・・す、すごいですぅ!」
「ぅみゅー!ユト様カッチョイイのですー!」
「・・・・・・こんな人を暗殺しようとしてたなんて、と」
ミュリ達3人も起き上がってきました。見た感じでは水で殴られたところは軽傷のようです。
「水を水蒸気に・・・ってそうか!状態変化を起こしているのか!!」
異世界の知識があるシュゾは私の扱う力の本質に気付いたようです。
「ぅぶふ・・・ユーティス・・・そ、その
「エーゼスキル学園にて開発されている奥義・・・純鬼功(ピュアオーグ)です」
私の属性は風、すなわち気体を扱うもの。突き詰めていけば物がバラバラになった状態・・・鬼力を高める事で物質に拘らず拡散されたものそれ自体を操る事ができます。
学園滞在時にこの奥義を学びましたが、私を始め他の学生やほとんどの教授ですら成し得ませんでした。理由は単純にして明快、鬼力を大量に消費するからです。
しかし魔王討伐において大量のモンスターと戦い
「く・・・そんな奥の手を隠し持っていたとは油断のならぬヤツ・・・しかし余にも切り札はあるのだぁ!来るがいい、バルファにフィートル!!」
そ、その名前は!!
「失礼致しますわ・・・お久しぶりです、お姉様」
「失礼します・・・姉君、お変わりなく」
ティルガスの命によってこの場に入ってきたのは彼の子供、すなわち私の従兄妹達でした。彼らは双子の姉弟で私とは小さなころからのお付き合いです。
「バルファにフィートル!」
しかし彼らは私に対して武器を向けます、鬼力を集中させて。
「お姉様、これ以上動かないでくださいませ」
「逆賊は滅ぼさねばなりません」
前髪をアップさせているポニーテイルのバルファはブレスレットをはめた右手を向け、男性にしては長い目のミディアムヘアのフィートルは細身の剣であるレイピアを構えています。
「な、何を仰るのです・・・私は伯父ティガルスから申し出された決闘を受け」
「ふはははは!どう見ても余に対して手を上げたユーティスは逆賊!さぁ2人とも、ユーティスとその一味を捕えるのだ!!」
「ぐ・・・王女様に王子様!私はこの目ではっきりと見ました!!ティルガス陛下はユーティス様に対し王座を賭けた決闘を持ちかけました!これは正式なものです!!」
「この俺もはっきり見たぜ?このオッサンがユトさんにケンカ売るの、それに今までだって中庭で騎士団に追い詰められたり魔王討伐の凱旋で偽物が監獄ぶち込まれたり大変だったんだぜ?どう考えてもこのオッサンがすべてワリぃぞ」
「ぅみゅーか弱いアチシもふっ飛ばされたのですー!!」
「・・・・・・火の粉を払ったまで、と」
「お黙りなさい!逆賊の一味が何を言うのです!!自分たちに都合のいい事を並べ立てて・・・恥を知りなさい!」
「君が異世界の勇者シュゾか・・・悪いが部外者は黙って頂こう、それに君達2人とミュリアス兵も王族とは関係がない、口出し無用!!」
バルファとフィートルの王族とは思えないほどの剣幕にシュゾ達も言い返せません。
「まずは陛下の拘束を解いて頂きましょう、お姉様」
「従って頂かなければ・・・戦うしかありません」
私も彼らと戦うのは本意ではありません。ティルガスの戒めを解きます。次の瞬間私の身体から力が抜けました。
咄嗟に駆け付けたミュリが倒れそうになった私を支えてくれます。
「ひ、姫様!大丈夫ですか!?」
「さすがに長時間の発動はムリがありましたね・・・はぁはぁ」
「おお、よくやったバルファにフィートルよ!さぁ、逆賊達を処刑してしまえ!」
「くそがっ・・・・・」
シュゾとアレイにエルバも私を守るように取り囲みます。
「く・・・ミュリにシュゾ、アレイにエルバ・・・もういいのです、私はあの2人とは戦いたくはありません・・・貴方たちだけでもお逃げなさい!」
「謹んで逆らいます!このまま姫様を見捨てたとあっては末代の恥!」
「俺も却下、大体逃げろってドコに行けと?みんな敵だらけじゃねぇか?」
「ぅみゅーあの王様では・・・贅沢三昧できる恩賞が出ないのです!!」
「・・・・・・私が教えた、と」
もはや策はないというのに私に付いてきてくれるなんて・・・今までの人生の中でこのような方々はいませんでした。涙が溢れそうになるのを抑えて言います。
「まったく貴方がたときたら・・・分かりました、どうなっても知りませんわよ」
ミュリに抱えられて立ち上がります。もはや
「おや、この状況で立ち上がられるとは・・・さすがはお姉様」
「バルファ、下がって・・・姉君、最後に一つだけ伺いたい、貴方には王座へつく覚悟はおありか?」
フィートルが私に尋ねます。他の人達から何度も言われてきましたが私の答えは一つです。
「そんなモノに興味はございません、その椅子は貴方たちで取り合えばいいでしょう・・・国王陛下には話が通じないので私達は城からお暇させて頂きますがお見送りは結構です、余計なお節介はケガのもとですわよ?」
バルファとフィートル、倒れているティルガスに殺気を込めて言い放ちました。これ以上私の仲間を傷つけさせるワケには参りません。
「そ、そのような事断じて信用ならん!逆賊はこの場で処刑致すのだ!!やれ、フィートルよ!!」
命を受けたフィートルは私達に一瞬まぶしくなるような笑顔を向けました。素早く踵を返して剣を一閃します。
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