第17話 私達にはそれが必要なのです?

 なんとフィートルの攻撃は・・・後ろにいるティルガスを襲いました?


「ぐはっ・・・な、なぜだフィー・・・トルよ」

「はいはーい、そろそろご退場願おうかな?自らの都合により魔王を放置するだけでなく同じ王族たる姉君や王弟殿下を蔑にする暴君ティルガス、父上に代わって成敗する!バルファ!!」


 え?


「畏まりましてよ?・・・ライトニングチャクラム!!」


 バルファが手首にはめていたブレスレットを外して指先でくるくると回し始めました。射出された電光の輪がティルガスを襲います。


「ぅががががが!!じ、実の父に対してきさ・・まらわ・・・」

「僕たち知ってるんだよねー、王弟殿下がホントの父上だって事!それにアンタには愛人は何人かいるけど王妃も側妃もいないんだし・・・それじゃ迷わずあの世へGo!ウォーターエぇぇぇぇッジ!」


 細身の剣にまとわりついた水が幅広の刃となって放たれました。


「ぐは・・・あがぁあああ!!」


 フィートルの一撃によってティルガスは完全に気絶したようです。2人とも会ってなかった6年の間に比べものにならないほど鬼功オルグを上達させていました。


 ・・・というかさっきからものすごく重大な事を聞いた気がします。



「お姉様、大丈夫ですか?それに側近の方々も・・・」

「姉君、芝居とは言え貴方に剣を向けた事・・・どうかお許しを!」


 バルファが私の手を取りフィートルが謝罪のために跪きます。あまりの展開にミュリ達が反応できません。


「い、いえそれはいいのですが・・・王弟殿下が貴方たちの父上?」

「そうですわ、陛下・・・いえティルガスが王位についた際に父上、王弟殿下に人質として私達を要求したのです」

「表面上ティルガスとは親子として過ごしていましたが、幼き頃より側近から内々に聞かされておりました・・・姉君が僕たちの本当のお姉さんだって事!」


 そんな、小さい頃から弟妹のように接してきましたが本当の姉弟姉妹だったとは・・・。


「お父様が私達が姉妹だとお姉様に教えなかったのは・・・恐らく私達が真相を知っている事をティルガスに気づかせないためだったのではと考えております」

「いやー僕たちもホントは姉君なんて呼んだらバレちゃうかなーって思ってたんですけど、ガマンできずに呼んでみたら別に怪しまれなかったし・・・結果オーライってヤツ?」


「お、王女様に王子様?」

「お?喋ってるウチに何かフランクになってきたなぁ王子様よ!」

「ぅみゅーカッコイー王子様にトキメキなのですー!」

「・・・・・・すでに婚約者がいる、と」


 相変わらず騒がしいウチのメンバーです。バルファもフィートルも彼らに打ち解けてくれています。

 しかし・・・


「それでお姉様、ティガルスはどうしましょうか?我々がとどめを刺すのも後々問題が起こりそうだしこのまま野放しにもできませんし・・・」

「・・・やっぱり牢屋にぶち込んでおく?その後追放にでもすれば何とかな」


「・・・その者の処分は決定している」

「ぎゃぁああああああああああああああああああああああ!!」


 気がつくとティルガスはとどめを刺されていました。

 彼にとどめをさしたのは真っ赤なローブを身に付けた人間でした?ミュリが私の前に立ち彼らに問いかけます。


「その服装・・・まさか闇部の!」

「・・・・・・ローブの色が違う、と」


 元闇部のエルバが指摘します。そうです、闇部は風景に紛れやすくするため茶色のローブを使用しています。赤などの目立つローブを身につけているハズがありません。


「不要な戦闘は差し控えたいので自己紹介させてもらおう、我々は『ガーディア』・・・君達には『石柱人バーベリア』と言えば分かってもらえるか」


 石柱人バーベリア・・・まさか古代人がなぜ我が城に?シュゾが口を開きます。


「おいユトさん、『バーベリア』っつったらあの高層ビルの・・・」

「そうです、古代人の末裔です・・・我々の世界には不干渉を守っているハズの彼らが何故??」


 赤いローブの方が一瞬シュゾを見つめてから話し始めます。


「正確には我々はその使っ走りに過ぎないのだが・・・こちらの要件は」


「もう済んだ」

「まさか城から逃げていたなんてな」


 またもや音もなく現われた2人はガーディアと名乗った彼と同じく赤いローブを身に付けています。彼らからは鬼力というものが全く感じられません。


「そうか、御苦労・・・今回召喚士の3人、石柱人バーベリアに仕えていた元技術者3名を石柱バベルからの無断逃亡・遺物横領の上私的流用の罪にて処刑した・・・ついでにヤツラをこの城に引き入れた宰相とやらの死体も確認した」


 召喚士・・・あの3人は元は石柱人バーベリア達の技術を扱っていたという事になります。道理で遺物の扱いに長けていたワケです。


 そして先ほど椅子の罠にかかって事切れた宰相シカニシ・・・情報をまとめると召喚士達と知り合った時点であの古文書の伝承を利用し彼らを引き入れたと考えられます。王国たるものが見事にこのような者たちに踊らされていたという事ですね。


「そして今回あの召喚とやらの遺物をヤツラに使用許可を与え、また我々の技術で作られた擬似魔石を無断使用したオルファン国王にも責任を取ってもらった・・・どうやらそちらの事情では仲違いしていたようだが何か問題はあるかね?」


 身内が殺されたからには問題ないハズがありません。しかしそれが私達の話を聞かず最後まで命を狙っていたティルガスですから敢えて争う理由はありません。

 バルファとフィートルに目を向けると2人とも頷いてくれました。


「御座いません、これ以上の要求がなければ」

「もう一つ要求させて頂こう、召喚士どもの持っていた遺物を引き渡して頂きたい」


 遺物、召喚士達の使っていた召喚のための遺物・・・勇者を召喚した今となっては無用のものですが・・・しかし。


「お断りします、お引き取りを」

「勘違いしてもらっては困る、我々は君たちと取引をしているのではない・・・我々ガーディアの任務は絶対なのだ」


             ががしゃんっっ!!!


 突如としてガーディアの前に3つの遺物が落とされます。もしやこれは!!


「問題ない」

「もう持ってきた」


 なんと、私が話をしている間にもう回収していたとは!油断も隙もありません。

 しかしあの遺物がないとシュゾは二度と元の世界には帰られません。守ってくれているミュリを押しのけて前に出て言い放ちます。


「貴方がた石柱人バーベリアが地上に不干渉なのは知っています、これ以上の行動は越権行為です!早々に返却していただき」


 しかしそんな私をシュゾが押しとどめます。


「ユトさん抑えろって・・・何を意固地になってんだ?あんなものが何の役に立」

「お黙りなさい!貴方を元の世界に帰すために言っているのです!今度こそ貴方を無理矢理この世界に連れてきた罪滅ぼしが出来るのです!!」


 そう、元はと言えば勇者召喚こそが全ての発端です。シュゾのお蔭で魔王を討伐しティルガスの魔の手を払い除けることが出来ましたが元々は王国内の問題・・・異世界人の彼には関係のない事です。ここでシュゾを帰還させないと私は死ぬまで後悔し続けることになるでしょう。


 そんな事を考えているといつの間にか前に回り込んだシュゾは私の両肩を抑えます。王族に対して不敬な行為ですがお陰で少し冷静さを取り戻せました。


「はいはいストップ!状況整理だ・・・今の俺らがアイツラに勝てる勝算は?」

「正直分かりません・・・彼らからは鬼力が全く感じられない・・・強さを測る材料がないのです」


 鬼力とは鬼功オルグが使用出来るできないに関わらず人間・・・というより生きとし生けるもの全てが持つエネルギーです。それを全く感じないガーディア達はどれ程の戦闘力という以前に如何なる存在なのかも不明なのです。


「なるほどなぁ・・・つまり迂闊に相手は出来ねぇってこった、おい赤ローブのヤツ!その機械をもう一回使って俺を元の世界に帰すこたぁ出来るのかよ?!」


「元の世界?これは時間干渉装置であって君の考えているような異次元をつなぐものではない・・・そして未完成品にして失敗作だ、故に我々に課せられた任務はコレの破壊だ」


 な・・・そんな事はさせません!唯一の手段を失ってなるものですか!!鬼力を高めて攻撃の体勢を整えます!


「シュゾ、アレを取り返します!私の攻撃をサポートしてくださ

『手出し無用だぁ!いくぜぇぇぇファイヤブラスタァァァアアアア!!』」


 私を遮るようにして前に出たシュゾの攻撃がガーディア達を襲います!

 ・・・あれ?



            ボワァァァァァァァァァ・・・



 遺物が燃えています・・・パチパチと・・・。


「い、遺物が・・・」

「ぅみゅー燃えているのです?」

「・・・・・・誤射か?、と」

「しかしアレは確実に」

「狙ってやった威力だよね?」


「王子サンよ、このままじゃ城からボヤが出ちまう・・・水ぶっかけてくれや!」

「お安い御用だ・・・ウォーターシャワー!」


 フィートルの鬼功オルグが遺物から出ている火を消します。煙と苦い悪臭があたりに充満しています。


「火で燃やした上に水ぶっかけりゃどんな機械もおだぶつよ、アンタらの仕事を肩代わりしてやったぜ!」

「何事かと思えば我々の仕事をやってくれたと言う事か・・・いいだろう、我々は君達にこれ以上の干渉はしない・・・失礼する」


 そう言ってガーディア達は遺物の残骸を持ってかき消えたように去って行きました。

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