第3話 冒険者のマナーとは?
「はあっ!チェインソード!!」
「Gugyaaaaaahhhhhh!!!」
ミュリの剣がモンスターのレッドウルフを切り裂いていきます。さすがはわが王国の騎士団第九部隊隊員の実力は素晴らしいです。あっという間に30頭を討伐しました。
「ほっほーお見事おみごと!」
「ふっ、これくらい朝食前です!」
「お疲れ様ですミュリ・・・というかシュゾは何してるのですか!元々は貴方のための戦闘でしょうに!!」
そう、今回はシュゾの
「まぁ俺が突撃してもいいんだけどまずは見学だろ?何となくコツは分かってきたから後は俺に任せろ!」
「ミュリが全部倒してしまったから貴方の出番はありません!ミュリもやり過ぎです!!」
「こ、これは申し訳ありません!つい
「うんうん、失敗は誰にでもある事だよね、次は気を付けていけばいいんだから」
「ゥキィィィィィ!貴方がそれを言うんじゃありません!!はぁはぁ・・・とにかく今日のクエストは終わりなのでギルドに戻りましょう、魔石採りを手伝って下さい」
「はっ!」
「早くして打ち上げしよーよー?」
「貴方もですよシュゾ!働かざる者食べるべからずです!」
「ちっ、異世界でもその言葉あんのかよ・・・はいはいやりますよっての」
全くいちいち勘に障る性格です。しかし慣れてくるとこちらのいう事にも従ってくれるようになりました。このまま隷属の首輪の力無しで済めば良いのですが。
「あーぁモンスターの腹割いてリアルグロ動画だー・・・ん?これが魔石ってヤツか?中に見えるのはICチップじゃん?」
シュゾがモンスターの身体から取り出した5~6センチメートルほどのひし形の石-魔石を陽の光にかざして見ています。中には見ていると目が痛くなるような細かい模様のものが入っています。
「あいしーちっぷ?とにかくそれが魔石です、それを集めればギルドに換金できるのです・・・しっかり集めて下さい」
自然界のどこからか発生するこの魔石が無機物にとり付く事でモンスターは誕生します。ギルドからはモンスター討伐の証拠として魔石を要求されますので、解体作業は必須なのです。
◇◇◇
作業の後ギルドに戻り結果報告と魔石の提出をしました。
「お疲れ様です!わがままウッキーズ、Eランクに昇格です!」
わがままウッキーズのランクアップにギルド内がどよめきます。
冒険者が組むパーティーには上位からA・B・C・D・E・Fまでの6つランクが存在していて最初はFランクから始まります。
ランク相応の依頼をこなしていく事でランクアップし更に高難度で且つ高額報酬を受け取れるクエストにも参加できるようになります。
「おお!ふざけた名前のわがままウッキーズのヤツラが?」
「わがままなだけに一丁前にランクアップ?」
「まだ昨日の今日だぜ?ウキィィイイイ」
確かにランクアップは受けるクエストの幅が広がり受け取る報酬も上がるので良い事ずくめなのですが・・・パーティー名を連呼されるのは正直つらいです。
「ほっほーい、これは賞賛の眼差しというヤツだな?何しょぼくれてんだよユトさん、せっかくの昇格なんだからもっとパァっとしねぇと!」
「ゥキィイイイ!あれは嘲笑の眼差しです!貴方のせいで変な名前で呼ばれるようになったんですよ!反省なさい!!」
「ゅ、ユト様!どうか抑えておさえて・・・」
「・・・はっ!私としたことが」
また叫んでしまいました。こんなシャウトはわが領地や王城はもちろんの事、留学していたエーゼスキル学園でもした事はありません。シュゾがこの世界に来てからというもの調子を狂わされ続けています。
「今日も聞けたぜウキィィイイイが!」
「あのお嬢さんキレイだけど性格キツいよなぁウキィィイイイ」
「でもカワイイぜウキィィイイイ!」
その度にギルド御用達の酒場にいる冒険者達から冷やかされます。耐え難い屈辱ですが全ては自分が起こした行い。王族としてはもちろんの事、貴族としても失格です。この王命が終わった後もう一度マナー教育を受ける必要があります。
「・・・いつからこのギルドはお手てつないでの託児所になったんだ、ああ?」
ギルドの入り口から髪を短く刈り揃えた大きな体格の方とそれにつき従う2名の男の人が入ってきました。ただならぬ雰囲気を持った方達です。
「おい!アレは・・・Bランクの」
「ああ、目ェ合わすな」
「とばっちりくるぜウキィィィィィ・・・」
ギルド内にいた冒険者達が一気に大人しくなりました。あの方々はBランクのパーティーのようですが。それにしてもこんな時までウキィィィはやめて頂きたいものです。
リーダーらしい大きな方がこちらに向かってきます。
「そこのふざけたパーティー名のガキども、ここは託児所じゃねぇんだ・・・騒ぐんなら他所でやんな」
「な・・・このお方をどなたと心え」
高位ランクゆえ私達のおかしな名前が気に食わないという事でしょうか?とはいえ先程から騒がしくしているのは事実、相手の言い分に怒りを見せるミュリを抑えて早々にお暇致しましょう。
「失礼、騒がしくしてしまいました・・・仰るようにお暇致しますので、皆さん行きましょう」
何故か唖然としている冒険者達を置いてギルドから引き取ります。
大通りを歩いていると先程の大きなリーダーの方が慌てて追い掛けてきました。
「おぅ待ちな!出てけと言われて本当に出て行くなんて頭おかしいんじゃねぇのか?」
「何かご用ですか?貴方がギルドを出るよう仰ったので従ったまでですが・・・」
リーダーの方は私の切り返した言葉を聞いて顔が赤くなっています。私、何か失礼でも致しましたかしら?
「てめぇ・・・俺を誰だと思ってんだ?泣く子ももっと泣いちゃうBランクパーティー『シードル』のリーダー、ムディだぞ!Eランクごときが調子に乗りやがって・・・怖い物知らずたぁこのことだなぁ!!」
突然の妙な言いがかりに今度は私が言葉を返せません。
「この方、何を言っているのでしょう?教えて下さいますかミュリ?」
「さぁ?自分も冒険者活動は今回が初めてなので分かりかねます」
ミュリにも分からないようですがシュゾが訳知り顔で言います。
「わからんヤツらだな、これはテンプレイベント・・・つまりあのオッサンはユトさんに構って欲しいのにクールに塩対応されたんで寂しいってコトよ」
「てんぷれ?しおた硫黄??その言葉は知りませんし意味もわかりません」
あのやり取りで相手のリーダーから「構って欲しい」という要素は全く見受けられませんでした。これも我々王族と庶民との生活観が違うからでしょうか?様々な身分の方達が集うエーゼスキル学園では別段不自由を感じませんでしたが・・・。
「て、てめぇえええ!ふざけたこと言ってんじゃねぇぇ!俺はただ」
「ほら、この方は否定しているじゃないですか・・・まったくシュゾの言う事はアテになりません」
「違うんだなーそこはほら・・・男のプライドというものがあって正直に言えねぇんだよ、どうか俺と力勝負しようぜってコトさ!」
男のプライド?力勝負?言葉は分かりますが真意は全く分かりません。
シュゾの失礼な物言いが頭にきたのかリーダーがシュゾの胸倉を掴みます。
「このやろぅいい加減にしやがれ!まずはてめぇからボコってやる!そっちのムカつくねーちゃんともう一人はその後だ!!」
いけない、早く止めなくては!!
「ぐ・・・っ、飛んで火に入る夏のオヤジ・・・セルフバァナァぁぁぁ!!」
「ぅげ!火の
リーダーをシュゾの火の
「バイティングウィンド!!」
すぐさま強い風圧でシュゾの火を消し止めます。リーダーの方も気絶こそしていますが軽い火傷で済みました。
「げほっ!・・・はぁ、俺いちおうユトさんの仲間だぜ?」
「貴方には遠慮というものがないのです、もう少し手加減して頂かないと!そこのお2人の方・・・早くリーダーを回復士のところへお連れなさい!」
「「は、はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃい!!!」」
冒険者としての活動とは毎回こんなやり取りが要求されるのでしょうか?正直意味不明かつ理解不能な事ばかりで戸惑います。
「げぇ、なんつー
「けどお嬢さん、あの火を一瞬で消しちまったぜ」
「あの人も危ねぇぜウキィィィィィ・・・」
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