読み切り達

漢の兄貴

ストーブのりもち

俺はもちだ。そう。もち。でもな、俺はみんなが思ってるようなもちじゃねーんだ。のりもちなんだ。普通のもちってのは白くて丸い淡白なもんだと思うだろ?でも俺はな、のりもちってんだ。わかるか?のりもち。俺は体が薄〜い緑なんだ。

俺は、俺になる前は米だからまっしろしろだったんだけどよ、もちつきんときになんか緑色のーなんて言ったらいいかな、やたらい〜い匂いの細けぇのとザラザラーってしててしょっぺぇ白いのと一緒につかれてよ、まっさらで綺麗だった俺の体が緑色になっちまった。で、バラバラだった奴らがひとまとめにされて、ほんでまとめられたと思ったら今度はバッサリ切られちまってよ、散々だったわけよ。初めはほっかほかでもちもちだったのにカチカチになって全く動かせねぇの。もー不便ったらありゃしねぇ。そんでツルツルしてて薄っぺらい布団みたいなのに包まれて、やたら狭いし寒くてしゃーないとこに押し込められて、やんなっちまうよな。こんなとこにぶち込まれてどんくらい経ったかなぁ、、ずいぶん長いこといる気がするわ。外が見えねぇからなんもわかんねぇな。



わっ!まぶしっ!

目が焼けちまうよ。どこにあるかわかんねぇけど。うわっ!なんだ!なんかに掴まれてる!誰だお前!


「先輩、昨日ついた餅食べます?」


「あぁ食べるよ。でももう夜も遅いから半分こな」


なんか言ってんな。つか、いてぇいてぇ!握る力が強ぇんだ!もっと優しくしてくんなきゃ困っちまうよ。

お、どっかに置かれたぞ?なんだなんだ、今度はやたらあっついとこに置かれたな。いやいやちょっと熱すぎるわ!でも慣れれば気持ちいいもんだな。あー焼けるー。うわぁ!体が割れた!中のが膨れて外に出ちまった。


「そろそろ焼けますね」


「ん。」


なんだそっけねぇな。横の女はニコニコしてんのにこのそっけねぇ女は肘ついて足組んでやがる。

いいねぇ。格好つくじゃねぇか。あっつ〜。もうしんどかなってきちまうよ。さっさと拾い上げてくれ〜。


「焼けましたよ。あちちっ。はい半分こっと」


いってぇなぁ!!やめてくれよそんなことすんの!俺がふたつになっちったじゃねぇかよ。


「どうも」


やい!俺をどうする気だ!?まだちぎんのか!?

おい、嘘だよな?やめろそんなとこに放り込むわけじゃねぇよな?やめろ!やめろぉ!




あぁ。まっくらだぁ。


「先輩」


「なんだよ」


「あったかいですね。ストーブ」


「そうだな」

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