340_鎮痛剤は体の痛みだけでなく、心の痛みも止める #薬 #苦痛

「生涯に四度結婚したイギリスの哲学者バートランド・ラッセル『哲学の探求は、仮に知ったことが痛みを伴うにしても、知識は善であるという信念に基づいている』と言いました。知りたくなかった知識もありますが、知識に善も悪もありません」


「やっほー、賢明なる読者様。読むだけで人生よくなる知識を提供する世界一の美女サクラです! 今回は『鎮痛剤は体の痛みだけでなく、心の痛みも止める』のお話をしたいと思います」


「では、よろしくお願いします」


「読者様は鎮痛剤を使いますか?」


「頭が痛い時、熱が出た時、怪我をした時など、使ったことがあると思います」


「痛みを止めるために、とても有効な薬です」


「ですが、鎮痛剤が体の痛みに効くだけでなく、心にも作用することは知っていますか?」


「実は、体の痛みを止めると同時に、心の痛みも止めるのです」


「鎮痛剤を摂るとどうなるのか、アメリカのオレゴン大学の研究を参考にお話させていただきます」


「研究者は平均年齢19歳の大学生142人を集めました」


「被験者の半分には、アセトアミノフェンを1000mg摂取してもらってから、実験に参加してもらいました。残りの半分はプラセボでした」


「アセトアミノフェンとは、解熱と鎮痛の二つの効果がある成分です。歴史も古く100年以上前から使われています」


「子供にも使えて、眠気も及ぼさない、副作用が少ないのが特徴です」


「アメリカの全人口の25%は毎週摂取していると言われるほどです」


「要するに、鎮痛剤によく入っている成分です」


「アセトアミノフェン、もしくはプラセボを摂取した被験者にゲームをしてもらいました」


「ゲームは至ってシンプルです。ただ、風船を膨らますだけです」


「画面に風船が表示され、被験者は風船を膨らませるか、やめるか選ぶことができます」


「風船を大きく膨らませると賞金がもらえる、そんなゲームです」


「ただし、風船を破裂させると、そこまでに獲得していた賞金は没収となります」


「風船を破裂させず、途中でやめたら獲得した賞金がもらえます」


「被験者には一連の風船ゲームを30回行ってもらいました」


「そして、プラセボとアセトアミノフェンを摂取したグループで、風船をどれだけ膨らませたか比較したのです」


「要するにリスクテイクです」


「風船を膨らませたら、お金がもらえる。しかし、膨らませると破裂する確率が増える」


「アセトアミノフェンでリスクに対してどう向き合うのか調べたのです」


「読者様の考えはいかがですか?」


「鎮痛剤で肉体の痛みが和らいだら、リスクを取るようになると思いますか?」


「それとも、肉体の痛みが和らぐと、バランスを取るために心は慎重になると思いますか?」


「さて、結果はどうなんでしょうか?」


「分析の結果、アセトアミノフェンを摂取したグループは、風船をより…………破裂させていました!」


「被験者は実験中、風船を破裂させないか、不安を感じています。アセトアミノフェンは、この不安を軽減させていたのです」


「つまり、アセトアミノフェンには、リスクを厭わなくなる効果があるのです」


「恐怖心を感じなくさせる効果と言い換えていいでしょう」


「読者様も気を付けてください。鎮痛剤を摂取した後、気が大きくなって、普段しないことにも挑戦するようになります」


「読者様も熱が出た時に、解熱鎮痛剤を摂ると思います。熱が下がると何かしたくなった経験はありませんか?」


「単に、苦しみから解放された喜びで、体を動かしたくなるのではありません。アセトアミノフェンによって、リスクテイクの感覚がバグっているからかもしれません」


「鎮痛剤を摂取した後は、普段とは違ったことをしたくなります。覚えておいてください」


「慎重さが求められる時に、鎮痛剤を飲もうものなら、リスクなんて考えられなくなります。とても危険です」


「逆に言えば、勇気が欲しい時に、鎮痛剤を飲めば、恐怖心を和らげてくれます」


「一歩踏み出す勇気がない時には有効です」


「研究者は他にも同様の実験を二つ行いました」


「被験者に、自分が摂取したのはアセトアミノフェンかプラセボか教えたり、リスクに関するアンケートを追加したました」


「結果は、どちらも最初の実験結果と同じになりました」


「つまり、アセトアミノフェンを摂取したグループは恐怖心が和らぎ、リスクを取るようになっていました」


「これは、アセトアミノフェンを自分で摂取している自覚に関わらず、発生していました」


「読者様も予想できる恐怖がありましたら、アセトアミノフェンを摂取しましょう。恐怖に立ち向かえるようになるかもしれません」


「予想できる恐怖ってのは、お化け屋敷などですね。お化け屋敷に入る前に鎮痛剤を飲めば、お化け屋敷が怖くなくなることでしょう」


「……まあ、恐怖するために入るお化け屋敷なのに、恐怖を感じなくなっては本末転倒な気もしますが……」


「最終的に摂るかどうかの判断は読者様に任せます」


「安定の投げやりを披露した所で、今回のまとめです」


「大学生を集めて、鎮痛剤の主な成分であるアセトアミノフェンを摂取してもらって、ゲームをしたよ」


「風船を膨らませるゲームだけど、アセトアミノフェンを摂取したグループは多くの風船を破裂させていたよ」


「どうやら、アセトアミノフェンには恐怖心を和らげて、リスクテイクを増加させる効果があるみたい」


「読者様も勇気が欲しい時には、アセトアミノフェンだよ」


「……とはいえ、アセトアミノフェンでどこまで恐怖心が和らぐか不明です」


「実際の所、アセトアミノフェンで大それたことができるようになるかは未知数です」


「ないよりはマシ、くらいの気持ちでいいと思います」


「実験でも有意な差はありましたが、劇的な差ではありませんでした」


「お守り、くらいの感覚でいいのかもしれません」


「最後に掌を返して、申し訳ありません。ですが、実際はこんなものですよ」


「ということで、今回は『鎮痛剤は体の痛みだけでなく、心の痛みも止める』のお話でした。読者様の知識になれば幸いです」


「お付き合いいただきまして、ありがとうございます。高評価や応援コメント、質問やリクエストも待ってまーす!」


「次回の『ホワイトノイズで効率アップだ』で、お会いしましょう」


「もしくは、読者様が気になるお話でお待ちしております。バイバイ」



参考文献

Effects of acetaminophen on risk taking

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