183_記憶力を高めたければ記憶の宮殿だ【メモリーパレス】 #記憶

「アメリカの経済学者バートン・マルキールは著書『ウォール街のランダム・ウォーカー』の中で『個人投資家の運用能力に関する根拠のない幻想は、「後知恵」と呼ばれる。つまり、過剰な自信が過去にうまくいったケースの記憶に根ざしているのだ』と述べています。成功体験にしがみついていたら、成長はありません」


「やっほー、賢明なる読者様。読むと人生が変わる知識を提供する世界一の美女サクラです! 今回は『記憶力を高めたければ記憶の宮殿だ』のお話をしたいと思います」


「では、よろしくお願いします」


「読者様は記憶力に自信がありますか?」


「え? 『全然ない。新しいことが全く覚えられない』ですか。それは、とても大変ですね」


「ですが、安心してください!」


「誰でも記憶力は鍛えることができます! 記憶力は改善することができるのです!」


「今は、物覚えが悪かったとしても、きちんと練習すれば誰でも記憶力が上がるのです」


「今こそ立ち上がるのです! 記憶力を鍛えるために!」


「さて、読者様を煽った所で本題です。今回の研究はオランダのラドバウド大学が行ったものです」


「研究者は、記憶力の世界大会の上位50人のうち、23人に協力してもらいました。世界レベルの記憶力の達人、つまりオリンピックに出場する選手を調べたようなものですね」


「まず何をしたのかと言いますと、MRIを使って脳を調べました」


「一般人と記憶力の達人とで脳に違いがないのか調べたのです。調査の際、二つのパターンで調べました」


「一つ目は休息中の脳、もう一つは物事を記憶している時の脳です」


「それぞれの被験者には単語を覚えてもらいました。全部で72個の単語を覚えてもらいました。テストの一般人が覚えていた単語の数は約40個でした」


「対して、記憶力の達人は約70個の単語を覚えていました」


「この結果だけでも驚きです。やっぱり記憶力がすごい人は存在するようです」


「記憶力の達人が素晴らしいのは横に置いておいて、脳の話に戻ります」


「一般人と記憶力の達人の脳を調べた結果…………実は、脳に大きな違いはありませんでした!」


「読者様の中には『記憶力の達人は脳が違うから、たくさん覚えられるんじゃないの?』と考えていたかもしれません」


「ですが、違うのです。記憶力の達人は脳のネットワークの接続が違うにすぎなかったのです」


「簡単に言ってしまうと、『脳は同じだけど使い方が違った』というわけです。記憶力の達人は特殊な脳をしているのではなかったのです」


「そこで研究者は考えました。『同じ脳を持っていて、使い方が違うだけなら、一般人が訓練したら記憶力の達人になれるのではないか?』と」


「ということで、今まで記憶力を鍛えたことのない51人の被験者を集めて、記憶力のトレーニングをしてもらいました。1日30分、期間は6週間となっています」


「被験者は3つのグループに分けられまして、一つ目のグループは記憶力の達人が行っている記憶力のトレーニングを受けてもらいました」


「このトレーニングは『記憶の宮殿(メモリーパレス)』というものです。特定の場所を思い浮かべて、その場所に記憶したいものを配置していって覚える方法です」


「思い浮かべる場所は自分の見知った空間、いわゆる自宅でもいいですし、全く関係のない空間でも構いません。一般的には自宅が多いです」


「そして、覚えたいものを空間に順番に配置していきます」


「たとえば、玄関を開けたら靴が3足と1足に別れています。次に靴を脱いだら4足と1足になりました。廊下を5歩進んだら、9つに分割された模様の扉があります。扉を開けると時計が2時6分を指していました。ゴミ(53)箱には5個のものが捨てられていました」


「……という要領です。ちなみに円周率で試しました。3.14159265358979323846…………」


「二つ目のグループはDNB(デュアルNバック課題)という記憶力のトレーニングを受けてもらいました」


「これは9個のマスのいずれかにアルファベットが表示されます。そして、N個前のものと同じか、違うかを判断する課題です」


「たとえば、N=2とします。左上にS、右上にA、左上にBと順番に表示されたとします」


「三つ目のBは左上に出ていますので、場所は同じですが、アルファベットは違う、となります」


「いかに前のアルファベットの文字と場所を覚えられるかが鍵となります」


「ちなみに難易度が上がるとNの数は増えます。三つ前、四つ前の文字を答えなければなりません。また、文字と場所以外に、形と色も追加されます」


「もし試したい読者様がいましたら、無料のアプリがありますので、検索してください」


「そして、最後のグループですが、こちらは対照群として何もしませんでした」


「さて、結果はどうなったと思いますか?」


「まあ、『記憶力を改善する方法がある』と言いましたので、記憶力がよくなったんですが……」


「結論を申しますと、二つ目のDNBをしたグループと三つ目の何もしなかったグループに記憶力の変化はありませんでした。残念」


「ですが、記憶の宮殿を実践したグループは記憶力がアップしたのです!」


「脳の構造に変化はなかったのですが、記憶力の達人のようなネットワークの接続に似た形になっていたのです」


「一般人が記憶力の達人と同じよう脳の使い方をしてたのです」


「つまり、誰でも練習すれば記憶力が上がることが判明したのです」


「いやー、とても面白い研究です。読者様も記憶力が落ちたからと言って、年齢を言い訳にしないでくださいね。記憶力は鍛えられることが判明したのですから」


「しかもですね、記憶の宮殿の効果はトレーニングを止めてから4ヶ月も持続したそうです」


「効果も長く続くみたいですので、記憶力に自信がない読者様は一度試してみてはいかがでしょうか?」


「忘れ物がなくなりますよ。記憶力がない人って、メモをしたメモ帳を忘れるんですよね。一体何がしたいのか、って感じです。そんな二度手間を防ぐためにも記憶力を鍛えましょう」


「Let's try the Memory Palace」


「記憶力はあって損はありませんぜ、という所で今回のまとめです」


「記憶力の達人を集めて脳を調べたら、一般人と大差なかったよ。でも使い方にちょっとした違いがあったよ」


「だから、一般人に記憶力の達人が使っている記憶力のトレーニングをしてもらったよ」


「すると、記憶力が大幅にアップしたよ」


「読者様も記憶力を改善したいなら、記憶の宮殿を試そう!」


「今回の実験ではDNBでは記憶力の改善には効果がありませんでした。ですが、DNBにはワーキングメモリを改善する効果があります。また、IQが上がるとの報告もあります」


「お時間があるようならDNBもオススメですよ」


「実際の所、読者様が欲しい能力に合わせてトレーニングを組むのが一番ですよ」


「記憶力を上げたければ記憶の宮殿を、ワーキングメモリをよくしたければDNBを、英語を話したければシャドーイングを。正しい練習をしていれば、早く身に付きますよ」


「選択を見誤らないようにしてくださいね」


「ということで、今回は『記憶力を高めたければ記憶の宮殿だ』のお話でした。読者様の知識になれば幸いです」


「お付き合いいただきまして、ありがとうございます。高評価や応援コメント、質問やリクエストも待ってまーす!」


「次回の『太るお酒と太らないお酒がある』で、お会いしましょう」


「もしくは、読者様の気になるお話でお待ちしております。バイバイ」



参考文献

Mnemonic Training Reshapes Brain Networks to Support Superior Memory

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