175_「えーっと、アレなんだっけ?」は伝染する #言葉 #記憶

「アメリカの経営コンサルタントのスティーブン・R・コヴィーは『自分の生活の中心に置くものが何であれ、それは自分の安定性、方向性、知恵、ならびに力の根源になる』と言いました。芯がある人は強いですよね」


「やっほー、賢明なる読者様。読むだけで人生よくなる知識を提供する世界一の美女サクラです! 今回は『「えーっと、アレなんだっけ?」は伝染する』のお話をしたいと思います」


「では、よろしくお願いします」


「読者様は以前に集中力は伝染する、とお話ししました。覚えていますでしょうか? 覚えてなければ、”164_集中力を発揮するには隣の人が超重要”をご参照ください」


「どうして、以前の話を持ち出したのかと言いますと、集中力以外にもアレが伝染することが判明したからです」


「そう、アレは伝染するのです。面白いですよね」


「え? 『アレはいいから、本題に入れ!』ですか。いいえ、それは間違っていますよ。私は既に本題に入っています」


「今回の本題は『アレ』なんです」


「具体的に説明しますと『思い出せそうで思い出せない。アレの名前なんだっけ?』という現象が他の人に伝染することが判明したのです!」


「どうです、面白くないですか?」


「思い出せそうで思い出せない現象を舌先現象と言います。もしくはTip of the tongue phenomenonという英語の頭文字を取ってTOT現象と呼ばれることもあります」


「舌先現象については、以前に”143_思い出せそうで思い出せないを防ぐ方法”や"144_思い出せそうで思い出せない時、ギャンブルをしたくなる"で、どうして起こるのか? どのような心理状態になるのかを解説しました。よろしければ、ご参照ください」


「宣伝を挟んだ所で本題に入ります。今回の研究を行ったのはカナダのローレンシャン大学です」


「研究者は大学生48人を集めて、一般常識の問題を80問出題しました」


「どんな問題だったのかと言うと、①スターウォーズに登場する金色の人型ロボットの名前は何? ②投げても自分の手元に戻ってくる湾曲した棒の名前は何? ③1620年に巡礼者をアメリカに運んだ船の名前は何? ④カナダのダイムに描かれた船の名前は何? などです」


「それぞれの回答は、①C3PO、②ブーメラン、③メイフラワー号、④ブルーノーズです」


「問題に回答する際に学生を二つのグループに分けました。一つ目のグループは一人で問題を解きます。もう一つのグループは4人で並んで問題を解きました」


「要は、部屋に一人の状況で問題を解いたのか? それとも、他に誰かがいる状態で問題を解きました」


「回答の方式は、答えを書き込むか、わからない、知っているけど思い出せない、のいずれかで回答してもらいました。この形式にすることで、舌先現象が起こっているか一目瞭然になります」


「その結果ですね、一人で黙々と問題を解いていたグループは平均して、2回の舌先現象が起こっていました」


「問題が80問ですから、ほとんど思い出せそうで思い出せない経験はしていないようです」


「対して、4人一緒に問題を解いたグループではどうでしょうか?」


「先に述べたように『アレってなんだっけ?』は伝染します。一人が思い出せそうで思い出せなくなると、他の人に伝染します」


「さて、どのくらい伝染するのでしょうか?」


「2倍くらいでしょうか? それとも、4人いるから4倍思い出せそうで思い出せなくなるのでしょうか?」


「結果は……6回でした!」


「実に一人で解いていた時より3倍も思い出せそうで思い出せないモヤモヤした気分を味わっていました」


「しかも、31%の人が同じ質問で舌先現象を起こしていました。他の人の影響を受けているのは間違いありません」


「隣の人が答えを思い出そうと悩んでいると、自分も釣られて悩む羽目になります。気を付けてください」


「いやー、よろしくない結果ですよ」


「みんなで話している場所で、誰か一人が『あ、アレってなんだっけ?』と言い始めたら、その場にいる他の人も『アレってなんだろう?』となります」


「もし、この連鎖が止まらなければ、地球に住むすべての人が何も思い出せなくなってしまいます」


「なんてことでしょう、地球の未来は真っ暗です! …………さすがに、そんな恐ろしい事態にはなりませんが……」


「ともかくですね、誰かが舌先現象に遭遇していると自分も同じ状態になるかもしれない、と覚悟してください。ただ、今回の話の内容を思い出せそうで思い出せない状態になるのだけは避けてくださいね」


「伝染することを思い出せなければ、意味がありません」


「とはいえ、気を付けた所でどうにかなる話ではありません。結局の所、意識しても舌先現象に悩まされる時は悩まされます。時には諦めも肝心かもしれませんね」


「根本的に対策しないとどうにもならない、と話した所で今回のまとめです」


「学生を集めて、一般常識問題を出題したよ。その際に、一人で黙々と問題を解くグループと、4人で一緒に問題を解くグループに分けたよ」


「すると、一人で問題を解いていた人は思い出せそうで思い出せない現象に2回遭遇したよ」


「でも、4人で解いていたグループは6回も遭遇したよ」


「このことから、舌先現象は伝染するんだよ。怖いね」


「ちなみに、集められた学生の95.5%は半年以内に舌先現象に遭遇していることが判明しました」


「思い出せそうで思い出せないのは身近に潜んでいます。いつ、どこで出会ってもおかしくないです」


「舌先現象で悩んでいる時間は不毛です。思い出したとしても大した内容ではありません」


「事前に、5分経っても思い出せないなら諦める、などのルールを決めておくといいかもしれませんね」


「人って本当に色々なことが伝染しますよね。……お金を稼ぐ方法が伝染してくれたらいいのに……」


「ということで、今回は『「えーっと、アレなんだっけ?」は伝染する』のお話でした。読者様の知識になれば幸いです」


「お付き合いいただきまして、ありがとうございます。高評価や応援コメント、質問やリクエストも待ってまーす!」


「次回の『リモートワークをすると仕事時間が増える』で、お会いしましょう!」


「もしくは、読者様が気になるお話でお待ちしております。バイバイ」



参考文献

Socially Shared Feelings of Imminent Recall: More Tip-of-the-Tongue States Are Experienced in Small Groups

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