022_速読は無理だから、さっさと本を読め【練習は無駄】 #読書

「やっほー、読者様のプラスになる知識を提供する世界一の美女サクラです! 今回は『速読は無理だから、さっさと本を読め』のお話をしたいと思います」


「では、よろしくお願いします」


「読者様の読書スピードはどのくらいですか? もしかしたら、読書スピードを上げるために速読のトレーニングをしている方もいるかもしれません」


「ですが、その行為、無駄です」


「『速読ができたら、たくさん本が読めるのに』と一度は思ったことあるでしょう。しかし、ページを写真のように読み取ることをフォトリーディングと呼びますが、科学的には不可能です」


「とても、残念です」


「え? 『速読できるよ』ですか。それは速読をした気になっているだけです。実際はただの読み飛ばしです」


「例外があるとするなら、優れた遺伝子を生まれ持った場合のみ速読は可能です。読者様が自惚れか、幸運の持ち主かは私にはわかりません。後者であることを祈っております」


「それでは研究を紹介したいと思います。2016年にカリフォルニア大学は速読に関する実験を調べて、論文を発表しました」


「大抵の速読術は目の動きを鍛えたり、視野を広げて一度にたくさんの情報を取り入れる、と読者様も聞いたことはありませんか」


「でも、意味ないんです。どうやら、読書において、目の動きが関係するのは10%以下だそうです」


「そのため、目の動きを鍛えても、ほとんど読書スピードに変化はありません。むしろ、内容を読み飛ばしてしまうので、読み終わった後の理解度は低くなります」


「この研究では速読は全否定されてますね。残念です。私もできるなら、速読したいです」


「どのような速読を調べたのかと言いますと、RSVP(rapid serial visual presentation)、日本語では高速逐次視覚提示となります」


「画面に次々と単語を高速で表示して読み解く速読です。簡単に言えばフラッシュカードをさらに早くした感じです」


「この速読では、読書の80%は目の動きに費やされている。だから、目の動かす必要をなくせば、読書スピードが上がる。と主張しています」


「ですが、残念! 目の動きは実は10%以下と証明されました。つまり、無意味なんです」


「さらに、研究では速読の世界チャンピオンの例を出しています。2008年に刊行されたハリポタシリーズの最新刊をチャンピオンはなんと、47分で読みきりました」


「実に1分間に4200の単語を読み取っています。ただ、英語と日本語では文字が違うので一概に比較はできませんが、驚異的な数字なのは間違いないです」


「一般的な読書スピードは1分間に200単語~400単語です。世界チャンピオンは10倍以上の速度となります」


「え? 『やっぱり速読できるじゃないか』ですか。確かに分厚いファンタジー小説を47分で読破したのはすごいと思います。話しはこれでは終わりません」


「速読の世界チャンピオンは感想を聞かれて、次のように答えました」


『この小説は最高に楽しかった。ページをめくる手が止まらなかった。子供たちの創造力をかき立てるのもわかる。ただ、悲しいシーンもあります』


「うーん、これは本当に読めているのか疑問です。この程度しか記憶に残らないなら、たっぷり時間をかけて噛み締めながら読みたいと思いませんか?」


「この例が極端なのは私も重々承知していますが、速読が内容の理解度を下げるのは間違いなさそうです」


「本を早く読むためには飛ばし読みするしかないです。ですが、飛ばし読みをすると理解度が下がります。時間と理解度はトレードオフの関係と研究者は語っています」


「では、どうすればいいのか。これにはベストとはいかないまでも、ベターな答えは出ています」


「ずばり、飛ばし読みが上手くなる、です」


「読書には重要な単語だけ拾って読む、スキミングというテクニックがあります。要は既に知っている言葉を読み飛ばす行為です」


「知っていること二度学んでも意味はありません。読書というのは新しい知識を得るために行うものです」


「ではどうすれば、スキミングがうまくなるのか。それは本をたくさん読むことです」


「残念なことに読書に近道はありませんでした。読者様、ごめんなさーい」


「単純に本をたくさん読むと知っている言葉が増えるので、読まなくても理解できる言葉が増えます。何より、スキミングの練習をすることで、スキミングが上手くなります。結果、読書が早くなるのです」


「速読の世界チャンピオンも、ハリポタの以前のシリーズを読んでいたことで、キャラクター、プロット構造、文体などの背景情報を持っていました。このことが読書スピードを高めた、と研究者も考えています」


「私もファンタジー小説を読む際は大まかな設定は読み飛ばします。いちいち魔法の仕組みや、冒険者ギルドの説明は読みません。大体同じなので」


「物語の本筋とは関係が薄い部分は読み飛ばしても、内容は理解できます。そして、読んで面白かったら、じっくり読み返せばいいのです」


「人生は有限です。スキミングの練習をして、読書を楽しみましょう。スキミングを習得すれば、黙読より2倍~4倍のスピードで読書できるそうですよ」


「では、今回のまとめです。本のページを写真のように読み取る魔法の読書は存在しない。読書スピードを早くしたいなら、上手に読み飛ばしできるようにスキミングの練習をしよう」


「科学的には速読はできない。本を早く読みたいなら、たくさん知識を集めましょう」


「私もスキミングで一冊を10分~30分で読んでいます」


「ということで、今回は『速読は無理だから、さっさと本を読め【練習は無駄】』のお話でした。読者様の参考になれば、私はとても嬉しいです」


「最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございます。高評価や応援コメントはどんどんお願いします。待ってまーす」


「それでは、次回の『効果的な読書の進め方』で、またお会いしましょう。バイバーイ」



参考文献

So Much to Read, So Little Time: How Do We Read, and Can Speed Reading Help?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る