異世界での働き方
「――働き方?」
「うん。基本的には、モンスターとか倒して生活する人の方が多いんだけど、隼人はモンスターとか倒したことないでしょ?」
「そりゃあそうだけど……」
「まあ実を言うと、私もあんまりモンスターとか倒したことがないんだー。だからこうして、食堂で働いてるって感じ?」
異世界での働き方。
現実世界と変わりがないのなら、例えばここの食堂で何時までに働くのが普通だろう。
しかし、ここは異世界である。地球で考えると異世界と言うのは、海外に値する。
食文化も違えば、働き方も違う。
まあでも、人間というのは、環境が変わったとしてもそこに慣れるように色々な努力なんかをする。
そして慣れれば、海外にだって住める。まあ海外に行ったことないけど。
「とりあえず清掃から始めてみよっか」
「うぇ?あっ、ちょっ……!」
フィーノに手を引かれてきた場所は、多分更衣室だろう。
「はいっ、じゃあこの制服に着替えてねー」
せ、制服……?完全にこれ、ウェイターが着ているような服じゃんか。
……俺はここで働くっていうことになるのか?
「……な、なんでじっと見るの?」
制服に着替えようと思い、自分の服を脱ごうとすると、フィーノの視線が気になってしまった。
「えっ?ああ、ごめんごめん。それじゃあ、着替え終わったら出てきてねー」
そういいつつこの更衣室から出ていくフィーノ。
「……うーん、まあやってみるか」
あんまり食堂とかに行ったことがないので、食堂で働いている人たちのイメージがしずらかった。
「これでいいか?」
制服に着替え、フィーノがいる受付へ。
「うん。ばっちりだよ!」
それじゃあ清掃よろしくねー、と言われモップを渡される。
「とりあえず全体が拭ければおっけーだから」
「は、はーい」
言われた通り、まずはモップがけから。
案外きれいではあるが、やっぱりテーブルの下などは少しベタベタしているところももある。
そんなこんなでモップをかけ、次に渡されたのは雑巾だった。
言われなくてもわかるが、テーブルなどを拭けということだろう。
テーブルも床と同じくきれいだった。
「はぁ……疲れた」
お昼休み。とはいいつつ、お客さんは何人かいるけど。
最初の更衣室にて。
更衣室に椅子があったのでそこに腰かけていた。
「あっ、みーつけた!もう、どこに行ったかと思ったらここにいたんだね」
ウェイターの服というよりかは、どことなくメイドのような服装をしたフィーノが更衣室にやってきた。
「どうかな?ここで働くのは楽しい?」
初日なので、当然答えは出しづらい。
「まあ、楽しいと言えば楽しい……かな」
ちょっと曖昧な答え方をしてしまった。
「そっか。それで、どんな感じで働くのかって言うのは分かった?」
「まあ、なんとなく」
ここの食堂ではこんな感じて働くんだなーくらいにしか思っていないが、実際、別のところで働くと言っても色々な働き方があるだろう。
「よし、それじゃあお昼にしよっか。簡単なものでよければ何かつくるけど……何がいい?」
食べたいものか……うーん、この世界で「肉」というものを食べたことがない。
「じゃあ、肉系の料理ってある?」
と、フィーノに聞いてみると、少し嫌っぽいような表情を浮かべた。
「ああっ、別に嫌ならいいんだけど……」
「ち、違うの!その……この世界では、基本的に肉は食べないの」
たしか肉を食べない宗教があった気がするが……そんな感じなのだろうか?
「別に食べちゃダメっていうことじゃないけど……」
またしてもフィーノの表情が少し曇る。
「……つまり?」
「硬くて食べられないってことだよ」
硬くて食べられない?使う肉の部分を間違っているのだろうか。
例えば、牛筋なんかはとてもじゃないけど硬くて歯を持っていかれる。
「そうなんだ……それでも食べてみたい!」
と、子供のようにフィーノにおねだりをすると、
「ははっ……はいはい、隼人がそういうなら作ってあげるよ」
と、明らかにお母さんのような口調で言ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます