食文化

「――今日のご飯は、パンと卵焼きと、サラダだよ」

リビングに降り、フィーノがいるところに向かうとそこには、湯気が立っている卵焼きがテーブルの上に乗っていた。

おそらく、今さっき作ったのだろう。

「口に合うかわかんないけど……」

自信気の無いようにそういうが、昨日食べた血のようなスープとは違い、こっちはものすごくおいしそうに見える。

昨日の血のようなスープは正直おいしそうには見えなかった。

ここで思ったのが、パンやらサラダやら卵焼きやら……結構、あっちの世界の食事と似ている。

あっちの世界っていうのは、明人がいる世界。

こっちはこっちで、見たことのない食べ物を始めてみるワクワク感がある。

だから異世界も、地球で言うならば海外のような感じなのだろう。

海外も、日本とは衣食住も違うし通貨も違うし、異世界もそれに似ていると思う。

「すげー、めちゃくちゃうまそうじゃん!」

見た目はおいしそうだが、その次に大事なのが味である。

早速席に座り、その卵焼きを一口。

「うわっ、うまいよ!」

昨日食べたスープも、おいしくないわけではなかったが、こっちの方がおいしい。

この卵のフワフワ感、そしてこの何とも言えない甘さ……フワフワなせいで、歯を使わせてくれない卵焼き。

そしてパンは当然のごとくパンである。

パンは焼いただけであって、バターとかはついていなった。

まあ、それでもおいしいんだけど。

サラダも同じく、ドレッシングなんかはないのでそのまま。

いや、いつもはドレッシングなんかを使っていたが、素材そのものの味を感じるっていうのもいいんじゃないかな。

そんなこんなで、フィーノと朝ごはんを楽しんだ。


「――で、フィーノはこれから食堂の方に?」

「うん。一応働いてるからさ」

10歳前後で働くというのはどうなのだろう。

ほんとにこの世界の法律なんかはわからん。

「さてと……そういえば、隼人の仕事場は?」

「し、仕事場?」

もちろん、高校生の俺には仕事場なんて言うのは存在しない。

ただそれは、現実世界での話であり。

ここの世界に来たのは昨日のこと。

当然職なんかには就いていない。

「いや、俺は……」

なぜか職についていないとは言いづらかった。

「仕事、ないの?」

「えっ……まあ、うん」

そんな仕事がないような雰囲気は出していないのだが、フィーノにはわかったのだろう。

「そっか。でも、この世界では仕事がなくても生きていけるし」

「というと?」

「例えば、冒険者とか。あとは、働いている人のところに住んでいる人だっているし」

後者の方は、完全に俺のことだろう。

というか冒険者って、俺のイメージとしては仕事みたいな感じだと思っていたが違うのか。

まあ、人それぞれ捉え方は違うので何とも言えないが……。

「まあとりあえず、私の食堂に来てごらんよ。どんな風に、私が働いているか見せてあげる!」

「えっ、いいのか?なんか邪魔になりそうだけど……」

「大丈夫!これでも私、あそこの店主だし」

そうか。そういえば、この子はあの食堂の店主だった。

だから、店主が言うんだから大丈夫……か。

「そういうなら、行くよ」

ここの世界では、どのように働いてお金を得ているのかを、この目で見て理解したい。

そして、可能であればここの世界で働いてみようかなーなんて考えたり。

さすがにそれはまだ早い考えだが……いつか、フィーノにお礼をしなくちゃだな。

ここに住まわせてくれたお礼を。




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