家がない
さて、異世界の食事とはどういうものなのだろうか。
「はい、どうぞー」
「あ、ありがと……ん?」
想像していたものは全く違うものが出てきた。
当然、メニューの内容などを見ていないためそうだが……これは、なんと表現したらいいのだろうか。
見た目は真っ赤。そして匂いは、どこなく鉄のような……完全にこれ血じゃないのか?
とんでもないものを頼んでしまったかもしれない。
「どうしたの?」
俺がオロオロと焦っていると、フィーノが心配そうに声をかけてきた。
「あ、いや……実は、ここの世界でご飯を食べたことがないんだ。あはは……」
「そうなんだ!見た目は完全に血だけど、食べてみるとすごくおいしいよ。ほらっ、アーンして?」
その血のようなスープをスプーンですくい、俺の口に運んできた。
「い、いやっ、自分でたべるよ!自分で――んぐっ!?」
「あははっ!どうかな?」
俺の答えを聞かずに、フィーノは無理やり俺の口にそのスープを突っ込んだ。
「なんだこれ……以外においしい」
見た目や香りからはこの味は想像できなかった。
やっぱり見た目よりも一番は味なのかもしれない。
「おいしい?」
「う、うん。正直びっくりしたよ。この見た目からは想像もできない味があるっていうのを」
「でしょー?あ、ちなみに具材もはいってるから食べてみてよ」
「う、うん……」
赤い池から出てきたのは、これは……肉か?
「これはなんだ?」
「それは一応野菜だよ。ここの世界では肉はあるけど、硬くてとてもじゃないけど食べれないんだー」
「へぇ……たしかにさっき鳥みたいなものもいたしな」
肉はあるが硬いらしい。多分その肉って、筋が多いんだろうな。
例えば牛筋とか、そういうとてもじゃないけど歯では髪切れないような肉だろう。
「……まあいいや」
とりあえず俺は、この血のようなスープをすべて食べつくした。
「――で、どうして君がここに?」
「もう営業は終わったもんっ」
帰り際。
なぜかフィーノと一緒に、この飲食店を後にする。
「営業は終わったって、さっきまだお客さんが……」
「いいの。あとは、うちの店員がやっててくれるから」
「……」
なんだこの世界は。帰りたいときに帰れるシステムか何かか。
「それは置いといて……あとは何すればいいんだろうな」
異世界での食事はすんだ。そしてある程度はここの街を歩いた。ほかにやることはなんだろう。
そういえばティールは「3つ願い事をかなえてあげる」と言っていたが……うーん、思い浮かばない。
だって3つだけだもんなぁ。これがもっとあれば、好きなようにできるんだけど……小さな願い事だけで3つが消えるっていうのももったいない。
「そういえば、あなたの名前聞いてないけど」
「ああっ、俺は隼人。えーと、よろしくでいいの?」
「隼人っていうんだ。じゃあよろしくお兄ちゃん」
「はっ?いや、どうして急にそんな……」
「あははっ、ダメかな?」
フィーノは上目遣いで俺を見る。
ロリ上目遣いってこんなにもかわいいものなんだな。
「……普通に隼人でいいよ」
まあもちろん、俺はロりコンではないので。
「むー……じゃあ分かった。よろしく隼人」
「うん。よろしく」
よろしくといっても、これからどうしたらいいのだろうか。
なにかやることは見当たらないし。
「ねぇ隼人、よかったら私の家に来ない?」
「ええと、どういう意味?」
「はぁ?そのままの意味に決まってるじゃん」
いやそうなんだけど。
なにか裏があるんじゃないかって思っちゃうんだよ。
「フィーノの家?まさか一人で住んでる?」
「うんっ。一人だと寂しくて、だから隼人が来れば楽しいかなって思って」
「あー。なるほど」
というかこの子一人でどうやって生活しているのかを知りたい。
一人で住んでるとか、しかもこの子10歳くらいだろうに。
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