少女は食堂の店主

ここから少し歩いた先に食堂があるらしいんだが……。

「うーん……まだたどり着かないのか?」

やっぱり、さっきの女性に道案内をしてもらうべきだっただろうか。

そんなことを考えつつも歩いていると、動物らしきものが数メートル先にいるのが分かる。

「あれは、鳥か?」

少し遠くて見えづらいが、なんとなく羽のようなものがある。

「鳥……じゃないな。これ」

鳥らしきものに近づいてみると、それは逃げることもなくただそこにいるだけだった。

たしかに鳥のように見えるが、全身が少し赤っぽいように見える。光の当たり具合で見え方が変わっているのかもしれない。

「お前、鳥じゃないの?」

なぜ俺は鳥に話しかけているのだろうか。しゃべるわけないのに。

でも、異世界だから動物もしゃべるのではないかという謎の考え。

「……ですよね」

当然しゃべるわけはない。

そいつは、何をするわけでもなくただ歩き回っているだけだった。


この世界には動物らしきものはいるらしい。

さっきの鳥のようなものは動物といえるのならそうだろう。

「ここか……?」

正直、さっきの女性に騙されたと思っていたが、たしかに食堂のような建物が見えてきてた。

早速入ってみよう。

「――いらっしゃませー」

中に入るとそれほど人はおらず、数人程度しか食事をしていなかった。

「あの、このバッグ……」

ご飯の前に要件を済ませてしまおう。

「バッグ?ああっ、これあの子の!ありがとうございます!」

あの子……?ちょっと気になるが、お腹が空いているので後にしよう。

とりあえずカウンターの椅子に座る。

「あなたが、このバッグを拾ってくれたの?」

メニューはどこかと探していると、背後から声をかけられた。

振り向くとそこには、ティールのようなかわいらしい子が立っていた。

少し薄い色の青髪、まん丸い目と顔から幼女感が満載である。

「あ、はい。道端に落ちていて、さっき交番のようなところに行ったらここの店主のものって……店主?」

ちょ、ちょっと待て、まさかこの少女が店主ってこと……あるのか!?

「えへへっ、私がここの店主、フィーノだよ」

いや、この世界は、少女も店で働いているのか……いろんな意味ですごいな。

10歳で門番とか、この世界はすごい。

「えーと、改めてこのバッグを届けてくれてありがとう。届けてくれたお礼をしたいんだけど、なにがいい?」

お礼か……別にしなくてもいい気がするが。

「べ、別にお礼なんていいけど……」

「い、いやっ、私はあなたにお礼がしたいんです!」

「そこまでいうなら……」

そうはいっても、お礼をされるほどなにかほしいものとかはないし……。

「とりあえず、お腹空いてるから、なにかおススメのメニューってある?」

そうだ。俺は腹が減っている。

「ああ、それなら……これなんてどうです?多分、お口に合うと思いますけど」

「じゃあそれで」

詳細は全然見ていないが、とりあえず腹が空きすぎているため、出されたメニューにしてしまった。

まあいいだろう。というか異世界の食事なんて楽しみだ。






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