服の色

さて、ティールに飛ばされた場所――ここは異世界。

「どうせなら、明人もつれてこれたらよかったのにな……」

明人には悪いが、俺は異世界での生活を楽しむとしよう。

異世界に飛ばされたのはいいが、最初は何をしたら正解なのだろうか。

というか、この場所はどこなのだろう。

「まずは……適当にブラブラすることかな」

知らない場所に来たら、とりあえず歩くことが正解なのかもしれない。

とりあえず歩いてみて、どこに何があるかを覚えておいた方がいい。


数分歩いてみて分かったことは、ここは結構大きな街だということが分かった。

人通りは多いし、数々の店などが並んでいる。

「おっと……これは?」

歩いていると、手提げバッグのような物が落ちているのに気が付いた。

拾い上げてみると少々重い。

「うーん……この人通りの多さでは、落とした人が誰だかわからないな」

人通りが多いことから、誰がこのバッグを落としたのかはわかるはずがない。

もしかしたら、もうすでにこの場所からはいなくなっている可能性だってある。

「とりあえず、交番的な場所……」

というかこの世界に交番というものは存在するのだろうか。

とりあえず、手あたり次第歩くことにしよう。


「――こんにちはー」

さらに数分歩き続けると、たしかに交番……とは言えないが、それらしい建物があったので、一応入ってみることにした。

「あら、客が来るなんて珍しい……何の要件?」

入ってみると、そこには普通に交番のような内装の部屋があった。

そして椅子には、一人の女性が座っており、少々嫌な顔をされながらもこちらを向いた。

「え、えーと……このバッグ、落ちてたんですけど……」

「バッグ?……ああ。このバッグなら、ここから少し行った食堂の店主のものだよ」

「食堂?」

「まさかとは思うけど……あんた、別の世界から来た人?」

「ええと……そうです」

「はぁ……なるほどねぇ」

なにがなるほどだろう。

その女性は、なにやら一冊の本のようなものを取り出した。

「あなたは……地球から来た人?」

「えっ、あ、はい。そうです」

「……これで10人目か」

なにやらぼそぼそしゃべっているが、俺には何を言っているのかわからない。

「ティールってやつに会った?」

「あ、はい。ティールっていう少女に」

「ふーん。あの子何着てた?」

「着ていたもの?……たしか、ちょっと薄くて青っぽい服でした」

「あー……君、あの子に好かれてるね」

「はっ?いきなり何を……ていうか、初対面で好かれるなんてことありますか?」

「あるよ。あの子がそうだもん。あの子は、着ている服によって態度とか、機嫌なんかがわかるんだ。青の服だったら好かれている証拠。赤だったら、機嫌が悪い証拠とかっていう風にね」

服の色で機嫌とかがわかるのか……なるほど、今度からちょっと意識してみてみよう。

「話はこれくらいにしておいて、さっさとそのバッグ届けに行ったらどう?」

「あっ、そうですね。ええと、ありがとうございました」

最後にお礼を言い、ここから少し先にある食堂の店主に会いに行こう。

それとついでに、ご飯でも食べようかな……。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る