歯車のかみ合わせ
ほんの数分が地獄に感じられるような人もいれば、
いつまでも時間を気にすることなく過ごせる人もいる。
一緒にいても苦にならない人とは、
きっと歯車のかみ合わせがいいのだろう。
趣味が同じだったり、笑いのツボが一緒だったり、考え方が似ていたり。
かみ合わせのいい歯車が、
かっちりと合わさって回転しているようなものだ。
しかし、人間にはいろいろな一面があって、
誰かに見せているのなんてその一部にすぎない。
相手の歯車の歯のひとつひとつを、
すべて知っている人なんていないだろう。
だから、何かが起きたときに相手のことがよくわからなくなってしまう。
回転する速度が合わなくなってしまったときや、
ちょっとしたかみ合わせのズレが生じてしまったときに。
ずっと何も問題ないまま回りあうことは不可能に等しくて、
ほんの些細なことで歯車はかみ合わなくなってしまう。
相手も自分も、昨日までと何ひとつ変わっていなかったとしても。
だからこそ、余計に混乱して歯車の相性に疑問を感じたりしてしまう。
でも、いままで一緒に回ってきた時間が消えてなくなるわけじゃない。
かみ合わせがいいからこそ見えていなかった相手の一面を、
初めて見ることができたのだと思えばいい。
本当は見えていたはずなのに、見えていなかったものだってあるはずだ。
だから、もっとしっかりと目を開くことにしよう。
なんとなく目を開けているだけでは、
見えているはずのものも見えやしないだろう。
まだ自分も知らないような相手の一面、
きっと素晴らしいものがあるはずだから。
勿忘草 桜瀬悠生 @mogurikumaru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます