歯車のかみ合わせ

 ほんの数分が地獄に感じられるような人もいれば、


 いつまでも時間を気にすることなく過ごせる人もいる。


 一緒にいても苦にならない人とは、


 きっと歯車のかみ合わせがいいのだろう。


 趣味が同じだったり、笑いのツボが一緒だったり、考え方が似ていたり。


 かみ合わせのいい歯車が、


 かっちりと合わさって回転しているようなものだ。


 しかし、人間にはいろいろな一面があって、


 誰かに見せているのなんてその一部にすぎない。


 相手の歯車の歯のひとつひとつを、


 すべて知っている人なんていないだろう。


 だから、何かが起きたときに相手のことがよくわからなくなってしまう。


 回転する速度が合わなくなってしまったときや、


 ちょっとしたかみ合わせのズレが生じてしまったときに。


 ずっと何も問題ないまま回りあうことは不可能に等しくて、


 ほんの些細なことで歯車はかみ合わなくなってしまう。


 相手も自分も、昨日までと何ひとつ変わっていなかったとしても。


 だからこそ、余計に混乱して歯車の相性に疑問を感じたりしてしまう。


 でも、いままで一緒に回ってきた時間が消えてなくなるわけじゃない。


 かみ合わせがいいからこそ見えていなかった相手の一面を、


 初めて見ることができたのだと思えばいい。


 本当は見えていたはずなのに、見えていなかったものだってあるはずだ。


 だから、もっとしっかりと目を開くことにしよう。


 なんとなく目を開けているだけでは、


 見えているはずのものも見えやしないだろう。


 まだ自分も知らないような相手の一面、


 きっと素晴らしいものがあるはずだから。

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勿忘草 桜瀬悠生 @mogurikumaru

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