「不正解」な「正解」

 できるかぎり正確に、人間の目と鼻と口を描いてみてください。

 

 そんなことを言われたとき、あなたは何を参考にして描くだろうか。


 何も考えずに描きはじめる人もいれば、


 好きな芸能人の画像を参考にする人もいるだろう。


 自分の容姿にコンプレックスがない人は、


 手鏡に自分の顔を映しながら描くに違いない。


 もっとも、どれだけ正確に描けたとしても、


 それは「その人」の目と鼻と口でしかない。


 人によっては違和感を覚えるかもしれないし、


 人種による違いが気になる人もいるだろう。


 結局、どれだけ正確に描けたとしても、「正解」を描けているわけではないのだ。


 なぜなら、そんなものは存在しないからである。


 もしも「正解」をひとつに決めたとしたら、


 ほとんどの人が「不正解」になってしまうだろう。


 それなのに、多くの人が「正解」を基準にして「不正解」を決めようとしている。


 顔のパーツだけではなく、そのほかのあらゆることについても。


 僕だって同じで、まっさらな状態で何かを見たり聞いたりするのは難しい。


 どうしても「正解」を基準にして考えてしまうし、


 見慣れているものが「当たり前」なのだと思ってしまう。


 だからこそ、鏡に映った自分や他の誰かと見比べるのではなく、


 目の前の相手をしっかり見つめないといけない。


 簡単なことではないけれど、ふとしたときに思い出すだけでもいい。


 それだけでも、きっと何かが違ってくるはずだ。

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