実加アフター
私が通っている学校の同じクラスには、不愛想な男子生徒がいる。
いっつも退屈そうで、気難しげで、不満そうな顔をしている子が。
そいつの名前は、橘紅蓮。
名前だけみると、かっこよくて強そうなイメージがあるけど、見た目はもやしっ子だ。
体力を使う事は苦手で、体育のドッジボールでもいつも真っ先にあてられてる。
そんな紅蓮は、いつもゲームをやっている。
授業中でも、放課中でも。
先生からゲーム機を隠して、こっそりやってばかりいる。
だから、一見すると人の事なんてどうでもいいみたいに見えるだろう。
でも、知っている。本当はやさしい事を。
だって、困っていると、助けてくれるから。
きっと紅蓮は、人と仲良くなるのが苦手なのだ。
うまく関われないだけ。
だから、一人でできるゲームをするしかないのだと思う。
そう思った私は、いつも話しかけているのだけど、紅蓮はうっとおしそうにするばかり。
話しかけるなとか、邪魔するなとか、そんな事ばっかり言ってくるのだ。
本当は、私達と一緒にいたいと思っているくせに。
男の子ってたまにそう、無駄に意地はって。プライドばかりで。
こっちは紅蓮のためにやってるのに、どうしてそんな態度をとりつづけるるのか分からなかった。
紅蓮がそうなのは私だけじゃない。
他の人にも同じ。
なんならクラスメイトだけでもない。
教師とか大人とかでも、まったく変わらない。
修学旅行とか、課外授業の時だって、大人達とも距離をとっていた。
どうしてそんなにかたくなに人を遠ざけるのだろう。
私には、一人ぼっちでいる紅蓮が、いつも寂しくしているようにしか見えない。
疑問に思いながらも紅蓮にあれこれ話しかけてたら、ある日あいつがポツリと呟いた。
それはただの気まぐれだったのだろう。
「ゲームの神様がいたくれたらいいなって思った事があるんだ」
「何の話?」
突然の事で、私はまったく心の準備ができていなかったから。
その言葉に何がこめられていたのか、理解できなかった。
「そんな神様がいてくれたら願いを叶えてくれると思ったんだ。でも、そんな事あるわけないよな」
紅蓮はどんな願いを抱いていたというのだろうか。
気になったけれど、答えは分からなかった。
だって、紅蓮はそれと同じ話は二度もしなかったから。
私はあんまり記憶力がよくないから、その時に他にも何か話したかもしれないけれど、忘れてしまった。
でも。
その時見た紅蓮の姿が、今にも消えていなくなってしまいそうで、不安になった事だけは強く覚えている。
まったくおかしな事だけど、ある日突然いなくなってしまう気がしたのだ。
紅蓮は、いなくなったりしないよね?
けれど、よく分からないこと言えるわけなくて、私はただその気持ちを胸にしまっておくしかできないでいた。
ラビリンス・ゲーム 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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