強行突破⑤
ラボの内部は四つの部門に分かれていた。
一番手前がボディ製造部、真ん中がシステム設計部、奥側が稼働試験部で、さらに大きな扉で隔てられたその先に別棟の廃棄処理部があった。
アンドロイドの製造は、全て流れ作業になっていた。
まず最初にラインに胴体が乗せられると、手、足、頭の順番で接合されていく。
全体が仕上がると、そのままシステム設計部に流れていき、プログラムが組み込まれる。
最後に稼働試験部で実際に動きをチェックしてみて、必要な微調整を行っていた。
その各部門にはそれぞれ多くの作業員がおり、それぞれに担当する仕事に従事していた。
ただ、全員同じ作業服を着ていたものの、帽子のかぶり方だけが違っていた。
ひさしの部分が前か、後ろ向きか。
それによって、各個人の考え方を表明していた。
議長派か、副議長派か。
また、やっているのか………。
そして、システム設計部の前まできた源川は、稼働試験部の奥の扉の前で行われている行為を見て胸が痛んだ。
数人の副議長派の作業員が鉄パイプでアンドロイドをめった叩きしていたり、チェーンソーのようなもので体を切断していた。
しかも、楽しんでやっているようで、時折、興奮して奇声を発したりしていた。
酷いことを………。
源川が目を覆いたくなる気持ちになっていると、議長派の作業員たちが止めにやってきて小競り合いになった。
すると、そこに鳳凰の鶏冠のような形をした紫色の帽子をかぶった複数の男たちがやってきた。
それは議長直属のトラブル解決グループ“フェニックスチーム”の面々だった。
そのリーダーであるナイデル・マーカスを中心に仲裁に入ると、あっという間に両派の面々は引き離された。
それから副議長派の作業員たちは腹立ち顔でラボⅠを出ていき、議長派はまた作業に戻った。
そのあとナイデルは、大きめのバッグを手に持つと外に出て行った。
源川は、フェニックスチームの面々が何やら柩のようなものを運び込み始めたのを横目にしつつもシステム設計部の個室に入った。
すると、ズラッと並んでいる無数の端末を手早く同時に扱っていた一人の女性が振り向く。
プログラムの設計担当責任者、ヒルダ・ロアンヌだった。
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