強行突破⑥
「源川アドバイザー、どうしたんですか?」
「ちょっと、渡したいものがあって………」
「何ですか?」
「君がずっと知りたがっていたものなんだけど………」
源川はポケットから取り出したディスクを差し出した。
「ひょっとして、“四番さん”に使ったプログラムですか!?」
四番さんとは、今や源川の代名詞にもなっている名称だった。
四体いるアルテミオンの巡回係のうち、四番目に報告をする個体。
だからそう呼ばれていた。
「まあ、そんな感じのものかな。もしよかったら、参考にしてもらいたいと思って………」
察しのいいヒルダはディスクを受け取ると、目を輝かせた。
「ありがとうございます! どれだけ解析してもフィルターがかかっていて分からないので、イジワルだなって思っていたんです」
「そんなつもりはないけど、ちょっと特殊なものなので、あまり見られてもって思っていただけだ………」
「そうだったんですね! そんなマル秘のものを教えてもらえたなんて、嬉しいです! 私に使いこなせるかは分かりませんが、精一杯勉強させてもらます!」
と、そんな折、壁のほうにある作業台の上の電話が鳴った。
ヒルダはスラッとした長髪を翻し、上機嫌のまま駆け寄って受話器を取る。
ところが、すぐに顔を向けてきた。
「源川アドバイザー、議長からです!」
「私に?」
「はい、緊急の用らしいです!」
「分かった」
源川はそう答えると机に歩み寄り、ヒルダと入れ替わるようにして受話器を受け取った。
『源川アドバイザー、ラボのあとで、いつもの調査に行かれますか?』
モニターに映るラミアは、やや硬い表情をしている感じがした。
「はい、その予定ですが」
『そのあとでもいいので、少し時間はありますか?』
「大丈夫だと思います」
『では、コスモタワーに戻り次第、私の部屋までお願いします」
「分かりました」
源川はラミアがモニターから消えるのを確かめてから受話器を置いた。
その間にも、ヒルダは端末の一つにディスクを差し込み、画面に表示されているプログラムにかじりつくように見入っていた。
「………」
そして、それを見た源川は、複雑な心境になった。
◇ ◇ ◇
ラボの外に出たナイデルは、物陰に隠れて副議長派の作業員たちが車に乗り込むのを見ていた。
「どうする?」
「こんなところにいてもおもしろくも何ともない。ラボⅡに行こうぜ」
さらには、そんな会話を聞きつつ、バッグからバッタの形をしたミニサイズの無線式偵察機とコントローラーを取り出した。
コントローラーには、偵察機に搭載されてるカメラの映像を見ることのできる小型のモニターがついていた。
そして機体を起動させるとナイデルはコントローラーを巧みに使って浮上させ、副議長派の男たちが乗った車を上空から追跡した。
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