第三話 内緒の相談
今日で三つ目………。
佐山が窓から彗星と光る粉を確認していると、通路を歩く靴音が聞こえた。
ドアを開けてのぞいてみると、三玲が玄関ロビーから外へと出て行ったところだった。
連日、こんなに朝早くから………。
そう思いながら机の上の電話を確認すると、幸恵からの着信が二十九回。
ため息をつきながら長官室を出た佐山は、階段前で二階から聞こえてくるヒナコの声と大きなイビキを聞いた。
「ちょっと、二人とも起きなさい! 今、何時だと思っているの!」
ヒナコくんも大変だな………。
佐山はどうしたものかと思いつつも階段をのぼった。
◇ ◇ ◇
「もう、いい加減にしなさい! 入るわよ!」
ドアを何度もノックしていたヒナコだったが、二人がいつまでたっても出てこないので、ついには中に入った。
二段ベッドの上にはカツヤ、下ではダイスケがだらしなく眠りこけていた。
「起きなさい! 仕事の時間よ!」
ヒナコが大きな声で呼びかけると、二人はようやく布団の中でモゾモゾと体を動かした。
「ウルサイな、ピーチクパーチクと………」
「俺たちは、昨日もさんざんコキ使われて疲れているんだ、もう少し眠らせてくれよ………」
枕に顔をうずめてモゴモゴ言う二人。
「起きなさいって言っているの! カツヤは巡回、ダイスケは観測でしょ!」
「今日はパス………」
「俺も………」
と、そこへ佐山が入ってきたので、ヒナコは驚いた。
こんなところに来るなんて極めて異例だからだ。
「あっ、長官、おはようございます………!?」
「おはよう、ヒナコくん」
佐山はヒナコをねぎらうように返事をすると、ベッドのカツヤとダイスケを見た。
自分が所属する機関のトップが来たところで、二人は起きようともしなかった。
しかも、あろうことか、顔さえ枕からあげずに言った。
「長官、体調が悪いので、今日の任務は休みます………」
「下に同じくです………」
「嘘ばっかり言わないで! サボりたいだけでしょ!」
二人を相手に一人で奮戦するヒナコを佐山がなだめた。
「ヒナコくん、いつもありがとう。だが、君にも自分の仕事があるだろう。あとは私が」
「えっ、長官が………!?」
ヒナコはさらにビックリしたが、佐山にそう言われてはどうすることもできない。
「分かりました………よろしくお願いします!」
だから頭を下げてそう言うと、部屋を出て行った。
そのやり取りを聞いていたカツヤとダイスケは、わざと大きなイビキをあげて寝ているフリを始めた。
ヤレヤレと思いながらも、佐山はダイスケの近くまで寄ると、耳元で小声で言った。
「ダイスケくん、ちょっと相談があるのだが………」
「長官、俺、体調が悪いんですけど………」
「それは分かっているが、実は………」
「………!?」
そして、佐山の話を聞くや、ダイスケはピタッとイビキを止め、ガバッと起き上がった。
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