孤軍奮闘②

「岡さん、どうでしたか!」


 岡倉はドア口からミサコに呼びかけられると、編集機から顔を上げた。


「どうもこうもない、また、いつものところで切られた」

「ほんの最初の部分だけっていうことですか?」

「そうだ。お前も懲りないな。ブロックされることは分かっているはずだろ?」

「そうだとしても、撃たない鉄砲は当たりません! それが私の仕事なんですから!」

「まったく、リポーターは因果な仕事だな。編集のほうが気楽でいい」


 岡倉がそう答えると、ミサコの後ろにトモキの姿が見えた。


「確認が終わりました………」

「遅いのよ、もっとさっさと済ませてよね!」

「すいません………」


 ミサコは頭をかいているトモキからディスクをもらい、岡倉の横まで行ってそれを差し出した。


「じゃあ、またこれ、お願いします!」


 ところが、何故か岡倉はミサコに合掌をした。


「何ですか?」

「ご愁傷様、どうせ部長にカミナリを落とされたんだろ? 隠密警察が来ていたらしいからな」

「お生憎様、私はそんなことでヘコたれたりしませんから!」

「こりゃあ、手を合わせる相手を間違えたな。気の毒なのは部長のほうかも知れないな」

「コメつきバッタみたいに頭を下げるしかできない人なんて、気にしなくてもいいんですよ!」


 岡倉はその表現がおかしくて、口で電子タバコをユラユラさせながら思わず苦笑した。


「いつもながら威勢がいいな。その調子だと、お供するほうが大変だな」


 さらにミサコの勢いに気圧されてバツの悪そうな様子をしているトモキに対してそう言うと、ディスクを受け取った。


「それで、編集はいつも通りの演出でいいんだな?」

「はい、すごく分かりやすいほうがいいです!」

「了解だ、ガッツリ悪役ぶりを際立たせてやるよ」

「お願いします!」


 ミサコは小気味よくそう答えると、タタッと部屋を出て行った。


 そしてトモキも岡倉にペコリと頭を下げると、そそくさとドアを閉めた。

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