待ちわびた連絡②

 二つのキーワードでの検索を概ね終えた三玲は、端末から右手の指のプラグを抜いた。


 と、ちょうど壁時計から午前零時を告げるチャイムが流れた。


 これで、残された日は、あと六日。


 すでに三玲が地球に降り立った日から半年近くの歳月が経過しようとしていた。


 その間、毎日、九恩からの連絡を待ち続けてきた。


 こちらからは怖くてコンタクトを取れないからだ。


 ひょっとしたら、すでに………。


 また、拭い切れない嫌な予感が頭をもたげてくる。


 とはいうのもも、さすがにこれ以上はもう待てない。


 すでに時間との戦いにもなっていた。


 今、この瞬間にも、“時の終わり”が刻一刻と近づいているのだから。


 でんわです、でんわです。


 が、突然、小声で耳打ちするような声がどこからか聞こえた。


 ………!?


 三玲が左手の袖を少しまくってみると、ささやきさんの液晶画面に糸電話のマークが表示されていた。


 すぐにそのマークを押すと、画面に九恩が映った。


『君から頼まれていたものだが、昨日、小型の輸送機で送った。計算上では、今日の午前五時五十九分に到着しているはずだ』

「………」


 三玲はしばらく言葉に詰まった。


 信じられない思いだった。


 ご無事で………。


 涙腺のない三玲の目が、九恩を見つめながらかすかにわなないた。


『どうした………?』

「いえ………ありがとうございます。すぐに落着地点を探します………」

『頼む。念のために、見つかったら教えてほしい』

「分かりました」


 三玲はそう答えると、九恩の次の言葉を待った。


 が、会話はそこで途切れたまま、しばし沈黙が流れた。


 九恩が無言であればあるほど、三玲の中で自責の念がこみ上げてくる。


「九恩さま、申し訳ありませんでした………」


 だから、それしか言えなかった。


 出過ぎた真似をした上に、九恩を巻き込んでしまったからだ。


 なので、もしアイテムを送ってもらったことを知られても、自分が無理矢理頼み込んだのだと弁明すればいい。


 そうすれば、九恩が咎められることはないはず………。


 と、そんな三玲の思考状況を感知したかのように九恩が言った。


『いや、謝らなければならないのは私のほうだ。遅くなってすまなかった………」

「………」


 三玲は返答できなかった。


 半年前のあの日に任務を離脱することを告げて以来、九恩はずっと考え続けてきたのかも知れない。


 自分たちに何が起こっていて、何を為すべきかを。


 しかも、立場的に部下の尻拭いもしなければならない。


 そんな板挟み状態にさせてしまったのかと思うと、三玲は改めて胸がザワッと震えるような感覚になった。

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