【5.比翼】
那雪が魔法戦乙女ルーナ(の代理)を始めてからひと月、月乃とストロベリーな関係になってから半月が過ぎる頃、ようやくあと1週間ほどで月乃が完治&復帰するメドがたった。
しかし──まるで狙いすましたかのようにこのタイミングで、暗禍達の攻勢も急激に激化し始めたのだ!
当初は魔法少女稼業(?)に慣れ、魔力も増大中(※月乃とのふたりエッチが房中術代りになったらしい)の那雪が懸命に戦い、何とか優位を保っていたのだが、敵側が“質”で勝つことをあきらめ、“量”による蹂躙を始めると一転ピンチとなる。
どのような武人達人であろうと、前後左右さらに四方斜めから同時に襲われればすべて防ぎきることなんてできないのだ。
だからこそ、達人はそもそも四方から囲まれないような位置どりを心がける。
あるいは防御魔法が得意で全方位にバリヤーのようなものが張れるなら、多少は望みがあるかもしれないが、生憎、那雪の魔法特性はどちらかというと強化、つまり手持ちの武器の性能や身体能力を高めることに秀でているタイプだ。
身体能力を高めるといっても、上級暗禍の攻撃を受けても傷ひとつつかないほど頑丈になれるわけではなく、一撃でも食らえば戦いの天秤が敵側に大きく傾くだろうことは、未熟者の那雪も理解していた。
必然的に敵の攻撃は回避するか、武器──セレニティウィングの光剣で切り払うしかない。
しかし、敵は狡猾なことにさらに一体一体の質を落とし、「四肢と胴体が触手でできた先●者」のような雑魚を1000体単位で投入してきたのだ。
しかも、その中に数体、獣の体で尻尾だけが触手の中級暗禍が混じっている。
それでも魔法戦乙女ルーナ(偽)は頑張ったのだが、倒した数が300体を越えたあたりで、ついに気力と魔力が底を突き、数の暴虐に屈することとなった。
両手を大きく広げられた、まるで十字架にかけられた罪人のような姿勢で触手に吊り上げられた
地面からは無数の触手がシュルシュルと伸びて
触手はほかにも手や腰にも絡みついて、那雪はもはやほとんど身動きがとれなくなっていた。
さらに残る触手の一部は、彼女の下着の中へも侵入を試みる。
あるいは、万全の状態であれば、
「ぃ、いやぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!」
絹を裂くような悲鳴をあげる那雪を、敵以外に見る者がいないのが唯一の救いだろうか。
最初に右足に絡みついた触手は、そのまま華奢なルーナの太腿をつたって根本までゆっくりその先端を伸ばす。
下腹部を覆う下着と太腿の肌の境目、本来は聖なる魔力でガードされているべき箇所を苦も無く潜り抜け、その場所へと潜り込んでいく。
「あ、あぁぁぁっ……」
身を固くして懸命に閉じているふとももの隙間に、粘液に濡れヌルリとした感触の触手が割り込む。
少しずつ広がるその感触はついに“そこ”にまで到達すると、触手の先端がその敏感な部位をツンツンとつついた。
那雪は、その感覚に嫌悪しながらも、どこか痺れたような疼きが腰の奥に生じたのを感じ、ビクッと首を反り返らせた。
彼女は月乃との間に
その純潔がこんなところで醜悪でおぞましい触手によって散らされるのかと思うと、那雪は気が狂いそうになった。
「んんっ……くっ…はぅん!」
せめて人としての尊厳だけは守ろうと、必死に奥歯を噛み締めてなんとかその感覚に堪えようとする那雪だが、薬効成分のある粘液というまったく未知のアプローチを使って仕掛けられた快楽の陥穽は、性的な攻めが弱点の彼女にとっては、雪ダルマをガスバーナーで炙るようなもの、とても耐え切れるものではなかった。
嗚呼、哀れ、魔法戦乙女ルーナは、一部のウス異本の如き凌辱にさらされ、汚されるのだろうか。
否、断じて否。
「なゆの(ピー)を(ピー)していいのは、わたくしだけよーー!!」
あまり上品とは言い難い(婉曲表現)台詞とともに、もうひとりの“魔法少女”が顕現し、圧倒的な範囲攻撃魔法で敵の群を掃討&抹消していく。
する。
胸元が開き、足元にもスリットの入ったエレガントな深紅のロングドレスと、黒タイツ&ハイヒールというアダルトちっくな
その容貌は、髪と瞳の色こそ違うものの、よく見れば「河合那雪」と瓜二つだった。
無論、その正体は月乃だ。“ルーナ”のピンチを目の前にして、焦れた月乃が、ユゥリィが妖精界で作らせていた那雪用にカスタマイズされた媒体を使って強引に“スノウ”に変身し、“ルーナ”を助けに来たのだ。
「大丈夫かしら、なゆ…(ゴホン)ルーナ?」
「ふぇえ、怖かったよぅ~」
恐怖のせいかいくらか幼児退行気味に泣き出す“ルーナ(=那雪)”の顔を見て、「あぁ、あたしの顔で泣きベソかくなゆもステキ♪」と内心狂喜する“スノウ(=月乃)”。
なお、そのまま那雪の部屋に戻ったふたりは、“スノウ”は“ルーナ”との姿のままで互いの身体を求め、貪り合うのだった。
* * *
その後、ふたり組の魔法少女となった魔法戦乙女ルーナと魔法戦巫女スノウは、絶妙なコンビネーションで数多の暗禍やその隊長格の怪人(ユウリィは「禍異魔」と呼んでいた)の侵攻を撃退していく。
ただし、時々ふたりの“中の人”が入れ替わっている(最近はむしろその方が多い)のはご愛嬌。
もっとも、ルーナもスノウも、それぞれ固有の口調や口癖、仕草などがあって、中の人がどちらであっても、強く意識しなければ“ガワ”の方のそれに引っ張られるので、他人から不審に思われることはほとんどないのだが。
ちなみに、この場合の他人とは一般人ではなく、“同業者”──他の魔法少女のことを指す。
なんでもユウリィいわく、“影の国”と呼ばれる世界から来る暗禍の被害は、この町だけでなく地球各地のあちらこちらに広がっており、それぞれの被害の著しい地域ごとに魔法少女(もちろん現地でスカウトされた地球人だ)がいて、暗禍と戦っているのだとか。
つい先日、ルーナとスノウも、隣り町から来た“
ルーナ/月乃と同じくらいの年頃に見えるふたりは、主に前者が近接戦、後者が後方からの遠距離支援を担当しているらしい。
その意味では、ルーナ&スノウと似ていると言えなくもない。
「わたくし、“巫女”って、もっと清楚で淑やかなものだと思っておりましたわ」
「あ、あははは……」
幻獣召喚士がつく溜息に、魔法戦乙女は内心同意しつつ誤魔化し笑いを浮かべるしかない。
ちなみにその時、魔法戦巫女の“中身”だったのは当然月乃の方で、大型暗禍相手に聖竜之巫女とふたりで喜々として大火力技を思う存分ブッ放していた。
「貴女も苦労なさってますのね」という幻獣召喚士の視線にあえて気づかないフリをしてスルーするのが、那雪にできる精一杯の月乃に対する誠意だった。
まぁ、そんなアクシデントも時折あるものの、基本的にはふたりはバイオレンスだがラブ&スイート(かつ割とエロティック)な日々を送っている。
今日も「変身したまま」ベッドで抱き合うふたり。熱い交歓(意味深)ののち、アダルトな“スノウ”の姿をした月乃が、“ルーナ”の少女姿の那雪の耳元で思いがけない
「ねぇ、今度、変身したまま学校に行ってみない? なゆが小川月乃として女子中学生やって、あたしが河合那雪として先生やるの」
「そ、そんな……ダメよ、ツキちゃん、そんなこと……」
即座に否定する那雪だが、反論の語調は弱弱しい。
「あら、どうして?」
「それは、その──ほら、ツキちゃんが英語の授業なんてできないでしょう? わたしだって、ツキちゃんのお友達のこととか詳しく知らないし」
「大丈夫。ついこの間、スノウが【
自信満々に断言する月乃。
「で、でも──第一、髪と目の色がスノウと那雪、ルーナと月乃では違うし」
「フフッ、そんなの魔法で簡単に変えられること、なゆだって知ってるクセに」
ニッと笑って、月乃は至近距離から那雪の瞳を覗き込む。
それだけで、魅入られたように那雪は視線を逸らせない。
「本当は、なってみたいんでしょう? あたしに──“小川月乃”に」
──誰にも知られることなく、この自分が、担任するクラスで一番の人気者の美少女、“小川月乃”になる?
“月乃”として授業を受け、先生に指名されて回答を述べて褒められ……。
休み時間に月乃の友達と楽しくおしゃべりし、他愛ない話題で盛り上がり……。
体育の時間も、月乃の体操着に着替え、授業の球技などで存分に活躍し、クラスの男子たちの憧れの視線を集め……。
放課後は月乃の家に帰り、部屋で私服に着替えたあと、“ママ”や“パパ”とお夕飯を食べ、風呂に入り、そして月乃のベッドで眠る……?
本来であれば不可能なはずの、けれど魔法によれば簡単に実現できてしまう
その“企み”は、己れに少なからず劣等感を抱いている那雪の心を魅了し──彼女は知らず知らずのうちに頷いてしまっていた。
「あぁ……はい、なりたぃ、です」
ニンマリと笑う
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