その4)スイッチオーバー
いろいろ面倒な事情を込みで始まった好実のバースデーパーティだけど、パーティ自体は例年どおり──て言うか例年以上に盛り上がって、主役である好実は大満足だったみたい。
コレは、やっぱり初めて“お姉ちゃん”ができたことが、うれしかったからだろうなぁ。
(はぁ~、いくら好実ちゃんのためを思ってのこととは言え、その本人を騙しているという事実には、やっぱり罪悪感を抱いてしまいますわね)
ちなみに、本来のボク、“日下部柚樹”の行方については、兄さんがトンデモない誤魔化し方をしてくれた。
いわく、わたくし──“高代ゆき”は旧家の箱入りお嬢様で、本来は今日もお稽古事があって屋敷を抜け出せなかったんだとか。
けれど、雄馬さんに誘われたお誕生会にどうしても行きたかったわたくしは、彼のアドバイスで仮病を装って自室にこもってから、こっそり屋敷を抜け出した──ということらしい。
ただ、お付きのメイドさんが協力してくれてるとは言え、ゆきが寝てるはずのベッドが空だと露見するとマズいので、変装した柚樹を影武者代わりに置いてきたって設定なんだとか。
何、その穴だらけのホラ話?
(もっとも、好実ちゃんは、「すごい、マンガみたーい!」って素直に信じてましたけど……)
素直で純心なのはとってもいいことですけど、そのまま世間に出た時、簡単に騙されちゃうんじゃないかと、ちょっと心配になりますわね──って、ダメだダメだ。
「良家のお嬢さん・高代ゆき」の演技を、もう6時間以上続けているせいか、口に出す言葉だけじゃなく、頭の中でもお嬢さんっぽく考えちゃってるよ、ボク。
「どうかしたの、お姉ちゃん?」
微妙にシャレになってないコトに気付いたボクが、頭を軽く横に振っていると、好実が声をかけてきた。
「いえ、何でもありませんよ、好実ちゃん」
ちょっと心配そうな妹に、反射的にニッコリ微笑んで見せちゃうあたり、ボクも結構見栄っ張りなのかもしれない。
ちなみに、今はみんなでパーティーゲームをしているところ。すごろくと言うかモノポリーっぽいアレね。
現在、クレバーな兄さんと運と勘がいい好実が1位争いしてて、ボクはダントツの最下位なんだけど……。
好実は「やっぱりお嬢様だから、こういうのに慣れてないんだ~」と好意的に解釈してくれてます、ハイ。
(ゴメンなさい、好実ちゃん、じつはコレがわたくしの実力なんです)
サイコロ目が非常に悪いのと、目先の利益についフラフラ流されちゃうんで、この手の運と知略の両方が必要なゲームでは、いっつも負けっぱなしなんだよねー。
──ブルルッ……
「す、すみません、好実ちゃん……」
少しだけ頬を染めながら、好実の耳にあることを囁く。
「……うん、わかった。こっちだよ、お姉ちゃん」
「あン? どーした、好実、ゆき?」
不審げに顔をあげた兄さんに「メッ!」と指を突きつける好実。
「雄馬お兄ちゃん、女の子にはね、色々あるんだから、詮索したらダメだよ」
「?? ああ、トイレか」
兄さんが口に出した言葉に、なぜか自然と頬が熱くなってしまう。
「おーにーいーちゃん! “でりかしー”のない男性は嫌われるよ? お姉ちゃん、真っ赤になってるじゃない」
え、いや、そんなはずは──お、御手洗いに行くのは別に恥ずかしいことじゃ……。で、でも、よりによってソレを雄馬お兄様に……(きゅう~)。
「だ、大丈夫、お姉ちゃん?」
「え、ええ、だいじょうぶ、ですわ」
好実に支えてもらいながら、何とか平常心を取り戻す。
──はぁ、ボクって結構自分の演技に酔っちゃうタイプだったんだなぁ。
さっき、完全に「好きな男性におトイレに行くコトを知られて恥ずかしがるたお嬢様」になりきっちゃってたよ。
まさかボクが失神しかけるとは思わなかったのか、兄さんも「す、すまん、ゆき。確かに彼女への配慮が足りなかったな」って謝ってくれてる。兄さんの方も半分、コレが演技だということを失念してるのかも。
とりあえず、ふたりで顔を赤らめてお見合いしててもしょうがないので、ボクは好実に案内されて、お手洗いに向かった。
や、もちろん自分の家だから場所くらい知ってるけど、「始めてこの家に来たはずの高代ゆき」が間取りを知ってるのはヘンだからね。
「ありがとう、好実ちゃん」
お礼を言ってから狭い個室(と言いつつ、ウチのトイレは割かし広めなんだけど)に籠る。
ワンピースの裾をまくってショーツを膝まで下ろし、スカートが皺にならないように気をつけながら便座に腰を下ろす。
──って、今、ボク、何の躊躇もなく座っておしっこしようとしたよね?
マズいなぁ。いや、今のアソコをテープでとめられてるから、確かにこうしないとおしっこもできないんだけどさ。
普通ココは、立ったままおしっこしようとして便座を上げたり、それが原因で男だとバレたりするのがお約束じゃないの?
別に無理にバレたいわけじゃないけど、ボク、どんどん女の子としての習慣に染まってるような……。
(ま、まぁ、難しいことを考えるのはあとにしよ。とりあえず、先におトイレしとかないと)
普段おしっこするときとはまるで違う、なんとも言い難い感覚でボクの股間から尿が滴り始め、すぐにそれはプシャーッという飛沫に変わった。
テープでおちんちんごと尿道が押さえられてるからだろうけど、かりんさんいわく、「まさに、コレが女の子のおしっこする様そのもの」らしい──うん、ちゃんと尿が出せるか、昨晩実験されましたよ。トホホ……。
いつもより長く感じられる排尿の時間を過ごしてから、そこを拭くためにトイレットペーパーに手を伸ばす。
(はぁ~、これじゃあ、わたくし、まるっきり女の子ですね)
冗談半分に心の中で呟きながら、視線を前にやってドキッとする。
ウチのトイレのドアには、身だしなみを整えるために内側に鏡が取り付けられてるんだけど、そこには「黒と白のゴスロリちっくな服装をした可憐な女の子が、おしっこを終えてアソコを拭こうとしている」姿が写っていたんだから。
──ボクは、胸の鼓動が加速していくのを止められなかった。
ゴクッ、と音がしそうな勢いで唾を呑み込んでから、できるだけ気を落ちつけて、ボクはひとまずソコを右手に巻いたトイレットペーパーで拭いた。
昨晩テープを貼られてから、この状態でおトイレに行ったのは、寝る前、起きた直後、かりんさん家を出る直前、そして今が4回目だ。
でも、前の3回はこの状態に不慣れなことと、よその家にいるということの緊張感で、とくに何事もなく済ませることができたんだけど……。
(どうしよう。なんだかヘンな気分になってきちゃったよぅ)
そりゃねボクだってもう12歳だから、オ●ニーくらい知ってるし、シてる──あ、でもたまに、だよ? 週に1回くらい。
(ペース的には一昨日の晩にシたばかりだから、そんなにシたくなるはずないのに……)
ボクは、息を殺して、テープの切れ目から先っちょだけ出ているおちんちんに右手を伸ば──そうとして躊躇った。
(今の状態でテープが剥がれたりすると、やっぱりマズいよねぇ?)
素の状態でワンピース着て、万一おっきくなったら、一発でバレちゃうだろうし……。
かりんさんの家を出る前に例の「アソコに血が集まりにくくなる薬」の粉薬を飲まされたから、たぶん大丈夫だとは思うんだけどね。
やむなくボクは、両方の太腿の付け根──擬似的に女の子のアソコっぽい形になってる部分に指先で触れた。
「あッ……」
股間のその部分──具体的には後ろに折り曲げられたおち●ちんの付け根を触るだけでも、じんわりと気持ちいいのは意外な発見かも。
気がつくとボクは、右手でソコを触りながら、左手をなぜか自然に右胸に当てて、ペッタンコ(男のコだから当たり前なんだけど)のはずのそこをゆっくりと撫でさするように揉んでいた。
以前、スケベでお調子者の友達にコッソリ見せられた、ちょっとHなマンガの中で、ヒロインの女の子が部屋でシてる時のポーズが、こんな感じだったかも。
(そう言えば、あのコも、こんな感じのワンピース着てたよね)
思い出すと、余計にヘンな気分になってくる。
「はぁン、切ない、よぅ」
(な、なんでこんな時に、思い出しちゃうのよ、もぅ……)
チラリと横に目をやれば、手洗用小型洗面台の横に液体ハンドソープが置いてある。
(だ、ダメよ、ゆき、何考えてるの!?)
で、でも、このままだと、なんだか歩くのもぎこちなくなりそうだし……。
(そ、それは……わかったわ。けど、ほんのちょっと、試すだけよ。ね?)
心の中の「わたくし」と会話した後、ボクは右の中指の先にハンドソープの液をちょっとだけ付け、大きくまくりあげたスカートを口でくわえる(コレも、例のマンガでヒロインがしてた格好を真似してるんだけどね)。
ドキドキしながら右手をゆっくりと股間から後ろの方へと伸ばす。手探りで右中指の先がお尻の穴に届き……。
「! ッッッーーーーーーッ!!」
幸いなことに、スカートの端をくわえていたおかげで、ボクの呻きはほとんと外に漏れることがなかったけど、もし口が空いてたら、かなり大きな声で叫んでしまっていただろう。
痛みでも苦しみでもなく、間違いなく、あまりの気持ち良さに。
(だ、ダメ。こんなの続けてたら、おかしくなっちゃう……)
もっと奥へ入ろうとする中指を無理やり引き抜き、ボクはショーツを履き直そうとしたんだけど……。
肛門の少し前、折り曲げられたおち●ちんの先端がある場所が、おしっこ以外の液体で濡れていた。
「なん、で? ……あ」
問いかけるまでもなく、ボクも気づいていた。
さっきまでのアレが気持ちよかったからだ。
直接で触ってもいないのに、ソコからヌルヌルの液をいつも以上にダラダラと垂れ流していた。
「ふ、拭かないと……」
再度トイレットペーパーを手に取り、ソコを拭ったけど、完全に拭き取れてない。いや、拭いても拭いても(ペーパー越しに刺激されてることもあって)滲み出してくるのだ。
なんとか“じんわり湿ってる”というレベルに落ち着いたのを確認してから、ボクは黒のショーツを引き上げて股間を隠した。
さすがにあまり長時間トイレに籠ってると、好実が心配するだろうから、手早く手を洗い、扉の鏡を見ながら身だしなみも整える。
鏡の中の“高代ゆき”は、髪がわずかに乱れ、服にも多少皺ができていたが、なぜかさっきまでよりも色っぽく──そしてどこか大人びて見えた。
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