3章 黒ギャルさんと初デート(60%)
①神崎さんからの電話
とうとう残すところ、怪しい人物は後二人にまで絞られた。
犯人は中学の頃からの付き合いで一番気心が知れた仲の木村さんか、それとも腹黒眼鏡と揶揄される新田さんなのか。
現状どちらかなんてさっぱりだけど、いずれにしても犯人は相当頭の切れる自分であるのは間違いないだろう。
なんせ僕らが犯人をあぶり出すために始めたギャルコレを、裏の裏を掻く形で逆に上手い具合に利用されて根屋さんが裏アカの主だと思い込むよう一計を案じてきたというのだから、もう怒りを通りこして純粋に感服している。
というかこの人、絶対もっといい学校にいけたよね。
そして犯人はギャルコレ後、帰らずに神崎さんの後を密かに付け――
そこでゴローさんとの確執を目撃したことで、あの根屋さんを人質とした策を思いついたと。
この辺は殆ど憶測でしかないけど、遠からず当たっているに違いない。
犯人の目的は、廃工場に呼び出した神崎さんをゴローさん達に乱暴させ、恐らくはその写真をとって弱みを握ることだったのではと僕はそう睨んでいる。
仮にあの時、神崎さんが裏アカの犯人と思い込み敵視している根屋さんを見限ったとしても、その場合はまた神崎麗子は友達を裏切って保身を優先したという字面だけが一人歩きする形で、別の大きな一悶着があっただろう。
それ以前に、あの友達想いな神崎さんがショックを受けないわけがないから……。
どっちに転んだとしても、この人にとってはおいしい結果なのには変わりなかったということだ。ほんと、ふざけてる。
そうして神崎さんは裏アカをチェックしたこともあって、根屋さんを救うため廃工場へ行く選択肢を選んだ。
が、ここで犯人にとって想定外の事態が発生する。
思った以上に、ゴローさん達が頼りにならなかったことだ。
ちなみに僕が昨日この話を口にした時、一緒にいた神崎さん達は「そこかよ」みたいな顔で呆然としていたけど、あれはなんだったんだろう。
作戦に失敗した犯人がこれからどう動くのか。
ついでに、記憶にないけどゴローさんも僕にやり返そうとしているらしいから、うへぇって感じだ。
ただ、出来れば会いたくない相手ではあるが、一度ゴローさんを問いただすのはありだと思っている。
犯人が何らかの手段でゴローさんとコンタクトを取ったのは間違いないし、ひょっとしたら直接やり取りをした可能性だってあるのだから。
そう今起きてることとこれからについてを、神崎さんや星野さんに根屋さんと話合ったのが昨日のこと。
本日は土曜。休日である。
なんか思い返すと本当に濃い一週間だったなぁ。うん、体感で去年半年分のエネルギーは消費した気はする。
ということで充電といいますか、今日は一日、極力あまり動かないで過ごそうと決めていた。
さて、なにして過ごそうかな。あ、星野さんに熱烈に布教されたオススメアニメを見るとかいいかも。ただ色々あってどれから見たらいいかわからないから、一応星野さんに聞いてみとくか。
そう考えて星野さんにメッセを送る。すると、瞬時にライムが飛んできて――
『よ、童貞。家から出ない灰色の休日楽しんでるか? ちなみに私はこれから中学時代の友達と合コンだ。これが青春格差社会ってやつか泣けてくる』
根屋さんだった。というか、何ですかこの煽りは……。
どうにも根屋さんを助けて以降、妙な気に入られ方をしたらしく、ちょくちょくしょうもないライムが飛んで来るようになっていた。しかも、既読スルーすると猛攻撃してくるからたまったもんじゃない。
肩をすくめて根屋さんにメッセを返すと、スマホに入っていた動画見放題アプリをタップした。
が、その瞬間――
神崎さんから電話がやって来た。
突然のことに少しドキッと驚きながら電話に出る。何かあったんだろうか……。
『もしもし山代?』
「はい。僕ですけど。どうかしましたか?」
『あのさ、山代。今暇だったりする?』
「一応そうですね。今日は一日家出ゴロゴロする予定だったので」
『そっかそっか』
僕がそう答えると、電話の神崎さんの声が少し弾んだように聞こえて。
『じゃあさ。今から遊びいかない? あんたには今週だいぶお世話になったから、まぁそのお礼みたいな。ほら、今週はほんと色々あって大変だったからさ、今日は気晴らしにぱーっと遊ぼう的な』
お礼かぁ……別にいいのに。
ただ、ここで断るのもそれはそれで厚意に背く感じで悪いよね。よし。
「わかりました」
『よし。さっすが山代』
「それでどこに向かえばいいですか?」
『とりま一時間後に、銀澤駅集合ってことで』
「わかりました」
電話を切って準備にかかる。
というか、こういう女の人と出かける時って何着ていけばいいのかな。
って、あれっ、これってもしかして――
ま、まさか、デートってやつですか!?
……いや、冷静に考えてそう思ってるのは僕だけだよね……うん。
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