「高校受験したいと思っています。」

中3の1学期が終わる間際、担任はあるプリントを皆に配って本日中に書くように指示した。

個人懇談会で使うプリントだった。

そこには、1学期の振り返り、進学希望、2学期の目標を書く欄があった。

皆、スラスラと書いていく。

しかし、私は固まった。

進学希望。書けない。そう思ったからだ。

高校も、大学も書く欄があった。

どうしよう。皆、書き終わって、さっさと紙を出していく。

そう思うまま、授業が終わり帰る時間になってしまった。

私は、クラスに残って悩み続けた。

そして、中学受験で落ちた学校、親に今でも勧められている学校を書いた。

クラスには、担任と私以外誰もいなかった。


担任に、「今、お話する時間ありますか。」と聞くと「いいよー、どうした?」と了承してくれた。

「高校受験したいと思っています。」

そう単刀直入に伝えた。はぐらかしても無駄だと思ったから。伝えると同時に、紙も渡した。

「Oh・・・」

担任はテンパっていた。

実は私は、担任は薄々受験のことを勘付いているのではないか。と思っていた。

しかし、全く疑わなかったらしくとてもびっくりしていた。

それから、理由や通塾の様子、模試等、受験の準備度合いを聞かれたが、質問もテンパっていたからか、言葉がまとまっておらず私が十分に質問に答えられない時が続いた。

でも、なんとか冷静に話ができるようになってからは早かった。

1年の時から、受験を決意していた私は受験の準備はほとんどできていて、後は勉強を頑張るのみ。

そんな状態だったので、「それだけ考えているのなら大丈夫だね。」と言われた。


本当は個人懇談会の時にお伝えする予定だった。

しかし、こんな紙があるとは思わず・・・。

親とは、先生にどうお伝えするかどうかは相談していた。

3者面談ではあるので、本来であれば親と生徒両方が同時に入るのだが、親だけが最初に入り担任と二人で話をする。

そういうふうにしようと思っていると言っていた。

そう話した。


私が、この段階で担任に話したのには理由があった。

もちろん、紙を書く段階で嘘を書くことができず、事情を説明するしかなかった。というのもある。しかし、もう一つの大きな理由は、親の餌食になってほしくなかった。

受験するとはいえ、3年の時の担任は良い先生であり好きだった。

だから、私はせめて親の餌食にはなってほしくなかった。

そのため、ある程度心の準備をして置いてもらいたかった。


担任は、文句や嫌味も言わずすんなり受け入れてくれた。



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