捻挫

中3年の2学期が終わろうとする頃、私は駅の階段から落ちて左足首を捻挫をしてしまった。

その日のうちに病院に行き、松葉杖を貸してもらった。

8段から落ちたから、かなり痛めていた。

歩けなかった。


私はその日、塾の授業があった。

小さいビルの2階にある塾は、階段しかなかった。

階段を登るときは一人で行ったが、塾長の気遣いで下りの時は先生がついてきてくれ、助けてくれた。

塾の担当の先生は、荷物を持ったり道を空けるよう促してくれたりしてさりげなく手伝ってくれた。


その日は、電車で帰る予定だったので駅のホームに行くと沢山の人が道を空けてくれた。

また、電車に乗ると席が空いてなかったので端の方でじっとしていると色々な人が譲ろうとしてくれた。

私はその時学生で、どちらかというと譲る方だったので譲られると思わなかった。

譲られた時分からなくて、呑気に「次、降りるのかな」なんて考えてたら、「座ってください」と言われ、驚いた。


数日、その状態が続いた。

私は、ありがたさと申し訳なさでいっぱいだった。

いや、申し訳なさの方が勝っていた。


嫌なニュースばかりで気が滅入るこの世界。

世の中はもっと厳しいものだと思っていた。

けれども、それは一部の人でもっと優しい世界もあるんだと学んだ。


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