第11話 挟撃
「大変です!劉清軍はこちらに向かわず伏兵の軍へと真っ直ぐに向かい、これを殲滅!劉清軍は殆ど兵を失う事もなく、我らは伏兵一万を失いました!」
伝令兵からの急報に鈴悟王は慌てて問いただす。
「ど、どういう事だ!?奴は六万の兵でこちらに向かったのでは…」
と、そこで新たなる伝令。
「鈴悟王様!劉清殿より、書簡が届きました!」
「書簡だと!?おい、読み上げろ!」
「は、はい…」
伝令兵は言われるがままに書簡を読み上げた。要約すると、八源王国が鈴羅王国軍に扮して伏兵を配していたので、それを撃破した。他にもいるから気をつける様に、と。伏兵を倒したので、予定通りにそちらに合流する。伏兵との戦闘があった為、迂回して後方より合流する。
こんなところだ。
「ふ、ふざけるな…何だこれは!?東上皇国に攻め入るつもりが、逆に我らが追い詰められているではないか!」
劉清が後方より合流すると言っても、嘘の可能性がある。いや、伏兵の存在に気が付き、殲滅した時点で鈴悟王の手の内は読んでいたのだろう。
更に八源王国と結託し、鈴羅王国軍を殲滅すると考えているのであれば、八源王国軍と劉清軍との挟撃を喰らう事になる。
鈴羅王国軍は伏兵に割いた兵士数の減少を悟られない為に、残りの三万の軍を散開して進軍していた。それが裏目に出ることに。
もし、このまま挟撃を受ければ確実な敗北を喫するであろう。たとえ三万の兵であろうとも、五万の八源王国軍と六万の劉清軍による挟撃を、散開している鈴羅王国軍が太刀打ちできるわけが無い。
伏兵達と同じ様に殲滅させられるだろう。
「集結だ!散開している全軍に通達だ!速攻で集結し、戦闘態勢を取れ!」
鈴悟王は急いで全軍に指示を出し、そして状況を詳しく分析。
「…これは負け戦だ。五万と六万による挟撃では確実なる敗北。いや、軍の敗北だけでは済まぬはず。出陣した四万の兵が全滅なら、鈴羅王国はもう…」
四万の兵を一瞬にして失うとなれば、その隙を突かれて近隣諸国から食い物にされるだろう。つまり、国が滅びる。
ならば残った三万の兵を少しでも多く無事に帰還させるべきだろうか?
いや、数倍の戦力による挟撃を喰らえば全滅は必至。
話し合いによる和解…など、できる状況には無い。一方的に攻め込み、敗色濃厚になったら和解など、どれだけ不利な条件を突きつけられるのか、分かったものでは無いのだから。
「こうなったら…残る手は、一つしかない!」
鈴悟王は再び全軍に号令を出した。
「これより我が軍は、手薄になっている東上皇国の都を目指して進軍する!我らの勝利は東上皇国の陥落しか無い!!」
挟撃を恐れるあまり、鈴悟王は東上皇国への進軍を開始した。
そう、その最後の手段すら、里華の策の内だと気が付かずに…。
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