第58話「俺たちのエキセントリックおそロシアラブコメはまだ始まったばかりだ!」

「おかーさんに頼まれてプリン持ってきたよー!」


 タイミングがいいのか悪いのか。

 期せずして全員集合してしまった。


「……まあ、仕方ないわね。ここはみんなでプリンタイムにしましょうか」

「そうだな」


 西亜口さんとは、またふたりっきりになれる時間があるだろう。

 せっかくみんな揃ったんだ。そして、プリンもある。

 ならば、今、このときを楽しむべきだ。


「今行く!」


 里桜に応えて俺は玄関へ向かった。

 その後ろを西亜口さんと未海もついてきた。


「祥平ー! 一緒にプリン食べよーおぉおー!?」


 ドアを開けた里桜は俺たち三人を見て驚きの声を上げる。


「泥棒猫その2が来たわね。油断も隙もあったものではないわ」

「わ~! 未海、プリン大好きぃ~♪」

「って、なんでふたりがいるのさー!? で、なんで西亜口さん黒髪!?」

「企業秘密よ。プリンに免じて家に上がるのは許可するわ」

「って、なんで西亜口さんに許可が必要なのー!?」

「それは、わたしが祥平の彼女になったからよ」

「な、な、な、なんだってぇーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」


 西亜口さんはいきなり里桜を一刀両断した。

 さすが西亜口さん。先手必勝。玄関でバッサリ斬り捨てるとは。


「う、うぐぅうぅうーーー……! こんなに早く祥平が落とされちゃうなんてー! 幼なじみとして面目丸つぶれーーー!」


 いやでも、まぁ、里桜は男友達みたいなものだから。

 やっぱり恋愛対象にはならないというかなんというか……。


「これじゃプリンが三個しか喉を通らないよー! せっかく二十個持ってきたのにー!」


 相変わらず梅香さんはプリンを大量生産しているのか……。

 このままでは俺たちはみんな糖尿病にされてしまいそうだ。


「祥平の糖分補給は今度からわたしが担当するわ。砂糖を吐くようなラブコメを味わわせてあげる」


 どう考えてもおそロシアな展開にしかならない気がするが……。

 糖分過多な甘甘ラブコメを俺と西亜口さんが送るなんて想像がつかない。


「お兄ちゃあん♪ 甘甘なら未海がいくらでも担当するよぉ~♪」


 未海は未海で怖い。

 一歩間違うと西亜口さんより酷い結果になりそう。

 

「甘さなら任せろーーー!」


 里桜にそれは無理だ。


「ま、まぁ、今はともかくプリンを食べよう」


 人生は急ぐものではない。

 愛はゆっくりと時間をかけて育んでいくものだ。


「でも、わたしが一歩リードよ」


 西亜口さんは俺の顔を両手で抑えこむと、こちらに引き寄せる。

 そして、いきなりキスをしてきた!

 唇に! こんな、みんながいる前で!


 おそロシア。

 そして、さすしあ。


「お兄ちゃあーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!?」

「なにやってんのさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!?」


 ……もちろん、このあとパニックになった里桜とブチキレた未海が暴れ出して騒動となり刃傷沙汰になりかけた。危うく埼玉新聞に載るところだった……。


 ともあれ。


 俺たちの愉快で殺伐としたエキセントリックでおそロシアなラブコメは、まだまだ始まったばかりのようだ。


【(第一部)完】


<あとがき>

 以上で、第一部は完結です。ご愛読ありがとうございました!

 楽しんでいただけましたら、評価していただけると幸いです。

 コンテストの結果によっては、続編を書く可能性があります。

 最後まで読んでいただき、心より感謝申しあげます!

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シベリアからやってきた日露ハーフツンドラ美少女はクールでエキセントリックで殺伐としているけれどポンコツでかわいくて俺のことが大好き!? 秋月一歩@埼玉大好き埼玉県民作家 @natsukiakiha

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