第43話「教室の空気」

☆★☆


 学校である。教室である。

 なんか周りから視線を感じる。


 ……まぁ、俺と西亜口さんが一緒に帰ったりなんだりしてるのはクラスメイトたちにバレてしまってるからな……。昨日は校門で話したりしたからより多くの人の話題に上ったのだろう。


 西亜口さんにも視線を向ける者もいたが、すぐに冷たい目で睨み返されて瞬殺されていた。おそロシア。


 結果、人畜無害な俺に視線が集中することになる。クラスメイトに友人はいないので(西亜口さんも)、事情を訊いてくるような者はいない。


 ただでさえ居心地が悪い教室だが、さらにひどくなったな……。

 まぁ、今さらか。

 俺も西亜口さんも我が道を行きすぎてるからな。タイプは違うとはいえ。


 そもそも俺が三次元に対して普通に馴染むような人間だったら、創作をしていなかった。


 考えてみれば幼稚園の頃から周りと遊ばずに絵を描いたりしてたな。

 ……ああ、そうだ。なぜか、忍者が好きだった気がするな。


 ……ん? 忍者……?

 なにか引っかかるものがある。


 忍者……そして……西亜口さん……?

 ……黒髪の小さな女の子……瞳が青い女の子?

 名前は――。


 ――キーン、コーン、カーン、コーン♪


 予鈴だ。

 ああ、くそっ。

 あとちょっとで肝心なことを思い出しそうだったのに!


 ともあれ、そのあとはホームルームと授業を受けるしかない俺だった。

 早く来い、昼休み!


☆★☆


 昼休みである。


 西亜口さんが席を立ち、ツカツカと俺に向かって――いや、教室の後ろ側の出入り口へ向かって歩いていく。


 俺をチラッと見たが、そのままクールモードで通過。

 いつもは数分後に俺も席を立って合宿所で合流している。

 だが、変に教室の連中から注目されてる状態で合宿所に行くのも気が引ける。


 俺と西亜口さんが一緒に合宿所で昼休みを過ごしているということがバレたら、よからぬ噂が立つだろう。しかも、最近は里桜まで一緒だからな。


 男一人女ふたり(しかも美少女)と一緒に合宿所って、よく考えればトンデモナイ。

 いくら校長の弱みを西亜口さんが握っているとはいえ、周りからどんな噂を立てられるやら。


 ――ブィイイン!


 スマホが震える。

 なんだ。誰からだ?


『今日はお昼を一緒に食べるのはやめましょう。あの脳筋武道女にも知らせておいて』


 西亜口さんからだった。

 教室の雰囲気から警戒度を上げたか。さすがスパイ(本物かどうか知らないけど)。


『了解』


 西亜口さんに返信し、里桜にもメールを送る。

 ……まぁ、これまでが自由すぎたよな。


 合宿所以外でも会うことはできる。

 昨日は西亜口さんも家に来る予定だったしな。


 いろいろと学園生活も考えるべきか。

 コソコソするか堂々とするか。

 俺だけで決められる問題ではないけど――。


 ともあれ、俺たちは今日は久しぶりに各自昼食をとることになったのだった。

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