第4話「Eyes」

死神クロに夢が彼の仕事に支障をきたす理由を聞いた。


「俺たちは魂を導く。夢に閉じ込められて脳が死んだだけじゃ

魂を導けないのさ」

「脳死は人の死かどうか、それに関連してるんですか?」

「年齢に似合わず賢いな…。まぁ、そう言う感じだ。それが俺に

とっては邪魔なの。脳死でも勿論、魂を引っこ抜けるが手荒なことは

したくないのさ」


クロは扉のドアノブに手を掛けた。


「…ロイドは、死にませんよね?」

「…?あー、どうだろうな」

「え?どうだろうなって…」

「まぁ良いじゃねえか。早く出るぞ、お前も出たいだろ」


何か引っかかるような言い方をするクロに深く問い詰めようとするも

さっさと扉を開けて外に出てしまった。


「ルーチェ!」

「ロイド!良かった、無事にお互い会えたね」


ロイドの表情は綻んだ。しかしすぐに彼は警戒する。クロを見据えている。

クロはその視線を浴びながらも飄々とした態度は崩さない。


「アンタがロイドか。俺はクロ、色々あって彼女と一緒に行動することに

なったんでよろしくな」

「その色々あった部分が聞きたいんだが」

「細かいことは良いじゃねえか。それに警戒はいらないぜ、アンタが

、俺は死神としての仕事はしないからさ」

「…」


二人だけで会話が進んでいた。掴めそうで掴めない話だが、良い話では

無いようだ。ロイドの表情は険しい。


「ねぇ、早く行こうよ。夢を見てる張本人を探そう?」

「そうだな。死神と話すことなんて何もない」

「だよな。まぁ、俺はアンタの事は知ってるぜ。…なんてな」

「もう、死神ジョークはやめてください!」


珍しくルーチェが先頭を歩いていた。後方を歩く二人は険悪なムードだ。

その間に挟まれているルーチェにとっては居心地が悪い。

廃屋を見つけて休むことになった。ルーチェは夢の中で眠るときに

ふと近くにいたクロに声を掛けた。


「ねぇ、どうして顔を隠しているんですか?」

「うん?そりゃあアイツだって同じだろ」


アイツ、とはロイドの事だ。


「そうだけど、クロの事も知りたい。ロイドは何度聞いても

教えてくれなかったんです」


ロイドは席を外している。外の様子を見に行ったのだ。

クロはフードを外し、ルーチェに目を向けた。不気味な赤と紫の

オッドアイを持っていた。


「気味が悪いだろ、俺の目。これがあったから俺には友だちもいねえ。

親にすら捨てられたのさ。俺もその立場なら捨ててるだろうけどな」

「…寂しくないの?」

「寂しくないさ。結局、生きるときに信用するのは自分だ。どんなに

親に愛されていても、友達がいても独りぼっちさ」


だが寂しそうだった。何処かで彼は自分の事を思ってくれる人を

探している様だ。もしかしたら、この夢を見ている張本人も

探しているのだろうか。


「不気味じゃないよ。赤色と紫色、私は嫌いじゃないよ。クロの目は

宝石みたいだ。絶対に捨てちゃダメだよ?」

「捨てねえよ。これで生まれたからには、死ぬまで生きないとな。って、

死神が言うのも変な話だけど」


笑った後に落ち着いたクロはこの夢の保持者についてヒントをくれた。


「そいつは孤独を恐れている。誰かを助けることで恐怖心を和らげている」


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