第2話「Dream」

夢の中はずっと真夜中だ。月は何時まで経っても沈まない。

太陽は昇らない。それすらもこの夢の所有者の心情が

関係しているのだろうか。


「一人だけとは限らないさ。最初の一人の夢に後から

干渉してきた人間の夢が混ざることがある」

「闇鍋…?」


と、呟くとロイドはフッとふいた。


「そうだな。それに近い状態かもしれない」


道を調べているとよりこの世界観は分からない。季節問わず様々な

花々が咲いている。向日葵、チューリップ。木からは紅葉が散っている。

近くに何かが埋まっていた。木の根元を掘り起こすと缶の箱が

埋まっていた。少し振ってみると音がする。


「中身が入っているようだな」

「タイムカプセルですかね?」

「タイム、カプセル…?」

「はい。未来に向けて手紙を書いたり、渡したいモノを箱にいれて

地面に埋めて時が来たら開けるんです。私もつい最近、母と一緒に

埋めたモノを見つけて中を見たんだよ」


箱を開けるとポツンと置いてあったのは一枚の紙だ。

紙に描かれている絵を見てルーチェは絶句した。クレヨンで描かれた

人であろう絵の上から赤色でグチャグチャに塗りつぶしてある。


「…」


ロイドはルーチェから絵を取り上げてビリビリに破り捨てた。


「あ!ちょっと、何するの!!?」

「タイムカプセルなんだろ。ここに埋めっぱなしってことは本人に

とって必要無いと言う事だ」

「もう、説明を聞いてないですよね?もしかしたらもっと先に向けて

作ったのかもしれないじゃないですか!」

「どうだっていい。先に進むぞ」


ルーチェは不満げに頬を膨らますも、ロイドはさっさと進んでしまう。

破られた絵は力なく紅葉の根元に寝そべっている。紅葉は突然、葉を

枯らせてしまい枯れ木となった。しかしその様子をルーチェたちは

見ていない。


「ルーチェの母親はどんな人なんだ」

「優しいけど、不思議だった」

「…?だった?」


過去形の言い方にロイドは引っ掛かりを覚えた。


「少し前に死んじゃったんです。でも、埋められてたタイムカプセルは

まるで自分が死ぬのを前提のような内容で。後から聞いたら母は

やっぱり不思議な力を持ってる人だったらしいんです。予知能力が

あったって。私にもあればよかったのにな…」

「何故だ?未来は良いことばかりでは無いのに」

「だって、今あればこの夢を見ている張本人が誰なのか

すぐに分かったかもしれないじゃないですか」


ルーチェは少し先を走り出し、鏡の前に立った。鏡にはルーチェの

顔が映っている。後から来たロイドの顔も映り出した。


「母親の名前、聞いても良いか」

「良いですよ。私の母の名前はアリアって言うんです。私、小さい頃

よく母の子守唄を聞きながら寝てたんですよ」

「アリア…子守唄…か」


ロイドは鏡越しにそっくりなルーチェの目を見据える。唯一、彼女だけは

自分を人間として扱ってくれたのを覚えている。その時には既に腹が

膨れていた。彼女はそのお腹を摩りながら唄を歌っていた。


「(あの人の腹の中にいたのは、彼女だったのか…)」

「あ、見てください!この場所に似合わない扉がありますよ」


ルーチェは先に見える白い扉を指さした。確かに似合わない扉だ。

二人は扉を開き、中に入った。


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