第130話 帝都闘武祭
俺の知らぬ所で三姉妹同盟が結ばれた翌日。
俺はとある理由で魔物を狩るために帝都の近郊にある森へと向かっていた。
「やれやれ、思ったより魔物の質が悪いな」
狩りを始めてから1時間、既に100以上の魔物を討伐したが、どれも下級の魔物ばかりで俺の求めている上級の魔物は姿を見せることはなかった。
「以前騎士養成学校の授業中に現れたワイバーンでもいればと思ったが⋯⋯」
やはりあれは異常な事態だったのか。帝都の近郊にワイバーンクラスの魔物が現れるなんてい今まで聞いたことがない。淡い期待を胸にここに来てみたがどうやら空振りだったようだ。
「パパ~」
そして俺とは別の所で魔物を狩っていたセレナとミリアは、約束していた時間が経ったので待ち合わせの場所に現れた。
「こちらは下級の魔物しかいませんでした」
「そうか⋯⋯俺の方も同じだ」
「一応魔石と売れそうな素材は集めましたが、ミリアが魔法で派手に吹き飛ばしてしまったこともあって量はあまり多くありません」
「ボクは大物狙いだったから弱い魔物を一掃しただけだよ」
「それで大物を狩れていないのだから元も子もないじゃないですか」
「ボク、苦手なんだよね。チマチマしたことが」
ミリアは膨大な魔力を持っているためか、上級以上の魔法で魔物を倒す傾向がある。それ故に制限された中でのクラス対抗戦ではF組に後れを取る結果になったのだが。
「もし上級の魔石を手に入れることが目的でしたら、帝都から離れた場所でないと難しいと思います」
「そうだね。だから初代の皇帝さんもここに帝都を作ったんだと思うよ」
ミリアの言うとおりだ。この場所に建国したのは田畑を耕す土の状態、水周りが良いことそして危険な魔物が生息していなかったからだろう。
そうなるとあのワイバーンはどこから来たのか気になるが、今は他にやるべきことがあるから後で考えよう。
「帝都から少し遠出をしたらどうですか?」
セレナの言うとおり、帝都から離れた場所の方が上級の魔物を狩ることができる可能性が高いが⋯⋯。
「ドミニク皇子の動向が気になるからな」
いつまたラニやクラウくんを狙うかわからない。今日は俺達が少し帝都を離れるということもあり、念のためトアをラニの護衛に置いて来た。
「もういっそのことパパとボクの極大魔法で⋯⋯」
突然ミリアが物騒なことを言い始めてきた。
一国の皇子に向かって魔法を放つなどミリアにしか言えない発想だ。
「何を考えているのですか! そんなことをしたらミリアは捕まって極刑になってしまいます! でももしパパやミリア、トアちゃん、ラニお姉さんが傷つけられたら私も⋯⋯。それなら天駆を使って闇夜に城へ侵入し、暗闇の中誰にも気づかれぬよう一思いに首を⋯⋯」
長女としてセレナはミリアを嗜める⋯⋯と思ったが、どうやらセレナも同じ穴のムジナだった。
「いや、本当にやめてくれよ。それに物事はそう簡単に行かないからな」
「どういうことですか?」
「この間ドミニク皇子に会った時、かなり質が高い防御・回復系の魔石を幾つも装備していた。あれはちょっとやそっとの攻撃で死ぬことはないだろう」
「そうなの? 悪いことをしている自覚があるからそんなに用心深いのかなあ」
「そうだろうな」
もしドミニクと戦う時は一瞬で防御を突破し、回復する間もなく瞬殺するかもしくは⋯⋯。どちらにせよドミニクがラニやクラウくんを狙う限りいつか対峙する時が来るかもしれないな。
「パパは
「ああ、出来るだけたくさんのな」
「だったらボクに良い案があるよ」
「良い案?」
「うん。確か優勝すれば白金貨10枚だったような」
優勝すれば? ミリアが口にしているのは何かの大会のことを言っているのだろうか?
「もうそのような時期ですか。今年は私達も出場しようかと思っていましたからちょうどいいかもしれませんね」
「出場? それはいったい」
「家に戻ったらパパにも教えてあげるね」
そして俺はミリアの良い案というやつに期待して、自宅へと戻ることにする。
「ほらほらこれ見て」
自宅へ帰るとミリアとセレナは1枚の紙を俺に見せてきた。
「これは⋯⋯」
紙には闘技場が⋯⋯そしてデカデカと文字が書かれていた。
第15回帝都闘武祭と。
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