第50話 Fクラス対Sクラス(5)

 ミリアは時間がもう少ないことを考え、走ってFクラスを追い詰めていく。


「はあ⋯⋯はあ⋯⋯爆風魔法ブラスト


 草むらに隠れていたノーマンをミリアは風魔法で吹き飛ばし戦意喪失させる。


 これでミリアはFクラスの子達を6人倒した。後はメルル、ネネ、キース、ライルの4人だ。

 時間はもう少ないがミリアは残りの4人が固まるように追い詰めながらFクラスの子達を倒していた。

 ミリアをすり抜けて西側に向かおうとすると爆風魔法ブラストが飛んで来るため、メルル達は東側へと逃げることしかできない。これはもう一戦する時間は残っていそうだな。


 そして俺の予想どおり、メルル達はこの試合が開始した場所まで追い詰められ、ミリアと対峙する。


「ふう⋯⋯ふう⋯⋯もう逃げられないよ」


 ミリアは息を整えながら右手をメルル達にかざす。


 その様子はどこか焦っているように見られ、いつもの余裕の表情は影を潜めていた。時間がないということもあるがおそらく⋯⋯。


爆風魔法ブラスト


 ミリアは集束された風の塊を放つがメルル達は間一髪身を翻しかわす。


 メルルside


「驚きましたね⋯⋯ここまでの展開⋯⋯全てユクトさんの予想どおりです」


 メルルの言葉にライル達は頷く。

 ユクトさんが予期していたことは、ここに来るまでミリアちゃん以外のSクラスは全滅していること。ミリアちゃんから逃げているうちにFクラスの半分くらいはやられてしまうこと。最後に私達が東側まで追い詰められ、ミリアちゃんの息は乱れていることだった。


「だったら最後までユクトさんの予想どおりに終わらそうぜ!」


 ライルくんの声に私達は頷き、ミリアちゃんを取り囲むように移動する。


 ユクトside


 この攻防でFクラスとSクラスの決着がつく。ミリアがFクラスを倒すかそれとも倒されるかはたまた時間切れになるか、悔いのないように戦って欲しいものだ。だがミリアにとっては悔いの残る結果になるかもしれない。やはりどんな場合でも娘の敵になるということは心が痛むものだ。だがこれも必要なこと⋯⋯試合が終わった後のフォローはしっかりやらないとな。


 ライルとキースはミリアを中心に円を描くように撹乱しながら動く。


「ブ、爆風魔法ブラスト


 ミリアの集束した風の塊がライルとカーズを襲うが、2人は木を盾にしてかわす。


爆風魔法ブラスト! ブ、爆風魔法ブラスト!」


 ミリアは魔法を幾度か放つがライル達には当たらない。なぜなら2人は今攻撃することを捨て回避することだけに集中しているからだ。だがさすがはミリアというべきか威力より手数重視で爆風魔法ブラストを放つ方に切り換えるとそのうちの2つがライルとカーズを捉える。


「くそっ!」

「こ、ここまでか⋯⋯」


 しかしライルとカーズが倒れた時ネネはミリアの呼吸が乱れ隙が出来ていることを見逃さない。


沼地魔法スウォムプ


 ネネが魔法を放つと周囲が沼地に変化しミリアの足が地面に沈む。


「くっ! 氷結大地魔法フローズングランド


 ミリアは先程と同じ様に沼地を氷上に変えて地面に沈むのを避けるが、沼地の凍る部分が明らかに少なくなっている。おそらく走ったことによる疲労で上手く魔力を練ることが出来ていないからだ。


 そしてさらにメルルさんが魔法でミリアに追撃をかける。


霧魔法ミスト


 メルルさんを中心に霧が広がりミリアやネネを覆い隠す。


「ま、またこれなの!? ガ、突風魔法ガスト


 ミリアは焦りながら風魔法を唱えるが、既に人を吹き飛ばす威力はなく霧を消し去ることで精一杯だ。


 そしてメルルさんはこの時、霧魔法を唱えながらミリアに向かって走っていた。


「こ、これで!」

「えっ!」


 メルルンさんは走ってきた勢いのままミリアに体当たりをすると2人は地面に転がる。


 ミリアはメルルの行動が信じられなかった。接近戦を苦手とする魔法使いが突撃するなんて⋯⋯だが突撃する方もされる方も魔法使い。そうなればこの状況を把握している方が優位に立てる。


「メ、メルルさん!」


 ネネは声を振り絞ってメルルの名前を叫び、2人の様子を伺うと初めは心配そうな表情だったが次第に喜びの顔に変わる。

 なぜならメルルがミリアに対してマウントポジションを取っていたからだ。


「ミリアちゃん⋯⋯これで勝負ありだね」


 そしてメルルはミリアに対して⋯⋯いやSクラスに対して勝利宣言を行うのであった。


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