第45話 Fクラスへの指導

輝細氷魔法ダイヤモンドダスト


 俺はメルルさんの身体を使い魔法を唱えると空気中の水蒸気が細氷となり、辺り一面が凍っていく。


「すげえ! これって中級の魔法じゃないか!」


 ツンツン頭の男の子⋯⋯もといライルはメルルさんの魔法を見て感嘆の声を上げる。


「今のって本当に私が魔法を使ったんですか?」

「魔力操作は俺がやったけど一切俺自身の魔力は使用してないよ。だから今俺が見せた魔法のイメージ、魔力集束、発動の感覚を覚えれば同調魔法アラインメントが切れてもメルルさんだけで使えるようになるから」

「はい!」

「それじゃあ次は霧の魔法だ」


 俺はメルルさんの身体を使い霧魔法ミストを使うと半径100メートルほどの距離が一瞬で霧に包まれる。


「凄いです。私なんて今まで精々10メートルほどしか霧を発生させることが出来なかったし、こんなに濃い霧を出すことも不可能でした」

「ここまで使えるようにとは言わないけど50メートルくらい霧を発生させることが出来れば実戦で使うことができるからがんばってくれ」

「わ、わかりました」


 そして俺はメルルさんとの同調魔法アラインメントを解除し、Fクラスの子達の前に立つ。


「どうだ? これで少しはSクラスに勝機を見いだすことができたか?」


 これでダメならFクラスの子達のやる気を出させるため他の方法を試すしかないな。


「やる! 俺はやるぞ!」

「ビルドの奴の鼻を明かしてやる!」

「ユクトさん私にも指導を!」


 どうやら杞憂だったようだ。学生達はヤル気満々だな。


「それじゃあまずは明日のチーム戦について教えてくれ」

「はい!」


 そしてライルが明日のSクラスとの対戦について率先して説明をしてくれた後、俺はFクラスの子達全員に同調魔法アラインメントを行うのであった。



 ライルの説明ではどうやら明日の対戦はこの森で行われるらしい。10対10の集団戦で相手が0になったらもしくは試合開始から30分経って生き残っている人数が多い方が勝利のようだ。そしてルールは何でもありだがもちろん人を殺すのはなしだ。

 本当に何でもありなら今からこの場所に罠を仕掛けて明日の対戦に望むんだがさすがに学生の授業程度でそれはやり過ぎか?


 それにしても勝ち抜き戦じゃなくて助かった。もし勝ち抜き戦だったらFクラスが勝つことは難しかっただろう。

 だがこのルールならFクラスがSクラスに勝てる可能性がある。

 後はこちらのメンバーの選出だが⋯⋯。


「ライル⋯⋯明日のSクラスとの対戦メンバーだが俺が決めてもいいか?」


 俺はクラスの代表をしているライルに声をかける。


「もちろんだ! ユクトさんの言うことなら誰も文句はないぜ」


 やはり同調魔法アラインメントを見せた効果は大きいのか、Fクラスの子達は俺の言葉に対して従順に従う。


「わかった。では明日のチーム戦のメンバーを発表する」


 ここにいる者達が俺に注視し息を飲む。


「まずはライル」


 クラスの代表者の名前が呼ばれ、皆当然だなと頷く。


「そしてカーズ、キース、ケイン、スルド、トール、ノーマン、ヘイドリック」


 ここまで名前を呼んだ者は全て男子。全員が当てはまるものではないが性格的に男の方が戦いに向いている者が多いからだ。


「後2人はメルル⋯⋯」

「えっ?」


 名前を呼ばれた本人から驚きの声が上がる。


「それとネネ」

「「「ええっ!」」」


 そして俺が最後のメンバーの名前を呼ぶとメルルの驚きの声はクラス全体に広がった。


「いやユクトさん! 男のメンバーの選出には文句ねえけどさすがにメルルとネネはどうなんだ?」


 みんなの代表としてかライルが女の子2人をメンバーに入れたことに対して意見をしてくる。


「わ、私も結局霧の魔法範囲を広げるだけで、攻撃の魔法は使うことが出来ませんからどうかと⋯⋯」

「私も⋯⋯同じ⋯⋯です。土魔法を⋯⋯少しだけ使える⋯⋯だけで相手にダメージを⋯⋯与える攻撃は⋯⋯」


 本人達の言うとおり、2人は他の子達と比べて同調魔法アラインメントをした後でも攻撃魔法を使用することが出来なかった。だが俺はこの2人こそ明日のSクラスとの対戦で勝つための勝利の鍵だと思っている。


「みんな聞いてくれ! 明日の対戦では2人の力が絶対に必要だ」

「でもよ⋯⋯明日はチーム戦だから出来るだけ攻撃魔法を使える奴がいた方がいいんじゃねえか?」


 若いとどうしても攻撃に重視したくなるのはわかるがそれでは勝つことはできない。


「Sクラスの魔力はFクラスより強いのは明白だ。同じ土俵で戦っても勝つことはできない。ライル⋯⋯そんな時どうすればいいかわかるか?」

「う~ん⋯⋯気合いだ!」


 何か戦士系の考え方だな。一応魔法使い養成学校に通っているのだから少しは頭を使ってほしい。


「奇襲⋯⋯とか隙をつく⋯⋯とかですか」


 小さな声だがポツリとメルルが呟く。


「正解だ」

「おおっ! メルルすげえ!」


 ライルが正解したメルルを褒めるとクラスメート達もそれに続く。


 良い傾向だな。どうもメルルは日頃から自己評価が低そうだからこれで少しは自信を持ってくれればいいが。


「でもだからって何でメンバーにメルルとネネが入っているんだ?」

「それはこれから説明する。明日の戦いは――」


 俺は明日のSクラスとの対戦についてFクラスに作戦を授ける⋯⋯そして夜が明けた。


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