第41話 魔力値はやはり⋯⋯
「し、Cランク⋯⋯だと⋯⋯そのような者が1回で宝玉の魔力補充を⋯⋯」
俺の言葉にゼーリエ校長は驚きの声を上げる。
「あんたそれやめた方がいいわよ。昔の冒険者ランクの制度がおかしかったんだから。それに元Cランクの冒険者なんて言ったら舐められるわよ」
そう言ってリリーはチラリとゼーリエ校長に視線を向ける。
「あ、いや⋯⋯私は別に⋯⋯」
どうやら図星だったようでゼーリエ校長はリリーの目から顔を反らす。
「ボクはこのままで言いと思うけどな」
「えっ? 何でですか?」
「だってCランクと聞いて油断している相手に対してパパが本当の力を見せつけてバッタバッタと倒す。こんなに痛快なことはないよ」
「確かにそうですね⋯⋯まるで本に出てくる主人公のようです。ユクトさんはカッコいいからお似合いですね」
「ん? まさかメルルンはパパに惚れちゃった?」
「い、いえ! 私なんかがユクトさんを好きになるなんておこがましいです!」
出会った時から思っていたがメルルさんは自己評価が低いな。
「むしろこんな中年の俺がメルルさんを好きになることがおこがましいよ」
「そ、そんなことありません! ユクトさんは素敵な方です!」
突然メルルさんが今までにない程の大きな声を出してビックリした。
「あ、ありがとう」
社交辞令とはいえ、俺は驚いてメルルさんの言葉にそう返すことしか出来なかった。
「ま、まずいよ⋯⋯これは本当にメルルンがボクのライバルになりそう」
ミリアは何を言っているんだ? 娘の同級生を口説く親などいないだろう。
「ちょっと! 私の可愛い生徒を口説かないでよね!」
「そうだそうだ」
リリーまで俺を非難してきた。本気でメルルさんに手を出すように思われていたのか!?
「そのような話よりユクト殿⋯⋯こちらの魔道具に魔力を込めて下さらんか」
ゼーリエ校長は先程の白金の宝玉より一回り小さい透明な水晶のような物を俺に手渡して来た。
「校長先生そのような話よりってボクに取っては重大なことだよ」
「そうですよゼーリエ校長」
いやいや2人の言ってることは全く重要なことじゃないから。
「いえ、今は私のことが最優先事項です」
「最優先事項って⋯⋯あっ! それはボクが作った魔道具だね」
「ユクト殿の魔力がどのくらいの数値なのか知りたくありませんかな」
「しりた~い」
何だ? 魔力を数値化する魔道具だと? またミリアは面白いものを作ったな。
「パパ⋯⋯この水晶の魔道具⋯⋯フォースカウンターって言うの」
どうやら魔力を込めると水晶の色が変わるらしく、その色によって体内の魔力値がわかるらしい。
透明⋯⋯0
白⋯⋯100(魔法を使えない一般の人)
水色⋯⋯300(魔法養成学校D~Fクラスに相当)
青色⋯⋯500(魔法養成学校A~Cクラスに相当)
黄色⋯⋯1,000(魔法養成学校Sクラスに相当)
黄緑色⋯⋯3,000(新人宮廷魔術師に相当)
緑色⋯⋯5,000(ベテラン宮廷魔術師に相当)
紫色⋯⋯10,000(宮廷魔術師長に相当)
赤色⋯⋯50,000(人類史上最高クラスに相当)
虹色⋯⋯100,000(規格外)
「ちなみにボクとリリー理事長は赤色で虹色はまだ見たことないかなあ」
上から2番目か。2人は優秀だから当たり前といえば当たり前だな。
「さあ、ユクト殿⋯⋯やってみせてくれんか」
俺はゼーリエ校長に従って水晶に魔力を込める。
「あっ! けどパパは⋯⋯」
パリンッ
ミリアが何かを言いかけた時、水晶は突然割れてしまった。
「わ、割れたじゃと! こんなこと初めてじゃ!」
「すみません」
何だか今日は色々壊してばかりだな。
「やっぱりね⋯⋯パパ、次は少しずつ魔力を込めてみて」
俺はミリアから新たなフォースカウンターをもらうと今度はゆっくりと魔力を水晶へと伝えていく。
「緑色⋯⋯紫色⋯⋯赤色! おお⋯⋯ミリア殿とリリー理事長の領域まで⋯⋯」
水晶の色がどんどん変化していく。
そしてさらに魔力を水晶に込めていくと⋯⋯。
「に、虹色じゃ! やはりユクト殿は規格外の魔力の持ち主と言うわけか!」
パリンッ
水晶が虹色になってから数秒でまた先程と同じ様に割れてしまった。
「あんた凄いとは思ってたけどこれほどとはね」
「正直な話、結界を破ったり、白金の宝玉を1度で魔力を補充出来たりとにわかに信じられんかったがこれでハッキリした。ユクト殿はミリア殿やリリー理事長より才ある者だと」
「さっすがパパだね! まあボクはわかっていたけど」
「わ、私⋯⋯とんでもないものを見てしまいました」
何だか皆が褒めてくれるのがくすぐったい。やっぱり俺は魔力値が高かったんだな。
しかし魔法養成学校に来て数十分で色々あったがとにかく結界を元通りに出来て安堵している俺であった。
フォースカウンターで魔力値を調べた後、俺達はまた理事長室へと戻っていた。
「それじゃあ学生の2人は授業に行って」
「ええ~」
「わかりました」
リリーの言葉にミリアは不満げな声を上げ、メルルさんは従順に従う。
「私の前でそんな声を上げるなんてミリアさんは本当に良い度胸してるわね」
「そんなことないと思うよ」
ミリアは悪びれもなく答える。
「後、みんなが不安になるから結界が破られたことを言っちゃだめよ」
「ええ~! パパの勇姿をみんなに伝えたいよ~」
「ミリア、リリーの言うとおりだぞ」
魔法養成学校の結界を破ったなんて知られて余計なトラブルに巻き込まれたくないからな。
そして学生2人が授業に向かった後、俺は気になっていた銀の竜種についてゼーリエ校長に聞いてみる。
「銀の竜種⋯⋯だと⋯⋯私も詳しくは知らないが元々は神の一族だったとか」
「それは竜種が神の一族と言うことですか?」
「いや、例えばワイバーンやグリーンドラゴンなどは理性を無くした者は魔物で銀の竜種とは全く違う」
「その⋯⋯銀の竜種は人を襲うことはあるのでしょうか?」
「わからない。だが人間が悪いことをしたら神の代行者として神罰を下すことがあるかもしれん。ただ今から数千年前に銀の竜種がこの辺り一帯の国を滅ぼしたということがあったようじゃ。そしてその時にここにある結界も破られたと⋯⋯」
神の代行者だからと言ってけして人間に友好的な存在ではなさそうだ。
「だがそれは過去の話⋯⋯今は銀の竜種を見たという報告はありませんな」
俺とリリーはゼーリエ校長のその言葉を聞いて顔を見合わす。
俺達が14年前にタルホ村で見た銀の竜種は見間違いだったのだろうか。
「しかしユクト殿はなぜこのようなことに興味を――」
「実は――」
俺とリリーはゼーリエ校長に14年前の出来事を話す。
「にわかに信じられない話ですな」
「けど本当なのよ。銀の竜種が飛び立ってそして消えたの」
「ええ⋯⋯もちろんお二人が嘘を言っているとは思っていません。わかりました。私の元宮廷魔術師長のコネを使って少し調べてみます」
ゼーリエ校長は元宮廷魔術師長だったのか。
「よろしくお願いします」
こうしてタルホ村を滅ぼした銀の竜種についての探索をゼーリエ校長が引き受けてくれることになった。
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