墓守少女は驚かせたい

第7話

某所某日。不死身で墓守で探偵で白髪美少女な永墓瑠璃は、いつも通りに依頼のやって来ない探偵事務所で、ここ数日続いている猛暑にやられながらもコンビニでアイスを買ってきていた。


「外暑ーい!」


「そうね」


超能力者で異能使いで魔術師で呪術師で探偵助手で黒髪美少女な御園真由美は、暑さでうるさくなっている瑠璃を無視して最近読み進めている小説のシリーズを読み切ることを優先していた。


「はー!エアコン最高!神!涼しい!」


「そうね」


「ちょっと、真由美ちゃん反応薄いよ!アイス食べな──」


「──よこしなさい」


ブォンと一振り。アイスの入ったレジ袋を持った瑠璃の頬を掠めたのは、真由美の側に立てかけて置いてあった物干し竿。瑠璃では目視する事の出来ないスピードで、まるで一本の槍のように物干し竿を振るう真由美。その目は、どう考えても修羅だった。


「うえっ?!あっぶな!やめっ、やめろー!私の事を殺してでも奪おうとするなー!」


「早くよこしなさい」


あれはやばいと瑠璃は本能的にそう悟った。


「今渡すからやめろー!暴力はんたーい!」


瑠璃は真由美にアイス(棒タイプのバニラアイス。12本入り、当たり付き)を手渡すためにレジ袋を持っている右手を差し出すと、真由美はレジ袋を目にも止まらぬスピードで瑠璃の手から奪い去る。


「むー………真由美ちゃん、アイス好きだよねー」


「ええ、大好きよ」


「くっ、その言葉を私に言ってくれれば嬉しいのに………!!」


真由美は瑠璃の尊さで死んだ。瑠璃のそういう反応が真由美のむっつりメーターを加速させるという事を、瑠璃は自覚した方がよいだろう。………多分、真由美が何かしなければ、今後一生知らない可能性が高いが。


「そういえば。瑠璃、一つ良いニュースよ」


「え?良いニュース?消費税撤廃でもされた?」


「消費税はそのまま。でも依頼よ」


その単語を聞いた瞬間、瑠璃は跳ね上がった。文字通りジャンプした。


「依頼?!うおっしゃー!!どんな依頼?!どんな事件解決?!なんでもばっちこいだよ!!」


「猫探し」


「………へ?」


「だから、猫探し」


「………猫探し………?」


「そう」


瑠璃はちょっとだけ、その心が折れかけた。

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