第15話 北岩手と南岩手 北岩手 南岩手 北海道


「さっきは倒れないよう支えてくれてありがとうございましたぁ」


 放課後、ほわほわとした笑顔で冬岩手南が北海道に礼を言う。


「気にするな、というよりもあんな場所で倒れられたら俺も迷惑だからな」


 北海道が毅然とした態度で受け答える。

 すると、一八〇センチを誇る岩手を北海道とは別の影が覆う。


「何してるんです姉さん?」

「あっ、弟ちゃん、今北海道くんにお礼を言ってたの、入学式で助けてもらっちゃったから」

「へー」北海道をジッと見てから「……大きい」


 弟ちゃんと言われた男子の背は明らかに一九〇センチはありそうだ。

 おそらくいままでに自分よりも大きな相手を見たことが無いのだろう。

 北海道の規格外すぎる体格にたじろぎ、一歩、二歩と下がる。


「んっ、待て、お前ら姉弟なのにどうして名字が違うんだ? 確かお前自己紹介の時に北岩とか……」


 無表情のままに疑問符を浮かべる北海道、対して手南は北岩を抱き寄せて頭を撫でると表情をさらに緩ませる。


「はいぃ、わたし達は双子だったんですけど弟の手男ちゃんは生まれてすぐ親戚の養子になったんですよぉ」

「まあ、同じ岩手県内だったけど僕は北側で姉さんは南側だったから会うのも一苦労でしたね……」

「でもこれからは一緒ですよぉ」


 溜息をつく弟を、だが手南は容赦なく愛で、弟の北(きた)岩(いわ)手(て)男(お)の顔ははにかむ。


「んっ、でも確かお前背の順で俺の前じゃなかったか? なんで助けなかった?」

「あっ、それは僕も立ったまま寝てたからですよ」

(お前ら寝すぎだ)


岩手県:岩手県は北と南で県民性が異なり、北側はまじめで計画的、南側は積極的で抜け目無いと言われている。

本作では出番の都合上、方角指定が無ければ岩手は姉、冬(ふゆ)岩(いわ)手(て)南(な)を指す。

 

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