第48話Uの謎 (9)Uの未解決事件

地下迷路の奥へと進んでいく侑、分かれ道を何度か歩いているとこれまでとは違う広い空間に到着した。

「ここは一体、どんな部屋なんだろう?」

侑が部屋を見回すと、ホコリを被った棺があった。

「こんなところに棺なんて・・・、気味が悪いなあ・・・。」

侑は棺に被ったホコリを払うと、棺に何か文章が刻まれていた。

『これをあけて、なぞをかいけつしてくれ。』

これを開ける・・・?棺を開けるなんて、やっていることは墓荒らしだ。

そんなことしたら、何か呪われそうな気がして気が引ける侑だが、開けないわけにもいかないので侑は棺を開けると・・・

「ギャーッ!」

棺の中には侑の予想通り、白骨化した死体が置かれていた。そして死体と一緒に封筒が置かれていた。

侑はおそるおそる封筒を手にすると、封筒を開けて紙を開いた。そこにはこんなことが書かれていた。

『この死体は野々宮奈津子ののみやなつこ、絶世の歌手と言われ一躍時の人となるが、三月三日午前九時二十分・自宅の部屋にて首を吊っているのを、マネージャーが目撃。そし死亡が確認された。死因は自殺だということがわかったが、自殺にいたる経緯が不明。彼氏はおらず、両親とも良好でトラブルは無し。また仕事でのトラブルもなく、奈津子の人生は順風満帆と言っても過言ではなかった。それではなぜ、奈津子は自殺してしまったのか・・・』

まるで文庫本の裏表紙の紹介文のような文章が書きつづられていた。

「うーん、これだけじゃ何なのかわからないよ。とにかく、奈津子さんが自殺した理由を調べないと・・・。」

侑はまず奈津子自身の真実について考えた、両親や仕事でのトラブルが本当に無かったのか、実は周りに隠していた事実があったのではないか?

「うーん・・・、もしかして自殺じゃなくて他殺だったとか?」

侑はふと思ったが、それはあくまでも可能性のことで、それに繋がる何かが不明なことには机上の空論に過ぎない。

とにかく侑は先へと進んだ、そして別の部屋へと到着した。

「ここは何だか、女の子みたいな部屋だね。」

部屋にあったのは可愛らしい色の壁紙、小物が置かれた机、そして歌手のポスターと女子がいる部屋の感じがした。

侑はこの部屋に何か手がかりがあるに違いないと思い、部屋の物色を始めた。

「えっと・・・、ん?これは、マイクか?」

侑は机の一番下の引き出しから、マイクを見つけた。

そういえば奈津子さんは歌手だったよな、毎日この部屋で練習していたことがすぐにわかった。

侑は他に何かないか捜したが、机の引き出しの中にはマイク以外何も見つからなかった。

「次は押し入れだ!」

次に侑は押し入れの物色を始めた、すると何かが入っているクッキーの缶を見つけた。

「中にあるのはクッキーじゃない、ということはこの中に・・・」

侑はクッキーの缶を開けた、するとそこには紙の束が入っていた。

紙の束といっても二種類あり、一つは楽譜で、もう一つはノートだった。

侑はノートを開いて読むと、それは日記になっていて、二月二十四日から書き込みが始まっていた。

『二月二十四日

今日は病気のリンカのところへ行った、リンカは咳が酷くて歌えなくなっていたけど、私がリンカの分まで歌うと約束したんだ。仕事が忙しくて中々見舞いにこられなかったけど、リンカは嬉しそうな顔をしていたよ。』

奈津子の友だちであるリンカ・・・、この続きを知るために侑は次のページを見た。

『二月二十五日

今日は私の歌がレコーディングされる日、リンカちゃんに私の曲が早く届かないかな?

リンカちゃんはまだまだ体調が悪いみたいだけど、がんばっている。だから私も曲の練習をがんばらないと!』

その次のページには・・・

『二月二十六日

昨日は頑張りすぎて、喉が少し痛いなあ。まだまだレコーディングは続くから、無理はしちゃだめね。リンカちゃんもそう言いそうな気がするよ。』

侑は読んでいる内に、楽しくなってきた。次のページには・・・

『二月二十七日

レコーディングが無事に終了、帰りにケーキを買って食べよう。そういえば、リンカちゃんはチョコケーキが好きだったね。リンカちゃんの病気が治ったらまた一緒に食べようね。』

リンカの病気が治ることへの期待が高まる文章・・・、しかし次のページから内容が一変した。

『二月二十八日

信じられない・・・、リンカちゃんが天国へ行っちゃった・・・。神様、どうしてリンカちゃんを天国へ連れていったの?お願いします、またリンカちゃんを地上へ降ろしてあげてください。そして私と会わせてください。』

リンカが亡くなったことを知り、奈津子はこれまでにない悲しみに包まれた。そして日記の最後は・・・

『三月一日

ついにレコードの販売が始まったけど、その曲を聞いてほしいリンカちゃんはもういない・・・。私はこれから誰のために歌えばいいの?教えて、リンカ。リンカ、リンカ、リンカ、リンカ、リンカ、リンカ、リンカ、リンカ、リンカ、リンカ、リンカ、リンカ』

連続で殴り書きされたリンカの文字に、侑は恐怖を感じた。

「奈津子さんは、リンカさんのことがとても好きだった・・・。そのリンカさんが亡くなったのだから、それは深く悲しいことなんだなあ・・・」

侑はこの文章を書いているときの奈津子さんをイメージして、ノートをクッキーのかんに戻した。

そして奥の扉が、侑の解答を待っていたかのように開いた。







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