第46話Uの謎(7)輝く天使像

湯の山孝名が集めた宝を巡る冒険も、いよいよクライマックスへと突入した。最後のお宝は「光輝く天使の像」である。

この天使の像は岐阜県の美術館にあるのだが、この天使の像は一見するとただの石の彫刻だが、夜な夜な光輝くのだという。

その光はまるで神の後光で、その光をあびると幸せになれるということで、過去にはその光をあびるために美術館へ不法侵入した者もいるという。

「これがその天使の像・・・、とても美しくて立派だなあ・・・」

「ええ、大理石の像としては傑作ですね。」

「これがUの最後のお宝・・・、ぜひ見に行きたい。」

ということで侑は上条と一緒に、その美術館へと足を運んだ。

侑は受け付けの人に、光輝く天使の像についてそれなりに質問してみた。

「あの、この美術館に光輝く天使の像があると聞いて来たんだけど、どこにあるかご存知ですか?」

「はい、それでしたら当館の中央フロアに置いてありますよ。何しろ、当館の目玉となっている美術品ですので。」

確かにこの美術館のパンフレットの表紙になっていることからも、それがよくわかる。

侑と上条は美術館の中央エリアへと入っていくと、大きな天使の像が二人を見下ろすように立っていた。

「凄い迫力だ・・・」

「ええ、これだけのものを作った方は、さぞかし素晴らしい方なのでしょう・・・。」

「そんなことよりも、今はこの天使の像の謎を解かないと。」

侑と上条は天使の像を隅々まで探したが、謎が書かれた紙は一枚も無かった。

「どこにも無いなあ・・・」

「侑様、もしかしたらすでに処分されてしまったという可能性もあります。真に残念ですが、もう諦めた方がいいかと思います。」

「いや、もうここまで来たんだ、今更後には引けないよ!」

侑は立ち上がると、もう一度天使の像を見て回った。

すると天使の像の下のところに、文章が彫られているのが見つかった。

「あっ!?こんなとこに、文字が!」

「本当だ・・・、こんなに小さく彫られていたなんて・・・。」

そこにはこんな文章が彫られていた。

『天使の後光が背後を照らし出す時、我が屋敷への道が切り開かれる。』

これが最後の謎・・・、天使の後光ということはこの天使の像の後ろと何か関係があるということか?

「天使の像の後光・・・、きっとそれが謎を解く手がかりだよ!」

「ですが、後光が見られるのは夜中です。この時間に、美術館に入るのは無理です。」

「そっか・・・、何か解ると思ったんだけどなあ・・・」

侑は気を落としながら、天使の像を後にした。

そして帰りにお土産を買おうとした時、この天使の像と一緒に灯台の写真がポストカードとして売られているのを見つけた。

侑はこんな山奥に灯台があるのが、とても不思議に思った。

「灯台か・・・、どうしてこんな山の中に灯台があるんだろう?」

「ああ、この灯台はこの美術館の丁度後ろにあるんですよ。そしてこの灯台が、天使の像の後光なのだそうです。」

「えっ・・・上条さん、それどういうこと?」

ポカンと口を開ける侑に、上条は言った。

「なんでもこの美術館の創設者がこの天使の像を美術館の名物にするために、この美術館の後ろに灯台を建てて、その光で天使の像を照らし出そうとしたのです。」

「えっ・・・?それじゃあ、この後光というのは灯台の光ということ?」

「はい、しかし灯台は残念ながら閉鎖されてしまっているようで、今は後光はもう見られないようです。」

侑は上条の説明に頷いている時、ハッと閃いた!

「もしかして、灯台に何かあるかもしれない!」

侑はそう言うと走って灯台へと向かった、上条が慌てて後を追いかける。

侑が灯台のところに来ると、立ち入り禁止の柵が阻んだ。しかし侑はそれを飛び越えて、柵の中へと入っていく。

「侑様、危険です!」

「ごめんなさい、だけどぼくはUの謎を解き明かしたいんだ!」

侑は上条の静止を振り切って、寂れた灯台の中へと入った。

「この中に謎の答えがあるはずだ・・・。」

まずは一階をくまなく探したが、見つからない。

次に侑は灯台の屋上へと向かった、ギシギシときしむ階段を慎重に登っていく。

屋上にたどり着くと、侑は中に置いてあった木箱を見つけた。

侑は箱を開けようとしたが、鍵がかかっていて開かない。

「鍵はどこだ・・・?」

侑は屋上をくまなく探す。

「侑様、もう帰りましょう!」

一階から上条の声が聞こえた、しかし侑はそれでも探す。

そして侑は灯台の電灯管理室へと入った、三畳半くらいの狭い部屋に机があり、侑が引き出しを開けると、鍵が見つかった。

「あった・・・、これだ!」

「侑様、もう帰りましょう。」

いつの間に屋上に来ていた上条に呼び止められたが、侑は最後にあの木箱を開けてみたかった。

「この木箱の中に、何かがあるはずなんだ。」

侑は木箱の鍵穴に鍵を差し込む、そして木箱が開いた。

侑と上条が中を覗き込むと、そこには一枚の紙と宝石箱が置かれていた。

そして紙にはこんな文章が書かれていた。

『この宝石をある順番に並べて、地下迷路の鍵を開けよ。さすれば、我が最高の謎が解けるだろう』

ついに侑はUの謎へと迫る・・・。












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