第45話Uの謎(6)金運の招き狸
湯の山孝名が生前に残した宝を巡る冒険を続ける侑、五つ目は「金運の招き狸」というお宝だ。
これは大判を持っている木彫りの狸の置物、見た目だけでもありがたそうだが、ありがたいのは見た目だけではない。
この「金運の招き狸」を置くだけで、金運が圧倒的に上がるという効果があるという。
「でも、こんなに都合がいい話なんて、絶対にあり得ないでしょ?」
侑も最初はそう思っていたが、Twitterにて投稿するとどうも本当の話のようだ。
それによると、あるラーメン屋がこの金運の招き狸を店先に置いたところ、お店はかつてないほどの大繁盛で、短期間で二号店を出すほどの大きなお店になったという。
「じゃあ、そのラーメン屋にいけば金運の招き狸が見られるんだね。」
侑はそのラーメン屋を教えてくれないかとTwitterにて投稿した。ところが帰ってきた返事には、「そのラーメン屋、とっくの昔に潰れました。」というものだった。
侑は落ち込んだと同時にこう思った。
「ん?金運の招き狸を持っていたんだよね?どうして潰れちゃったのかな?」
侑は疑問を持ったが、とりあえず今は現在の所有者を探し出さなければならない。
「どうしよう・・・?」
侑はもう一度Twitterに投稿してみたが、誰からもいい知らせが来ることはなかった。
どうやって探し出したらいいのか、侑は手詰まりになった。
金運の招き狸の詳しい詳細が掴めずに困っていた時だった・・・、ある日の通学路にて侑は通学路で究極の発見をした。
「あっ!?あれは!?」
そこは駅から歩いて三分とかからずの場所にあった、小さな居酒屋さん。そこの店先に金運の招き狸は置かれていた。
「ほ・・・、本物なのか?」
侑は金運の招き狸をじっくりと観察した、そして紛れもなく本物だと確信した。
「これが金運の招き狸・・・、確かに本物だ。」
侑は見とれていたが、登校の途中だったのですぐにその場を後にした。
そして帰宅の途中で、侑は再びあの居酒屋の前を通った。
「このどこかに、謎の紙はないかな?」
侑は裏を見たり、持ち上げて下を見たりと探したが、紙は見つからない。
「おい、お前何してるだ?」
突然、背後から声をかけられたで塗り替えると、居酒屋の店主らしき男がいた。
「ああ、すいません!この狸がなんとも言えないくらいに立派なものですから、つい見とれてしまいました。」
侑が言うと男は機嫌が良くなり、ガハハと笑いだした。
「おお、お前もこの狸の良さが解るか。それにしても、君は若いなあ・・・。」
「ええ、十六歳です。」
「ほぇ〜、それは大したことだ。ところでこの後時間があれば、ちょっとだけ話し相手になってくれないか?」
「ん?ええ、いいですよ。」
男に勧められて侑は店の中へと入って行き、カウンター席に腰かけた。店の中は古い内装で、綺麗に保たれているがボロが所々に出ていた。
「さあ、ゆっくりと座っていきな。君は未成年だから、お茶かコーラどっちがいい?」
「じゃあ、コーラで。あの、いくらですか?」
「いいや、金はいらねえよ。来週で閉める店だからよ。」
「えっ!?閉めちゃうんですか?」
「ああ、もう続けられなくてよ・・・。あの招き狸を店先に置いてからや。」
男は侑にコーラを渡した、侑は一口飲むと男に質問した。
「あの招き狸は幸福を招くのに、どうして店を閉めることになったの?」
「まあ、あの招き狸は今から三年前に骨董品屋で購入したんだ。わしは元々狸の置物が欲しくてな、結構安い値段で売られていたし、店主からも幸福を招くと強く勧められて買ったんだ。もちろん、最初は大繁盛したんだけどね・・・。それから悪いことが続いちまったんだ・・・。」
男は日本酒を一升瓶でらっぱ飲みしながら言った。
「バイトに店の金をくすねられる、おれがぎっくり腰で倒れる、挙げ句の果てには客が食中毒になって倒れてしまう。もう・・・、本当におれはついてねえよ。」
「本当に大変でしたね・・・。あの、この金運の招き狸を買った時、何か紙みたいなものはありませんでしたか?」
「紙・・・、そういえばこんなのがあったな。」
男は一旦奥の方へ行くと、再び戻ってきて一枚の紙を侑に渡した。
「金運の招き狸を買った時に、一緒についていた紙だ。捨てようと思ったが、あの時はご利益があるかもしれないと思ってとっておいたんだ。まあ、書いてあることは訳わかんねえがな。」
侑が紙を見ると、そこにはこう書かれていた。
「ポンポン・ポポン・宝を招く不思議な狸・だけど三年たてばみんなからっぽ・ポンポン・ポポン」
これは何のことだろうか・・・?
侑は紙を持ったまま、考え込んだ。
「宝を招く不思議な狸、だけど三年たてばみんなからっぽ・・・。」
侑はこの言葉と、男の過去の話を、頭の中で結びつけた。
「あっ!?わかったぞ!」
「どうしたんだ?何かわかったのか?」
「この金運の招き狸は、最初はご利益があるけど、三年経つと全てを失ってしまうというものなんだ!」
「何だって!?」
男は最初の内は困惑したが、自分の過去と結びつけると色々思うところが見つかった。
「そうか・・・、この紙にはこの招き狸の本当の効果が書かれていたんだな・・・。」
男はまた店の奥へとむかうと、トンカチを持って戻ってきた。
「おじさん、この招き狸をどうするんですか?」
「決まっているだろ、壊すんだよ!こんなご利益のないやつは・・・」
「待ってください!ぼくが引き取りますから、壊さないでください!」
「何、この狸を引き取ってくれるのか?」
「うん、壊すのもったいないし・・・。」
「そうか、それなら好きに持っていっていいぞ。」
男はあっさりと言った。
その日の帰り、侑は上条に頼んで自分と金運の招き狸を迎えに来てもらったのは、当然のことである。
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