第42話Uの謎(3)死を告げる菊の花
湯の山孝名が生前に集めていたお宝を巡る冒険を始めた侑。
屋敷にあった花瓶の謎は解けたのだが、調べてみたところこれ以外にも謎の宝は六つあることがわかった。
次に向かったのは新潟県にある井上さんの家にある、「予兆の白菊」という絵画である。
「この絵画は昭和十三年に書かれた作品で、一輪の白菊が朝日が昇るのを予兆しているかのようなタッチと色使いが素晴らしいと評価されている作品なんだ。」
「これもUの謎があると言われている作品・・・。」
侑はゴールデンウイークを利用して、新潟県へ上条と一緒にやってきた。
中部国際空港の国内線で一時間、空港からバスに乗って井上さんの家へと到着した。
「すいません、井上さんのお宅ですか?」
侑がインターホンを押すと、四十代の男が玄関に出た。
「はい、あなたたちはどちらさんでございますか?」
「ぼくは道明寺侑といいます、こちらは上条さんです。ぼくたちはお宅にある『予兆の白菊』という絵を見に来たのですが、見せてもらうことはできますか?」
すると井上は面倒な表情で答えた。
「ああ、あんたらもあの呪われた絵を見に来たんか。残念だけど、もうあの絵は美術館に寄贈してしまったよ。どうしても見たいというなら、その美術館の場所を教えるからそこへ行ってくれ。」
井上は美術館への地図とその美術館のパンフレットを渡すと、バタンとドアを閉めてしまった。
「どうします?その美術館へ行ってみますか?」
「うん、行ってみるよ。」
侑と上条は地図を頼りにバスに乗ってその美術館へと足を運んだ。
「ここか、問題の絵がある美術館は・・・」
「絵はどこにあるんだろう?」
侑と上条は美術館の中へと入っていった。
美術館の中には色んな作品があったが、侑と上条はそれらには目もくれずに真っ直ぐ絵画の展示エリアへと向かった。
「あっ、あの絵だ。」
そして目的の絵・予兆の白菊を見つけた。
「これが予兆の白菊・・・、確かに綺麗だね。」
「でも、この絵のどこに謎があるのでしょうか・・・?」
「学芸員の人に聞いてみよう、何わかるかもしれない。」
こうして侑と上条は、近くを通りかかった学芸員の
「あの、この予兆の白菊という絵なんですけど・・・、何か謎みたいなものってありますか?」
「謎・・・?」
有芽は何を言っているんだと、怪訝な顔になった。
「どんな小さなことでもいいんです、なにかいわくの話とかあったら教えてください。」
「うーん・・・、じゃあちょっと見てほしいものがあるんだけどいいかな?」
「はい、お願いします。」
侑と上条は有芽に案内されて、美術館の会議室の中へと案内された。
二人がそこで待っていると、有芽が一枚の紙を持ってきた。
「これは予兆の白菊を飾ろうとしたときに、絵の裏面に張られていたんだ。何が書いてあるのか、正直よくわからないけどね。」
そこにはこんな文章があった。
「この菊はナイフで刺されるように変化する時、それは災いを告げる証である。」
殺人事件のように変化する・・・ってなんだろう?
「この絵の菊がナイフで刺されるように変化するか・・・、一体どうなるというんだ?」
「ナイフで刺される・・・、人が死ぬ、痛い・・・、血が出る・・・あっ!?」
侑は突然ひらめいた。
「一体どうされました、侑様?」
「ナイフで刺されると血が出る、ということはつまりこの菊の花が赤くなるということだよ!」
「え?この絵の菊が赤くなる・・・?」
上条はこの絵の白菊が赤くなるのが信じられなかった。
「赤くなる・・・、そういえばこの絵を寄贈した方からこんな話を聞いたことがあります。」
有芽は二人に語りだした。
「その人には母親がいたんだけど、この白菊の絵がとても気に入っていたんだ。だけどこの白菊が、ある日から少しずつ赤く変色していっていることに気づいたんだ。そしてその人の母親は、徐々に体が弱っていき、そして病気になった。さらにその白菊が完全に赤く染まった頃に、母親は他界してしまったんだ・・・。」
井上さんにそんなことがあったなんて、侑は気の毒に思った。
「それで私はこの絵について自分でも調べてみたんだ、そうしたらこの絵が湯の山孝名のお宝の一つだということがわかったんだ。湯の山孝名の文献によると、この絵の作者は元々赤い菊の絵を書く予定だったんだ。だけど作者は書き上げる途中で、不運にも殺されてしまったんだ。それからこの白菊の絵は誰かの死を、赤く染まることで予知するようになったと言われているんだ。」
きっと殺された作者の無念がこの絵に宿り、誰かの死を白菊を赤く染めることで、死の予兆を伝えるようになったんだと侑は思った。
「それではこれで失礼します、貴重なお話をありがとうございました。」
侑と上条は有芽にお礼を言うと、美術館を後にするのだった・・・。
一方、こちらは地下迷路のU。
「予兆の白菊もわかってしまったか・・・、あの絵画はこの私の死をも予兆した素晴らしく恐ろしい絵なのだが・・・。これはもしかしたら、本当に侑が全ての謎を解いてしまう日も近いのかもしれん。」
Uは侑に宝の謎を解かれることに、ちょっとはがゆさを感じながらも、侑のこれからに期待を寄せるのだった。
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