Uへの探求

第40話Uの謎(1) 湯の山孝名

この屋敷に来てからついに八年の長い月日が過ぎていき、侑も高校生になった。

両親は血が繋がっていなくても、侑の高校入学を祝福してくれた。

「ついに侑も高校生か・・・」

「ええ、この屋敷に来たときはあんなに小さかったのに、今思うと感慨深いわね。」

「はい、色々ありましたがついにここまで来ることができました。」

「もう、恥ずかしいよ・・・」

侑も背が伸びて、すっかり好青年になっている。

高校の入学式から侑は、大きく変わったことがある。それは女子にモテるようになったということだ。

以前は教室の隅に一人ぼっちの存在だったのが、背が伸びて大人しい印象が逆に好感につながったのか、突然のモテ期が来た。

「こんなに女子がたくさん来て・・・、困っちゃうな・・・」

これでは前の方がよかったと侑は思った。

そんなある日のこと、侑のところに珍しく男子がやってきた。

「よぉ、君が侑くんだね。」

「うん、君はだれだい?」

「おれは真壁鏡太まかべきょうた。君の家ってさ、地下迷路があるんだろ?」

突然地下迷路のことを訊ねられて、侑はドキッとした。

「・・・何かの間違いじゃない?」

侑はとっさに嘘をついた、もう地下迷路のトラブルはごめんだ。

「いいや、確かに君の家には地下迷路がある。確かな情報だってあるんだ、なあ詳しく教えてよ!」

真壁は目を輝かせながら迫ってくる、侑は持っていた本でガードした。

「だから、なんのことだか知らないなあ〜」

「もしかして・・・、君は本当に地下迷路について知らないのか?」

「うん、そうだよ。」

「なーんだ、そうか。わかったよ・・・」

真壁は興味を無くしたような態度で去って行った。

「何だったんだろう・・・?とにかく、変な人だったなあ。」

しかしこの時、これがUの謎へと誘う出来事の序章になろうとは、誰も予想できなかった・・。







それから三日後の夕食中に、侑の屋敷に一本の電話がかかってきた。

茂雄がでて何か話すと、すぐに慌てた様子になった。

「侑!真壁鏡太って知っているか?」

「えっ・・・うん、知っているよ。同じクラスの男子だよ。彼が一体どうしたの?」

「それがどうも家に帰って来ていないようなんだ、それでこの屋敷に向かっていることがわかって、ここへ来ていないかという電話だったんだよ。」

まさか真壁は一人でこの屋敷に来たというのか・・・?

だとしたら上条さんか執事の誰かが見ているはずだ。

「ねえ、今日誰か訪ねてこなかった?高校生とか」

「ああ来ましたよ、高校生の男の子。なんか家の地下迷路に入らせてくれないかって、変なこと言っていたよ。それでしつこかったから、警察を呼ぶぞっと言ったらすぐに帰ったけどね。」

「その高校生の名前は?」

茂雄が上条に尋ねた。

「いや、そういえば聞いていませんでした。あまりに興奮した様子で、こちらの質問にも答えなかったから、異様な感じがしてすぐに追い返しましたよ。」

「そっか、大変だったね・・・」

でもあの時侑に向けてきた彼の熱意を考えると、簡単に諦めるとは考えられない。もしかしたら追い返された後、どこからか侵入したかもしれない。

侑は不安になった、真壁が地下迷路に迷い混むことにならなければいいが・・・。







しかしその日の夜中、侑から手紙が届いた。

『興味深い奴が来た』

地下迷路への鍵と一緒にこんな文章の書かれた紙が入っていた。

侑が地下迷路へと進んで行き、Uの待つ部屋へ入ると、そこにいたのはUと真壁の姿があったのだ。真壁は泥だらけで、ぐったりしている。

「真壁くん!?どうして君が地下迷路に?」

『知り合いなのか?』

「いや、同じクラスの顔見知りだよ。それにしても、Uが彼をここへ連れてきたの?」

『そうじゃない、こいつはどうも古井戸のルートからここへやってきたようだ。』

侑は思い出した、庭の東側に地下迷路へと続く古井戸があることに。

『それでな、彼のポケットからこれが見つかったんだよ。』

Uが見せたのは折り畳まれたコピー紙だ、開いてみるとこんな新聞記事が印刷されていた。

『幻の名探偵・湯の山孝名のお宝の手がかりの記録。その一部を発見!』

これは今から二年前の新聞記事で、発見されたのは真壁家の蔵の掛け軸である。

「これって・・・もしかしてUのこと?」

『ああ、私はこの掛け軸の他にも日本全国の色んなところに謎を仕込んだ宝を、各地の名家にばらまいておいたんだ。そして宝の謎を全て解き明かした時、私の本当の正体が明かされるだろう・・・』

侑はこの新聞記事に興味を惹かれていった、そして侑の心に火が付く感覚を、侑は感じた。

「U・・・、ぼくは君に挑戦するよ!」

『ほう、私に挑むというのか・・?』

「うん、君のことよく知らなかったし、謎に挑めば更に探偵として成長できる気がするんだ。」

『やる気充分だな、いいだろう。頭の叡知を全て使って、この私に挑むがいい!』

侑はUに向けて決意の眼差しを向けた。

そして侑は真壁を連れて、地下迷路を脱出したのだった。







それから真壁は勝手に屋敷に侵入したことを謝罪し、迎えに来た母親に連れられて帰宅した。

しかし真壁が持ってきた謎の欠片により、侑は謎を解き明かす旅を始める。果たして、結末やいかに・・・?








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