第37話銀色なあの子の行方
夏休みが終わり、いよいよ受験もまっただ中を迎えるころ、侑のクラスに転校生がやってきた。
「えっー、この時期に転校は珍しいことだが、どうかみんなで短い間仲良くしてほしい。ではどうぞ」
担任の
「今日からこのクラスに来た、
「柏原です、みなさんよろしくお願いします。」
柏原は礼儀正しくお辞儀をした、真顔でクールな印象が強い。
柏原の第一印象は、銀色の髪とクールさが合わさり、クールビューティーだと男子たちの間では好印象だ。
でもおとなしい侑には話しかけづらい相手だ、「何か?」と冷たく言われそうで気持ちが萎縮してしまう。
そして柏原の席は、なんと侑の隣になった。
「初めまして、道明寺侑です・・・」
「・・・よろしく」
柏原は笑わずに言った。
侑は普通に挨拶をしただけなのに、何がいけなかったのかを考えた。
しかし、日が過ぎるごとに「あれが彼女の性格なのだ」ということを理解した。
その日の夜、侑は夜ご飯を食べている時に柏原のことを両親に話した。すると重雄が言った。
「ああ、柏原なら聞いたことがあるぞ。確かに大手派遣会社の社長をしている、
「うん、同じクラスだよ。それにしても中三で転校なんて、複雑だよね・・・」
「まあ、これまで何度も転校しているというからな。友だちも作りにくいのだろう。」
そうか、もしかしたらそういう経験を重ねていくうちに、人付き合いに意味を見いだせなくなってしまっているかもしれない・・。
侑は柏原の冷めた返事の理由がわかった気がした。
それから柏原は学校に毎日通っていたが、十二月の始めのある日から、柏原は学校に来なくなった。
「なあ、柏原さん病気かな?」
「おれ、今日柏原さんに告白するつもりだったのに・・・」
心配にざわめく男子たちに、風谷は言った。
「えーっ、柏原さんは病気で入院することになった。しばらく会えなくなるが、必ず治して戻ってくると信じて待とうな。」
侑も隣の席だけに、柏原のことが心配だった。
その日の夜に侑は、茂雄に柏原のことを話した。
「柏原さん、病気だって聞いたのか?」
重雄が驚いた顔で言った。
「どうしたの、父さん?」
「いや、実は今日の仕事で柏原と会って来たんだが、その時に娘さんに会ったんだよ。」
「えっ!?本当?」
「ああ、普通に礼儀正しく振る舞いもできていたし、これといって病気という感じはなかった。」
それじゃあ、柏原さんは学校に仮病で休むと言ったということになる。
一体どうして・・・?
そして翌日も、柏原は学校にいない。
クラスの生徒たちは病気だと信じているが、侑は重雄からの証言を信じているので、違和感が拭えない。
侑は柏原さんの謎を突き止めることにした。
そのためにはまず、柏原さんの家について突き止めなければならない。しかしまだ転校してから一ヶ月半しか経っていないため、柏原と深い仲になっている生徒はほとんどいなかった。
そこで今度は重雄に相談することにした。
「柏原さんに会いたい?でも侑には学校があるじゃないか」
あっさりと断られてしまった。
「うーん、どうしたら柏原さんに近づくことができるんだろう・・・?」
侑はアイデアを出そうとしたが、結局思い浮かばなかった。
その日の夜、侑はUからの手紙を拾った。
「やっぱり、彼には筒抜けだなあ・・」
そう思いながら、侑は地下迷路の中へと入っていき、そしてUのところへとたどり着いた。
『来たな、最近何か面白いことを考えているようだが・・・?』
「うん、実は」
侑はUに柏原さんのことを話した。
『ふむふむ、なぜ柏原が仮病を使って休んでいるのかということだな。そんなこと、気にとめなくてもいいと思うが・・・』
「でも、やっぱり心配だよ。彼女には何かあるんじゃないかって、ぼくが気になってしょうがないんだ。」
『ふーん、お人好しというか恋い焦がれているというか・・・。侑よ、もし彼女のことを知りたいのなら、正攻法だけではできないぞ。時には非合法なやり方もしないとな。』
「非合法って・・・、何をするの?」
『例えば、柏原の持ち物から情報を・・』
「それはダメーっ!もっと他に無いの?」
『金銭の支払いを条件に聞き出すとか?』
「・・・いくら払えばいいの?」
『最低でも一万円はいるな。』
「そんな大金、持ってないよ!!」
『あのな、情報は目に見えないけどタダじゃないんだよ!!私だって情報を手に入れたい時は、そういうツテを持ってもらっていたんだ。侑の身近には、そういう人はいないのか?』
「うーん・・・・、あっ!?」
侑は心当たりを思い出した、隣のクラスの
彼女はぽっちゃりとしているが、明るい性格がキャラ受けしていて、そのおかげか女子の知り合いが多い。間所なら柏原のことを知っているかもしれない。
「ありがとう、U!明日、学校で聞いてみるよ。」
『そうか、くれぐれも気をつけるんだぞ!」
「わかってるって!」
駆け足で地下迷路を後にする侑を、期待の目で見つめるUであった。
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