第34話取り壊されない団地事件

侑もすっかり成長して、高校生になった。

花の十代もそろそろ終盤、侑には彼女がいるのかというと、まだできていない。

侑は侑で相変わらずの、高校生活を送っていた。

「なんか・・・、変わったこと起きないかな・・・」

侑は退屈そうにあくびをした。

そんな時、安久津迫田あくつさこたが声をかけてきた。安久津は侑とは違う中学校出身だが、侑が高校で初めてできた友だちである。

「なあ、今度の土曜日にちょっとした肝だめしをしないか?」

「肝だめしって、どういうこと?」

「ほら、ここから近いとこに古い団地があるだろ?あそこでやるんだよ。」

そこは高校と駅との道の近くにある四階建ての三棟の団地だ。五年前まで人が住んでいたが、近くに新しい団地が建つことになり、住人全員がその団地へと引っ越してしまった。それからこの団地にはだれも住んでいないのだが、未だに取り壊す工事の目処が立たずにそのままになっているのだ。

「えーっ、危ないよ」

「大丈夫だよ、あそこは普段から人が立ち寄らないところだし、それにおれと侑以外にも誘っておいたから、大丈夫だ。」

安久津はすっかりノリノリになっているが、侑は気が進まなかった。

侑は地下迷路にはすっかり慣れたが、それ以外の怖い場所にはまだ慣れていない。

「あんな怖いこと、よく楽しめるよ・・」

侑は安久津に向かって言った。

そして下校の時、侑は廃墟となった団地を見つめた。しかし廃墟になっているにもかかわらず、規制テープが貼られていない。

白いコンクリートが、廃墟になった団地の静けさを誇張している。

「やっぱり、嫌な感じがするなあ・・。」

侑はあの時、嘘をついてでも断れば良かったと今になって思った。






そして土曜日がやってきた、集合時刻は午後五時。

侑が集合場所に来ると、安久津以外の四人が来ていた。

「よお、侑。安久津は一緒じゃないのか?」

波多野寛大はたのかんたが侑に言った。

「ううん、一人できたよ。」

「なんだよ、あいつから声をかけてきたのに遅刻なんて・・・」

「まあまあ、安久津が遅れてくるのはいつものことだろ?」

矢倉広治やぐらこうじが言った。

安久津・波多野・矢倉の三人は同じ中学からの友だちで、校内やプライベートでも三人は一緒にいることが多い。

「なあ、安久津のことはほっといて、おれたちだけで団地へ行こうぜ。」

イライラしながら言ったのは、佐原面組さはらもくみ。オカルトや怪談話が好きで、この団地の噂も知っている。

「おーい、遅れてワリィ!」

安久津が駆け足でみんなのところにやってきた。

「遅いぞ、安久津。」

「もう時間もないですし、早く始めましょう。」

「そうだな、それじゃあみんなで団地の奥へ!」

安久津を先頭に六人が団地の中へと足を踏み入れた。

団地の中はとにかく暗く、歩く度にホコリが舞い、クモの巣が所々に張り巡らされていた。

安久津が家から持ってきた懐中電灯のスイッチを入れた、しかし団地の奥がよく見えない。

「雰囲気でているよな・・・、ここって隠れたスポットかもしれないぜ。」

「安久津くん、怖くないの?こんなところに来たのに・・・?」

侑にとってそれがずっと疑問だった。

「大丈夫、おれは怖いとか全然思ってないから。」

安久津の肝の座ったところが、侑には羨ましく思えてきた。

「なあ、部屋の中へ入ろうぜ。」

安久津が「104」と表札の出ていた部屋を指差して言った。

「ウソだろ、あんなところに入りたくねえよ!」

佐原が言うと、安久津以外の全員が入りたくないと言い出した。

「どうしてさ?スリルがあっていいじゃん」

「でも危ないよ、もし床が古くなって崩れたりしたらケガするよ。」

「大丈夫、大丈夫!!それじゃあ、レッツゴー!」

安久津は部屋のドアを開けようとしたが、カギがかかっていてドアが開かない。

「あれ?開かない・・・。うーん、やっぱりこういうとこには、カギがかかっているね。」

「つまんねぇーな、それじゃあ二階に行ってみよう!!」

六人は団地の入り口付近へと戻ると、今度は階段を上って二階へと向かった。

そして二階へつくと、二階も一階同様に不気味な雰囲気になっていた。

「おい、あれ見ろ」

安久津が懐中電灯の光を向けた先を見ると、閉まっているドアの中で、そのドアだけが開いていた。

「あの中へ入ろうぜ。」

「えっ、行くの?」

「あれ、みんな入らないの?意気地無しだなあ、それじゃあおれだけで行ってくるよ。」

侑は悔しくなってきた。

安久津が一人で入ろうとした時、侑が挙手をした。

「ぼくも行くよ。」

「おっ、ありがとな侑。一人だと心細かったんだ」

「侑、本気なの?」

「うん、ぼくだってやる時はやるんだ。」

そして安久津と侑は部屋の中へ入っていった。

「なんか臭うな・・・」

安久津が言った。

侑もそう感じたが、床にはゴミが散らかっていない。

そして臭いが一番強い和室のふすまを開けた。すると・・・。

「うわぁーーっ!」

侑と安久津は同時に叫んだ。

そこにあったのは、布団の上に放置された人の白骨だった・・・。

二人は大慌てで部屋から出た。

「どうしたの二人とも!」

「が・・・が・・・、がいこつが!」

「人の骨があった!!」

話を聞いた四人にも恐怖が来た、そして六人は大慌てで団地から脱出したのだった。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る