侑とUの事件簿
第19話執事殺害事件
中学二年になって二ヶ月が経とうとしていたころ、侑が勉強しているところに上条が入ってきた。
「侑様、勉強中のところすみません。重要な話がありますので、書斎に来て下さい。」
「わかった、今いく。」
侑は上条と一緒に書斎へと向かった。
書斎に入ると、重雄と新井田がいた。
「侑、話というのは新井田が今月末で執事を辞めるということだ。」
「えっ!?やめちゃうの」
侑は驚いた
「はい、このところ腰の持病が悪化しましてね、働き続けるのが難しくなりました。大変申し訳ないのですが、引退させてもらいます。」
新井田は申し訳なさそうに頭を下げた。
「いいよ、新井田さんはがんばってくれたんだから、これからはゆっくり休んでよ。」
「ありがとうございます・・・」
「新井田の後は、上条が執事の職を引き継ぐことになった。侑、これからは上条の言うことも聴くんだぞ。」
「わかりました。」
そして数日後、新井田は屋敷に姿を見せることは無かった。
上条が執事になって一ヶ月が過ぎた、暑い日が続く毎日の中で、侑はエアコンの効いた快適な部屋で本を読んでいた。
「侑、話がある。来てくれ」
突然部屋のドアが開いて、重雄が侑に言った。
侑は内心「急に開けないでよ」と思いながらも、重雄に従った。
そして応接室につくと、上条と見慣れない男がいた。
白髪混じりの頭に口ひげも白くて長い、教科書に載っている伊藤博文みたいな男だ。
「侑、この人が
「田辺です、ふつつか者ですがこれから、よろしくお願いします。」
田辺は侑に頭を下げた。
侑は田辺にどこか影を感じた、しかし侑は誰にも言わず黙っていた。
田辺が屋敷に来て一週間が過ぎた。侑が部屋で勉強をしている。
「侑様、ソーダとクッキーを持ってきました。休憩なさいますか?」
田辺がドアをノックしながら言った。
「うん、持ってきていいよ。」
田辺はドアを開けて、紅茶とソーダを侑の机に置いて、部屋を出た。
侑が休憩してのんびりしていると、「ギャー」という悲鳴が聞こえてきた。
「何!?どうしたの?」
侑は慌てて部屋を出て、キョロキョロした。
そして屋敷の中を走り回ると、百合絵と上条が物置部屋の前にいた。
「母さん、上条さん、どうしたの!?」
「侑、来ちゃダメ!!あなたが見るべきものじゃないわ!!」
「どういうこと?」
侑が百合絵を追及しようとすると、上条が侑を連れてその場から離れた。
そして上条は侑に事情を説明した。
「実は・・・、蓮実が物置部屋にて死体となっていたのです。百合絵様が警察を呼んでいますので、侑様は部屋で過ごしてくださいませ。」
侑は驚き、顔はそのまま固まった表情になった。
侑は自分の部屋へと戻ったが、侑はどうして蓮実が殺されたのか気が気でならなかった。
それから警察が来て、現場検証が始まった。
蓮実の死因は撲殺、頭頂部にハンマーのようなもので叩かれた痕跡が見つかった。
しかし現場から凶器は見つからなかった、犯人は犯行時刻に屋敷にいた人物、百合絵・上条・田辺・侑のいずれかとなった。
侑はアリバイが証明され犯人候補から外されたが、後の三人はまだまだ捜査中である。
侑はこの事件のことが気がかりで、たまらなかった。
「犯人は誰なんだろう・・・?」
そんなことを考えていたある日の深夜、侑がうっすら目を開けて布団を見ると、あの封筒があった。
「これは・・・、Uが呼んでいる。」
侑は目を大きく開けて、地下迷路へと続く扉へと向かった。
扉を開けて暗い迷路を進む、そして迷路の奥にあるUの部屋に到着した。
『やあ、侑。屋敷の方では、何やら大変なことになっているそうだな。』
「うん、蓮実さんが殺されたんだ。それで犯人は誰だか、今捜査をしているところだよ。」
『侑、何をしているんだ?お前も事件を捜査しないとダメじゃないか。』
Uの言うことに、侑の頭が一瞬止まった。
「え?・・・どういうこと?」
『これは侑が探偵になるチャンスなんだよ、実際の事件を解決してこそ探偵の真価があるんだ。』
Uは力強く言った。
「ぼくがこの事件を・・・?そんなの無理だよ!」
『いや、やるんだ侑!そして探偵の新たな道へと進んでいくんだ。そしてこの渡の望みが叶うというものだ!』
Uに強く言われてしまい、侑は断れなくなってしまった。
こうなったら、不安が多いがやるしかない。
「わかったよ、でも誰が蓮実さんを殺したのかわからないよ。」
「まずは蓮実さんが殺された現場を確認しないとな。そこは見てきたのか?」
「ううん、見てはいないけど場所はわかる。この屋敷の物置部屋だよ、それで蓮実さんは誰かに頭を殴られて死んだみたい。それで警察はこの家にいた人たちを、犯人として疑っているみたい。」
『なるほど・・・、それでは四人のアリバイは?』
「ぼくは勉強してたし、母さんは買い物。上条さんと田辺さんが、屋敷にいた。」
『ふむふむ、それではまず蓮実の身辺調査を始めよう。そこに、犯人の動機に繋がる何かがあるはずだ。』
「うん、わかったよ!」
そして侑はUの部屋から去っていた。
侑は屋敷の地下迷路から出ていったが、探偵になることへの緊張がとまることはなかったのであった。
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