第13話侑の不思議なお留守番

小学六年生に進級した侑だが、一人が多い他愛のない生活を送っていた。

でも寂しさや退屈といった感じは無い、なぜなら侑にはUという不思議な相手がいたからだ。

散々、侑と謎解きをするために多くの人たちに迷惑をかけてきたが、最近はおとなしくしているようだ。

でも油断は禁物だ、また何を仕掛けてくるのか分からない。

そんなことを思っていた侑に、重雄からある知らせを聞いた。

「侑、実は仕事の都合で東京へ出張することになってな、一週間は向こうで滞在することになったんだ。」

「うん、わかったよ。お仕事、忙しいもんね。」

「それでな、百合絵も旅行で一週間家を空けることになったんだ。」

「えっ、母さんもいないの?」

「そうなのよ、婦人会での旅行でね。まさかあなたと同じ日に家を空けることになるとは思わなかったのよ・・・。」

ということは、侑はたった一人で留守番をすることになったのか・・・。

「でも心配はしなくていいぞ、新井田が一緒にいるからな。」

すると「ギャーッ!!」という悲鳴が聞こえてきた。

「新井田!!どうした!!」

「いてて・・・、こ・腰が・・・。」

「ぎっくり腰か・・・、立てるか?」

重雄は新井田を連れて、病院へと車を走らせた。

「新井田さん、大丈夫かな?それにしても、どうしてぎっくり腰に・・・?」

「私と一緒に書庫の整理をしておりました、重い荷物ばかりなので気をつけてと言っておられましたが・・・。」

上条がやれやれという風に言った。

一時間後、重雄が一人で帰って来た。

「新井田を家に送って来た、しばらくは動けそうにないようだ・・・。」

「そっか・・・。」

「それでな、上条も蓮実も用事で来られないことになったんだ。だから明日から、侑は一人でお留守番だ。大丈夫か?」

「うん、一人ぼっちは平気だから大丈夫だよ。」

こうして侑の一人ぼっちの留守番が始まった、しかしこの留守番が前代未聞の大事件の幕開けになろうとは、侑の頭に思い浮かぶことはなかった・・・。








翌日、重雄と百合絵が出かけて行ったので、侑は一人での留守番が始まった。

「やっぱり、一人は落ち着くなあ・・・。」

侑はすっかり一人が好きな子供になっていた。

そして宿題をしていると・・・、ドアがギィ~と静かに開いた。

「ん?」

侑は思わず後ろを振り向いたが、もちろんそこにはだれもいなかった。

「そうだ、みんな出かけているんだった。この家にはぼく以外いないはずだ。」

侑は宿題を再開した、しばらくすると部屋の中に風が吹いてきた。

「あれ?おかしいなあ・・・?」

侑が窓を見ると、部屋の窓が開いていた。しかし侑には窓を開けた覚えは無い。

「もしかして、ぼくが窓を閉め忘れていたのかな・・・?」

侑は窓を閉めて、宿題を再開させた。

そして宿題を終えて本を本棚から取ろうとした時だった、侑は本が一冊本棚から出ていることに気が付いた。

「あれ?なんで本が出ているの・・・?」

もちろん侑は本を本棚から出した覚えはない。

「これって・・・、もしかして・・・?」

Uの仕業なのか!?

だとしたらどうする?また地下迷路へ向かって、止めるように説得するしかない。

「よーし、行くぞ。」

侑は部屋から出て、あの地下迷路へと続く扉へと向かった。

しかし扉の前についたとこで、侑はあることを思い出した。

「あっ、そういえば鍵が無いんだった。」

なので扉は開かない・・・ん?侑はあることに気がついた。

「確かUなら、何か変なことがあった後必ず鍵の入った封筒を渡してくるはずだ。だとしたら、今までの変なことはUの仕業ではないということなの!」

それじゃあ、一体誰の仕業だというのか・?

今、この家にいる人は侑だけだ。考えられるのは、この屋敷に侑以外のだれかが侵入しているということだ。

「よし、絶対に見つけるぞ!」

侑は屋敷全体を歩き回って、侵入者を探し始めた。

食堂まで来ると、キッチンの奥からガタガタッという音が聞こえた。

「そこにだれかいるの?」

侑が奥に向かって呼びかける、すると目出し帽を被った赤と青のロゴマークがついたTシャツを着た男が、侑に向かって襲いかかった。

「うわぁ---っ!!」

「大人しくしろ、さもないと殺す。」

侑は包丁を持った男に捕らえられてしまった、男は初めて強盗をするのか包丁を持つ手が震えている。

侑は抵抗することもできずに、男に連れられていく。

そして男は侑を持ったまま、叫んだ。

「おーい、ガキが一人いたぞ!」

「なんだって!?」

するとひげを生やした中年の男が、侑の部屋から出てきた。

「おい、どうするんだよ!?今日は誰もいないと踏んで、この屋敷に入ってきたのに。」

「仕方ねえ、このガキを消すしかない。」

「ムグググ・・・」

侑は叫ぼうとしたが、男に口を押さえられて叫べない。

「でも、こいつ子どもです。殺すのは・・」

「何を言うか、見られた以上は大人でも子どもでも口封じするしかない。とにかく、縛っておけ。」

ひげの男に言われてTシャツを着た男が、侑を持ってきたロープで縛り上げ、食堂の片隅に転がしておいた。

その間に二人の男は屋敷全体を物色し、金目のものを袋へと入れていった。

「よし、もう行くぞ!あのガキも連れてけ!」

食堂に放置されていた侑は、男に引きずられて行った。

そして屋敷の玄関についた時だった。

『侑を返せ〜、侑を置いてけ〜』

「なんだ、この声は・・・?」

「まさか、幽霊なんているわけがねえ。とっとと脱出するぞ!」

しかしそれから三人は、突然気を失い倒れてしまうのだった。






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